宮崎駿さんは日本のアニメ業界で最も有名な映画監督のひとりです。
様々な分野の人々に多大な影響を与えた宮崎駿さんですが、彼の作風や思想には、どういった特徴があるのでしょうか。
彼の略歴等を踏まえながらまとめましたのでご覧ください。
1.略歴
学習院大学に在籍中、アニメーションの世界へ進むことを決め、卒業後は東映動画に入社しました。
しかし大学時代にも描き続けていた漫画に対する未練や、当時の東映動画が制作する作品に対して魅力を感じることができない時期がありました。
入社して1年、ソ連制作の「雪の女王」に感銘を受けてアニメーションを一生の仕事にすることを決めました。
その後は積極的に制作に関わっていき、1971年に東映動画を退社しました。
ズイヨー映像に移籍した後「アルプスの少女ハイジ」で全カットの場面構成と画面構成を担当し、作品は大ヒットとなりました。
宮崎駿さんにとって初めての大きな成功でした。
1978年には「未来少年コナン」で初の監督を務めました。
演出をはじめ、キャラクターデザインや設定を全話担当し、多くの絵コンテやレイアウトを描きました。
さらに脚本や原画をひとりでチェックしました。
毎週放送という条件の下でこれだけの作業をこなし、宮崎アニメと呼ばれる昨今の作品の原点ともいえる作品が完成しました。
その後「風の谷のナウシカ」のヒットを契機に、宮崎駿さんの名は世間に知れ渡ることとなりました。
2.スタジオジブリ
1985年にスタジオジブリを設立しました。
「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」の上映を経て、続く「魔女の宅急便」が大ヒットしました。
これが契機となりスタジオジブリ内の社員化を決定し、労働環境を整えました。
「もののけ姫」は日本の映画興行記録を塗り替えるヒット作になり、引退発言なども話題となりました。
そして2001年には「千と千尋の神隠し」で再び興行記録を塗り替えました。
この作品は国外からも高く評価され、ベルリン国際映画祭では金熊賞を、アカデミー賞では長編アニメ賞を受賞しました。
2003年にはアメリカの雑誌「TIME」にて、アジアの英雄20選に選ばれました。
「ハウルの動く城」は再びアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされるなどの評価を受けました。
2006年にはアカデミー賞選考委員に選ばれましたが、創作活動に専念したいという理由でこれを断りました。
2008年に「崖の上のポニョ」をヒットさせることに成功しますが、この時期辺りから老化による制作能力の低下についての言及が目立ち始めます。
そして2013年の「風立ちぬ」の公開後、引退を発表しました。
現在は2019年の公開を目指して長編アニメの制作に復帰・取り組んでいることが発表され、再び注目を集めています。
3.作風・特徴
子供には逃げ場が必要であるとし、子供に向けた作風を心がけています。
また、アニメーションは基本子供のものとも公言しています。
作品の主人公の多くは子供であり、悪役は大人として描かれることが多いのはそのためです。
主人公は少女であることが多く、同性であると自分と重ね合わせてしまう恐れがあり、元気な少女の方がやる気が出ることが理由と語っています。
イメージボードを使って作品の構成を固め、脚本なしで制作を行うことで有名です。
ただ全くノーアイデアの状態で絵コンテ書き始めるわけではなく、ストーリーに関する情報をノートにまとめた上でのスタイルです。
しかしそれでも絵コンテと同時進行で制作を行うのは常人には難しく、宮崎駿さんだからこそできる技です。
作品に対しては常に新しい試みを心がけており、同じものを作って何の意味があるのあ、という趣旨の発言をされています。
この作風の変化は「千と千尋の神隠し」以降の作品で特に顕著に表れており、新しいプラットに挑戦し続けています。
そのため初期の宮崎作品のファンからの近年の作品に対する評価は賛否両論となっています。
4.アニメへのこだわりや思想
主要なキャラクターに職業声優を起用することがあまりありません。
これはプロの声優の声は宮崎駿さんとチームの望んでいる声ではないことや、アニメとかではなく映画という意識で作っていることが理由です。
かなりの軍事マニアで知られていますが、その知識は作品に登場する武器や乗り物などで活用されています。
「天空の城ラピュタ」や「崖の上のポニョ」ではモールス符号が使われているシーンがありますが、あれはすべて実在する符号で、言葉として成立しています。
宮崎駿さんはこのように作品に対するこだわりがとても強く、それと同時に様々な思想を持っている方です。
2002年のベルリン映画祭での受賞の際には「今の日本のアニメーションはどん詰まりです」と、アニメ界に対してとても危機感を抱いているかのような発言をしました。
この発言は庵野秀明さんによる、
「私はコピーの世代です。その後の世代はコピーのコピーです。そして今やコピーのコピーのコピーとなってしまっており、自分の見てきたものを書いているわけじゃない」
という発言を聞き、宮崎駿さん自身が痛切に感じていることが理由です。
アニメーションに長く携わってきたからこそ、業界に対する思想も人一倍強いのです。
生涯をアニメに捧げた宮崎駿さんの人生
これまで数多くの作品に関わり続けてきた宮崎駿さんですが、その作品の中に宮崎駿さんのこだわりや思想を垣間見ることができます。
丁寧な彼の物作りに対する姿勢は、後の世代に大きな影響を与えています。
いくつになっても新しいことに挑戦し続けている宮崎駿さんは、今後も世界からの注目を集め続けることでしょう。