松島(宮城県)を「おくの細道」の旅で訪れた芭蕉は絶景への感動のあまり句を詠めなかった

最終更新日:2017年12月22日

松島湾内に260余りの島々が浮かぶ宮城県の松島は、天橋立・宮島と並ぶ日本三景の1つとして有名です。

古くから和歌に詠まれてきた松島は、江戸時代に芭蕉が「おくの細道」の旅で訪れたことでも知られています。

1.大小260の島々が織りなす絶景

松島湾内には福浦島・桂島・九ノ島といった比較的大きな島の他にも仁王島や千貫島・双子島など中小の島々が数多く点在しており、侵食された地形や島に生える松が織りなす美しい風景は古人たちを魅了してきました。

百人一首に収録された源重之の歌や、「千載和歌集」に収録された殷富門院大輔の歌が特に有名です。

松島は日本三景の1つに数えられるだけでなく国の特別名勝にも指定されており、新日本旅行地100選や新日本観光地100選・平成百景にも選ばれました。

大小260余りの島々からなる松島の絶景を鑑賞するには、周辺の高台からの展望を楽しむ方法の他に遊覧船で島々を巡る方法があります。

五大堂のある小島や福浦島・雄島には橋で海の上を渡ることが可能なため、観光客の間でも特に人気のスポットです。

JR仙台駅から東北本線を利用すれば松島駅まで約25分、仙石線だと快速列車に乗って25分で遊覧船乗り場に近い松島海岸駅に到着できます。

2.遊覧船で島巡りを楽しむのが定番コース

松島の絶景が展望できるスポットとしては、江戸時代から「松島四大観」が知られていました。

東松島市の宮戸島にある標高105mの大高森から松島を一望する「壮観」や標高116mの大仰寺から眺める「麗観」に加え、ともに標高55mの扇谷から見た「幽観」と多聞山からの「偉観」も定番の展望スポットです。

この他にも坂上田村麻呂ゆかりの長老坂や西行戻しの松など多くの展望地が知られていますが、観光遊覧船は松島湾に浮かぶ島々を間近で鑑賞できるだけに多くの観光客が利用しています。

松島島巡り観光船と丸文松島汽船の2つが松島の代表的な遊覧船で、湾内一周定期コースの他に団体客向けの中型船や小型船も人気です。

松島から塩竃湾まで周遊するコースや、奥松島と嵯峨渓を周遊するコースなどもあります。

松島の島々には恵比須島・大黒島・夫婦島・地蔵島・鐘島・鎧島などユニークな名前が付けられており、船内のアナウンスでそうした豆知識を知るのも楽しみの1つです。

3.驚異的な造形の島々

松島独特の景観を形作っている島々の中には、大自然の驚異を実感できるような奇跡の造形が少なくありません。

仁王島では波の浸食作用によって仁王像を連想させるような迫力満点の巨大な岩がそそり立っており、奇岩の多い松島の中でも一際異彩を放っています。

鎧の肩掛けに使われる帷子に似た形状の鎧島や烏帽子兜に似た兜島、4つの洞門に波が打ち寄せると鐘を打ったような音が響く鐘島も遊覧船観光で見逃せないスポットです。

遊覧船には定員300名クラスの大型船から100名前後の中型船、十数名だけが乗船できる小型船があり、暗礁の多い松島でも浅い場所まで近づける小型船は高額な料金にも関わらず人気を集めています。

松島の中でも穴場と言われているのが、松島海岸駅から松島水族館跡地の前を通って行ける雄島です。

雄島まで渡る渡月橋は東日本大震災の津波で流されましたが、2013年に新しい橋が架けられました。

50を数える岩窟や多数の石仏など、修業の場として使われてきた跡が点在する雄島はパワースポットとしても人気です。

4.松島の海に月が映る絶景を前に感動のあまり句を詠めなかった芭蕉

「おくのほそ道」の中でも松島のくだりは作中随一と言われる名文ですが、雄島には芭蕉と曽良の句碑も残されています。

雄島を訪れた芭蕉は雲井禅師の座禅堂跡や座禅石を訪ね、雄島の松林の陰に住む世捨て人と交わるうちに夜を迎えました。

「おくのほそ道」の旅に出発する際にも「松島の月まづ心にかかりて」と記していたほど、松島は月見の名所として古くから知られています。

松島の海に月が映る絶景を前にして、芭蕉は言葉を失うほどの感動に襲われました。

弟子の曽良はこのとき「松島や鶴に身をかれほとゝぎす」という句を残しましたが、芭蕉はあまりの感動で句を詠むことができず、「おくのほそ道」にも曽良のこの句だけが記されています。

俳聖と言われた芭蕉ですら十七字に表現できなかった月夜の松島は、明るい太陽の下で見る絶景とはまた違った味わいがあるものです。

5.奥松島は穴場のスポット

松島には他にもまだまだ数多くの見どころがありますので、松島温泉などに宿泊した方が日程にも余裕が出てきます。

松島でも有数の観光スポットとして知られる重要文化財の五大堂は雄島と同じく沿岸の小島に架けられた橋で渡れますが、橋の下から海が見える透かし橋だけにスリル満点です。

豊かな自然と絶景の宝庫として人気の福浦島にも、長さ252mに及ぶ朱塗りの橋を通って行き来できます。

松島湾入口に位置する宮戸島と野蒜海岸付近は奥松島と呼ばれる穴場スポットで、奇岩が連なる嵯峨渓は見逃せません。

めがね島やかえる島などユニークな造形美が特徴の嵯峨渓は、日本三大渓の1つに数えられる景勝地です。

以上のような松島の絶景を味わったら、瑞巌寺や鹽竈神社にも立ち寄ってみるといいでしょう。

伊達政宗の菩提寺としても知られる瑞巌寺は本堂と庫裏が国宝に指定されており、荘厳な杉並木の参道を歩くだけでも荘厳な雰囲気を味わえます。

天気予報をチェックして松島を訪れよう

古くから景勝地として親しまれてきた松島は小学校などの修学旅行先としてよく利用される一方で、シニアにとっても見どころが盛りだくさんの観光スポットです。

遊覧船を利用した島巡りや歩いて海を渡れる福浦島での観光はその日の天候にも左右されますが、良い天気に恵まれれば一生の思い出になるような絶景が味わえます。