「中村玉緒」は天然ボケで生涯現役の波瀾万丈を乗り越えたみんなに愛される「お母さん」

最終更新日:2017年11月6日

天然ボケキャラクターで愛されている中村玉緒さん。

映画全盛期時代にはお嬢様女優として、その後はテレビや舞台でも活躍されてきた女優が本業です。

波瀾万丈の人生を持ち前の明るさで乗り越えた強い女性と言えるでしょう。

1.華麗な役者一家のお嬢様

1939年年7月12日京都市で生まれた中村玉緒さん(本名 奥村玉緒)。

お父さんは上方歌舞伎役者で人間国宝の「二代目中村鴈治郎」。

黒沢明作品や小津安二郎作品などの映画やテレビにも多数出演された名優です。

弟もまた人間国宝で歌舞伎役者の坂田藤十郎。

親戚には昭和の二枚目役者長谷川一夫さんもおられ、まさに華麗な役者一家に生まれました。

出身校は名門京都女子高校。

現在は進学校として知られるお嬢様学校です。

中学時代に撮影所の近くに住んでいた玉緒さんの美貌に目をつけた映画監督にスカウトされ、1953年14才の時に本名の林玉緒の名前で映画「景子と雪江」でデビュー。

その後は声がかからず、どうしても女優を続けたかった玉緒さんは、映画制作会社大映で重役もしていた長谷川一夫に頼み込んで、1954年大映に入社しました。

こうしてお姫様女優としての道を歩みます。

2.最愛の人・勝新太郎との出会い

玉緒さんの夫は言わずとしれた勝新太郎。

日本一のアウトロー俳優としてその破天荒生き方で何度も世間を騒がせた方ですが、もともとは市川雷蔵と二枚看板で大映の全盛期を支えた大俳優です。

勝新の愛称で、何度不祥事を起こしてもファンに愛され続けました。

玉緒さんとは映画の共演がきっかけで交際を始めました。

勝新太郎が玉緒さんの清純さに一目惚れをして熱烈に求愛をされたのだとか。

ただシャイな面もある勝新太郎は自分の口からはプロポースできず、マネージャーを通して「結婚してください」と玉緒さんに伝えました。

放蕩役者とお嬢様女優との結婚に周囲、特に中村家は大反対でしたが玉緒さんが押し切って結婚。

大映の社長から1年待ってくれと言われて待つ間に妊娠をしてしまい、結婚式では少しお腹が大きかったそうです。

3.放蕩三昧の夫に尽くし続けて

豪快な遊び方で、取り巻きを連れ歩いては連日連夜のはしご酒、借金を重ね、女遊びも激しかった勝新太郎。

他の女の家に行く夫を毎日のように笑顔でいってらっしゃいと送りだしていたという気丈な玉緒さん。

勝新太郎が喉頭がんで亡くなった時の記者会見では、「生まれ変わってももう一度あの人と結婚したい」と一途な思いを語りました。

勝新太郎も生涯、放蕩は止めませんでしたが最後まで玉緒さんを愛し続けました。

「中村玉緒は勝新太郎なしでも存在し得るが、勝新太郎は中村玉緒なしでは存在し得なかった」という言葉を生前、愛妻に捧げています。

3.夫の逮捕、プロダクションの倒産、息子の事件…度重なる試練

玉緒さん自身は勝新太郎のことを「映画のことしか考えていない人」と称しています。

「影武者」で黒沢明と決裂して映画を降板したことは有名ですが、自分が演出するテレビ番組でもその場の思いつきでどんどん台本を変えていって制作費がふくれあがるなど、経営を無視した行動で「勝プロダクション」の倒産を招きました。

また自らプロデュースした「座頭市」のなかで長男が殺陣の練習中に真剣を使い役者を死なせるという事件もこの頃に起きました。

その後、この長男と長女までもが大麻密売で逮捕され、これ以降、マスコミはこぞって勝バッシングに走り、社会的制裁を受けます。

夫婦でテレビ界を追放され、終了したCMの賠償金などで借金は膨れあがりました。

生活を支えるために当時赤坂のナイトクラブで歌っていた玉緒さん。

状況が大変すぎて離婚という考えは浮かばなかったそうです。

このときの10億円以上の借金は玉緒さんが25年かけて完済されています。

4.バラエティタレントとして注目

テレビから声がかかったきっかけは明石家さんま。

自ら司会を務める「明石家多国籍軍」への出演を要請しました。

この時に強烈な天然ボケのキャラが受け、それ以降「さんまのからくりテレビ」や「さんま御殿」など明石家さんま司会のバラエティ番組を中心にバラエティタレントとして人気が出ます。

バラエティに出たのは当時喉頭がんで病床にいた夫を励ますためでもありました。

勝新太郎も明石やさんまが大好きで病室でからくりテレビを見るのを楽しみにしていたそうです。

玉緒さん自身、明石家さんまを恩人としてあんな良い人はいないと語っています。

波瀾万丈を乗り越えたみんなに愛される「お母さん」

玉緒さんの天然ぼけキャラに隠れた、柔らかで強い人間力に惹かれ、お母さんと慕う芸能人は多くなります。

元気の秘訣は「とにかくよく食べて、よくしゃべって、家の中を動き回ること。後はパチンコ」だとか。

芸能界でも屈指のパチンコ好き玉緒さん。

ストレスを発散していつまでも現役で頑張っていただきたいですね。