ジャムやマーガリンを食パンに塗って食べる習慣は、子供や若い世代だけでなくシニア世代にも定着しつつあります。
それだけ日本人の食生活も欧米化した証拠ですが、マーガリンは体に良くないとも言われている食品の1つです。
1.マーガリンの成分と製法
牛乳から分離された動物性油脂成分を材料とするバターに比べ、植物性油脂を材料とするマーガリンは安価な点が特徴です。
パンに塗る際にはバターよりも柔らかくて塗りやすいことから、朝食などでパン食を楽しむようになった日本人の間でも愛好されてきました。
このマーガリンにも製品規格があり、正式に「マーガリン」と表示できるのは油脂成分が80%以上の製品に限られます。
80%以下の製品は「ファットスプレッド」が正式な商品名ですが、これもスーパーなどではマーガリン類の一種として扱われている商品です。
これらのマーガリン類は植物性油脂を主材料として、食塩やビタミンなども加えて作られます。
もともと常温で液体の不飽和脂肪酸だった植物性油脂を、常温で固体となる飽和脂肪酸に変えるには水素が加える工程が欠かせまえん。
水素が加わることで油脂の一部はトランス脂肪酸という物質に変わり、この物質が健康に悪影響を与えるのです。
2.トランス脂肪酸の危険性
トランス脂肪酸を大量に摂取すると体内で悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールは逆に減少することが知られています。
悪玉コレステロールは血管壁に付着して動脈硬化や血栓の原因となりますが、通常なら善玉コレステロールが悪玉コレステロールを掃除してくれます。
トランス脂肪酸を過剰に摂取している人は善玉コレステロールの働きが追いつかず、血液がドロドロになるため心筋梗塞や狭心症を起こすリスクが高まります。
トランス脂肪酸は脳卒中の原因となる高血圧や、糖尿病の原因となる高血糖も招き寄せる物質です。
マーガリンだけでなく牛乳や乳製品・食肉などの動物性脂肪にもトランス脂肪酸は含まれますが、それらはごく微量に過ぎません。
マーガリンはトランス脂肪酸が最も多く含まれている点で注意すべき色品です。
3.アメリカでは法規制されている物質
このようにトランス脂肪酸の持つ健康への悪影響が懸念されるようになった結果、アメリカでは法規制の対象とする動きが広がっています。
現在ではトランス脂肪酸が含まれる食品に対して表示が義務付けられており、将来的にトランス脂肪酸の使用を廃止することも決定されました。
しかしながら日本では現時点でアメリカのような規制がされておらず、店頭に並ぶマーガリンに対してもトランス脂肪酸の表示義務はありません。
平均的な日本人はアメリカ人と比べてトランス脂肪酸の摂取量が8分の1程度と言われるほど大幅に少ないため、法規制されるところまで問題視されてこなかったのです。
トランス脂肪酸はマーガリンだけでなくアメリカ人が日常的に食べている多くの食品に含まれるため、健康への影響も小さくありませんでした。
近年では日本人の食生活もアメリカ人に近づいてきており、人によっては同様にトランス脂肪酸を多く摂取している可能性があります。
4.トランス脂肪酸が含まれる食品
マーガリン以外でトランス脂肪酸が含まれる食品としては、マーガリンよりも植物性油脂の純度が高いショートニングが挙げられます。
ショートニングはラードの代用品として考案された経緯があり、パンや洋菓子の製造にもよく使われています。
ファストフード店で人気のフライドポテトやチキンナゲットに加え、ポテトチップスやポップコーンなどもトランス脂肪酸が含まれた食品です。
アメリカ人はそれらの食品を日常的に多く食べていることからトランス脂肪酸の悪影響を受けやすいわけですが、アメリカ発の食文化に親しんでいる日本人も同様のリスクがあります。
天ぷら油なども180度以上になるとトランス脂肪酸が増えるため、高温で調理された揚げ物を好んで食べる人もトランス脂肪酸を多く摂取している可能性があります。
日本人が発明した即席麺やカップ麺にも、油で揚げた麺が使われているケースは少なくありません。
トランス脂肪酸はマーガリンだけでなく、日本人の食生活にも意外に多く潜んでいるのです。
5.リスクを低くする食生活
食パンにマーガリンを塗って食べるだけなら、1枚当たりに使われるマーガリンの量はせいぜい10g程度ですので、それほど大量のトランス脂肪酸は摂取されません。
WHOの勧告ではトランス脂肪酸の摂取量を全カロリーの1%未満としており、成人の場合は1日約2gまでが目安となります。
食パン1枚に塗られるマーガリンに含まれる量はこの基準値以下です。
ケーキ・クッキーなどの洋菓子やパンの製造にもショートニングやマーガリンが使われる例が多いですが、製品中に含まれるトランス脂肪酸の量は正確にわかりません。
スーパーやコンビニなどで売られている揚げ物は油を何度も繰り返して使用しているため、トランス脂肪酸が含まれる割合もそれだけ高くなっているものです。
少なくともマーガリンは含まれるトランス脂肪酸の量が計算できますので、摂取を控えることで心筋梗塞や脳卒中・糖尿病など生活習慣病のリスクを低くすることができます。
マーガリンに多く含まれるトランス脂肪酸に要注意
ご飯に味噌汁・魚料理など、日本人らしい食生活を送っている人はトランス脂肪酸の心配もそれほどしなくていいと言えます。
日頃から油で揚げたような食品や脂っこい食べ物を好む人は、マーガリンを避けるのが無難です。
シニア世代の人の中にも洋風の食生活を送る人が増えていることから、健康への配慮が必要となってくるのです。