揚げ物は身体を老化させたり、いろいろな病気の原因となる

最終更新日:2017年10月15日

肉や魚・野菜などの食材をおいしく食べる調理法として、揚げ物は子供からお年寄りまで人気のあるメニューです。

食生活の変化によってシニア世代にも揚げ物を好む人は増えていますが、体にはあまり良くないと言われています。

1.揚げ物に使われる油の種類

揚げ物が体に悪いと言われている理由の1つに、酸化した食用油の健康に及ぼす悪影響が挙げられます。

コストを節約するため何回も繰り返し再利用された油は酸化が進み、人体に有害な物質が含まれるようになっているのです。

一口に食用油と言ってもいろいろな種類があるため一概には言えませんが、一般家庭や飲食店・惣菜店などで揚げ物を作るのに使われる食用油の多くは酸化しやすい性質を持っています。

そうした油には大きく分けててんぷら油とサラダ油の2種類があり、サラダ油はてんぷら油よりも精製度が高く低温で固まる成分が除去されているのが特徴です。

揚げ物によく使われるてんぷら油は白絞油とも呼ばれ、菜種油や大豆油・綿実油などを混合して製造されています。

キャノーラ油は遺伝子組換え技術によって品種改良された菜種のキャノーラ品種から精製された油です。

健康に悪影響を与えるエルカ酸やグルコシノレートの少ない点はキャノーラ油のメリットですが、酸化しやすい点では変わりません。

2.酸化した油の危険性

一般家庭でも天ぷらやカツ・唐揚げなどの揚げ物を作る際には、油の使い回しをする例が少なくないものです。

特に毎日のように揚げ物を作っている家庭ではその都度新しい油を使っていてはコストがかかるため、多くの人は同じ油を繰り返し再利用しています。

大量の揚げ物を作っているスーパーの惣菜部門や飲食店ではなおさらコストが重視され、油が真っ黒になるほど再利用されているケースも珍しくありません。

このような油は酸化が進んでおり、天ぷら粉や小麦粉などの衣に酸化した油が吸収されているため、揚げ物を食べる人の体内にもその成分が摂取されることになります。

惣菜から買ってきた揚げ物や飲食店で出された揚げ物を食べて胸焼けがしたり気持ち悪くなったりする場合は、その揚げ物に使われた油の酸化が相当に進んでいた可能性があります。

一般家庭で揚げ物を作る際には、油を繰り返し使用する場合でも2回から多くても3回程度にとどめるのが無難です。

3.過酸化脂質が人体に与える影響

このような酸化した油は過酸化脂質と呼ばれ、細胞の老化や動脈硬化・がんの原因となる物質として知られています。

過酸化脂質が細胞に入るとスーパーオキシドアニオンという活性酸素を発生させ、細胞にダメージを与えてさまざまな病気を引き起こすのです。

フリーラジカルとも呼ばれる活性酸素は強力な酸化力を持ち、細胞を構成する分子から電子を奪って損傷を与えます。

細胞核にあるDNAにこの活性酸素が作用すると遺伝子が損傷を受け、細胞分裂の際に誤った遺伝情報が伝えられてがん細胞が発生する原因にもなります。

これが皮膚の細胞で起きればシワやシミの原因にもなりますので、特にシニア世代や女性にとっては注意が必要な物質です。

揚げ物を揚げる際には食材が約180度前後という高温で調理されますが、きつね色に焼けた部分にはAGEsという終末糖化産物が含まれます。

このAGEsもまた人体に悪影響を及ぼすことが知られていますので、おいしそうな焦げ目のついた揚げ物を大量に食べるのは禁物です。

4.いろいろな病気の原因となる揚げ物

揚げ物に含まれている可能性のある過酸化脂質やAGEsも、少量であればすぐに病気を発症するほど毒性が高いというわけではありません。

問題なのは揚げ物を好物としていて毎日のようによく食べている人の場合です。

特に自分で調理するのが面倒だからという理由でスーパーの惣菜やコンビニから揚げ物を購入して食べている人は、過酸化脂質やAGEsを多く摂取している可能性があります。

過酸化脂質の過剰摂取が引き起こす病気としては前述のがんに加え、動脈硬化を原因とする脳梗塞や脳出血などの脳卒中、同じく心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患も見逃せません。

揚げ物を含めた脂っこい食べ物を好む人は脂質異常症を発症している可能性もあり、同様に動脈硬化を原因とする病気を併発しやすくなります。

揚げ物の焦げ目に含まれるAGEsも細胞の老化を促進させ、動脈硬化や糖尿病・腎不全の原因となるので要注意です。

5.病気のリスクを減らすには

シニア世代の人が以上のような病気のリスクを減らすには、揚げ物を食べる量を少なくするのが最も効果的です。

特に油を繰り返し使用している可能性が高い惣菜や外食の揚げ物は、食べるとしても月に1回か2回程度にとどめておいた方がいいでしょう。

自分で調理する場合は油を4回以上再利用することを避けて冷暗所に保存し、てんぷら油やサラダ油よりも酸化しにくいオリーブオイルを使うような工夫も有効です。

オリーブオイルは揚げ物に使う油としては比較的マイナーですが、植物油の中でも発煙温度が高く酸化しにくい性質を持ちます。

オリーブオイルや紅花油は酸化しにくい上にオレイン酸も多く含まれる点でも健康的な油です。

どうしても惣菜や外食で揚げ物を食べたいという場合は、抗酸化物質を多く含む食品を同時に食べることで健康への影響を抑えることができます。

野菜や果物にはビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。

健康を意識し、工夫して揚げ物を食べよう

揚げ物は体に良くない面もありますが、揚げ物に含まれる油も細胞膜の材料となる物質で、適量なら人体に必要な栄養素の1つです。

揚げ物ばかりでなく野菜と付け合わせてバランスの良い食事を心がけていれば、健康長寿にもつながります。

油の種類を変えるだけでも健康への悪影響を抑えられる点は覚えておくといいでしょう。