「トマトが赤くなると、医者が青くなる」ということわざを聞いたことはありませんか?
トマトが実る頃になると食べた人が元気になるので、医者の仕事がなくなる、という意味で広く知られています。
どうしてこのようなことわざができたのでしょうか。
1.トマトとはどのような野菜か
トマトは南米のアンデス高原が原産とされるナス科トマト属の果菜です。
大航海時代にスペイン人がヨーロッパへと持ち帰り、日本へと伝わったのは17世紀半ば。
先ほどのことわざもヨーロッパから伝わったとされています。
しかしヨーロッパでも日本でも、独特の匂いや鮮やかな赤い色になじみがなく、毒があると思われていたために長らく観賞用とされていたようです。
日本で食用にされ始めたのは明治以降。
歴史的に見ればわりと最近のことだといえます。
現代の日本では通年出回っていますが、トマトといえば太陽の下で赤々とした実をつける、夏野菜のイメージが強いのではないでしょうか。
しかしトマトは高温多湿を嫌い、乾燥した日差しのある気候を好むため、実は春から夏の季節が旬です。
伝来当時は有毒だと思われていた赤いトマトですが、健康によいとされる秘密はこの色にあります。
トマトの赤い色は「リコピン」という色素です。
このリコピン、一昔前は単なる色素だと考えられていたのですが、実は優れた抗酸化作用をもっていたのです。
2.リコピンと抗酸化作用
人間の体内では常に「活性酸素」が発生しています。
活性酸素とは、酸素を取り入れ代謝する過程でわずかに生じる、強い酸化作用をもつ酸素のことです。
本来は体内に侵入したウイルスや細菌を退治する重要な役割を担っていますが、激しい運動やストレス・喫煙・紫外線などの影響を受けて増加し、ガンや生活習慣病の原因となります。
「体が錆びる」と表現されるように、細胞を酸化させ老化を早める活性酸素。
この活性酸素を除去する作用のことを「抗酸化作用」といい、その作用に優れているのがリコピンです。
リコピンは赤やオレンジなど色の濃い野菜や果物に含まれるカロテノイドの一種です。
ニンジンやカボチャに含まれるβ-カロテンも似た働きををしますが、ここ数十年の研究で、β-カロテンよりリコピンの方が活性酸素を除去する力が大きいことがわかったのです。
優れた抗酸化作用は、血管を健康保持、悪玉コレステロールの分解、免疫力のアップなどのほか、アンチエイジングにも効果を発揮します。
健康のためにはぜひ取り入れたいところですが、どのように摂取するとよいのでしょうか。
3.リコピンを効率よく摂取する方法
リコピンの1日の摂取量の目安は15~20㎎と言われています。
トマトに含まれるリコピンの量は成熟の度合いによって異なり、熟して赤くなるほど含有量が多くなります。
リコピンはトマト100gあたりおよそ3㎎含まれ、赤く完熟したトマトを2~3個で1日の目安量を摂取できる計算になります。
トマトジュースからもリコピンは摂取できます。
リコピンは朝摂取する方が吸収率がよいという研究結果もあるので、毎朝トマトジュースを一杯飲むことも、気軽に続けられる方法のひとつではないでしょうか。
ではトマトを調理する場合はどうでしょうか。
リコピンは脂溶性の成分で油と一緒に調理することで吸収されやすく、熱を加えても壊れません。
オリーブオイルを使用したトマト料理は非常に効率のいい摂り方だといえます。
またケチャップやホールトマトなどの調理用に加工されたトマトは、生のトマトよりもリコピンが体内に吸収されやすいというデータもあります。
トマトはサラダなど生で食べるより、調理して食べた方が効率よく摂取できるといえそうです。
4.その他のトマトの栄養
これまでリコピンとその効果について注目してきましたが、トマトにはほかにも栄養素が豊富に含まれています。
主な栄養素として以下のものがあります。
・ビタミンA
・ビタミンB1・B2
・ビタミンC
・ビタミンE
・カリウム
・カルシウム
・マグネシウム
・食物繊維
・鉄
・クエン酸
これらのビタミン・ミネラルは私たちが生きていくために必要なエネルギーを作り出す三大栄養素「糖質」「脂質」「たんぱく質」をうまく体内に取り入れ、正常に機能させるために必要な栄養素。
健康のために欠かせない栄養素がリコピンのほかにもトマトには含まれているわけです。
これらのビタミン・ミネラルは粘膜保護や美肌効果、高血圧予防、疲労回復など、リコピンにも負けない効果を生み出してくれます。
リコピンのほかにも優れた栄養素を備えているトマト。
「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざが生まれた理由もうなずけます。
昔の人々はトマトの健康効果を体感し、経験的に理解していたのでしょう。
トマトを食べて医者いらずを目指す
いかがでしたか? トマトは赤い色のイメージどおり、栄養豊富で、私たちの体に必要な元気やパワーをくれる野菜です。
リコピンの抗酸化作用で活性酸素を除去し、様々な病気の予防につなげていきたいですね。
トマトの力で健康寿命を延ばして、医者いらずを目指していきましょう。