永平寺(福井県)は道元が創建した曹洞宗の大本山!厳しい修行を見学できる

最終更新日:2017年12月12日

福井県永平寺町にある大本山永平寺は、現在でも厳しい修行が行われていることで知られる寺院です。

修行の場として使われている永平寺の伽藍は一般の人でも見学が可能なため、パワースポットとしても人気があります。
定年後シニアなら見学した後、浮世を離れて出家してみるのも面白いかもしれません。

1.道元が創建した曹洞宗の大本山

お寺と聞けば一般の人の多くは坐禅を連想しますが、坐禅を修行の中心に位置づけているのは臨済宗や曹洞宗など禅宗に総称される宗派です。

永平寺はこのうち神奈川県横浜市の總持寺と並ぶ曹洞宗の大本山の1つで、曹洞宗の開祖・道元が鎌倉時代に創建して以来の古い歴史を持ちます。

創建当初の伽藍は応仁の乱など度重なる兵火で焼失したため現存しませんが、その都度再建された永平寺は21世紀の現在に至るまで禅僧修行の場として信仰を集めてきました。

修行僧にとっては生活の場でもありますが、文化財を数多く残す永平寺は観光資源としても利用されています。

参拝のマナーを守ることで一般の観光客も修行の場に立ち入ることができる他、事前に申し込めば体験修行を受けることも可能です。

日本一修行が厳しい寺と言われる永平寺に漂う空気は俗世間と隔絶されているせいか、近年ではもパワースポット好きの女性やシニア層の参拝が増えています。

2.主な伽藍を巡る参拝順路

JR福井駅から永平寺ライナーと呼ばれる特急バスを利用すれば、永平寺まで30分で到着できます。

永平寺の境内には70余りの伽藍が配置されていますが、その中心となるのが回廊で結ばれた七堂伽藍と呼ばれる7つの伽藍です。

山門・仏殿・法堂が南北一直線に並び、仏殿の左右に僧堂と大庫院、山門の左右に東司と浴室が配置された形は坐禅を組む人の姿にもなぞらえられてきました。

正門をくぐって参道を進み参拝入口に達したところで、大人500円の参観料を払って中に入ります。

地上5階建ての宿泊研修施設・吉祥閣を手始めとして、2階に156畳敷きの大広間がある傘松閣から七堂伽藍へと進むのが一般的な参拝コースです。

雲水と呼ばれる修行僧が坐禅・食事・就寝の場としている僧堂、須弥壇に御本尊の釈迦牟尼仏が安置されている仏殿を経た後、本堂に当たる法堂に至ります。

法堂西側にある道元禅師墓所の承陽殿や、東側回廊に沿った大庫院も見逃せないスポットです。

3.七堂伽藍と境内の見どころ

以上のような参拝コースは案内表示に従うことで迷わず回ることができますが、団体客の場合は雲水が案内役を務めてくれます。

個人で訪れる際にもまず見逃せないのが、傘松閣の2階大広間の天井を飾る230枚もの天井画です。

これは昭和5年の建築当時に昭和初期の著名な画家144人が描いた天井画を、平成5年の再建時に再現したものです。

僧堂で食事の際に打ち鳴らされるという巨大な魚鼓や、撫でると料理上手になれると言われている大庫院の大すりこぎ棒も見どころとして挙げられます。

七堂伽藍の中でも一番の高所に位置する法堂からの眺めは美しく、初夏の新緑と秋の紅葉や冬の雪景色など季節ごとの風景が参拝客の目を楽しませてきました。

承陽殿には道元禅師の遺骨と尊像に加え、道元と親交が深く永平寺建立にも尽力した武将・波多野義重の尊像も安置されています。

江戸時代に建てられた山門は永平寺に現存する最古の建造物で、修行僧が入門時に通る正式の門としても重要な場所です。

4.曹洞宗の開祖道元と永平寺に土地を寄進した波多野義重

武家社会が確立した鎌倉時代は浄土真宗や日蓮宗など、鎌倉仏教と呼ばれる新しい仏教の宗派が相次いで誕生した時代でもあります。

禅宗から分かれた曹洞宗と臨済宗もそうした宗派の1つで、特に曹洞宗は武士層の支持を得て勢力を急速に拡大していきました。

開祖の道元が活動を開始した当時は旧仏教勢力からの圧迫も激しかったため、道元は迫害を避ける目的で京都から越前国へと移りました。

越前国には道元に深く帰依した波多野義重の領地があり、道元は義重から寄進を受けた土地に大佛寺を建立した後に吉祥山永平寺へと山号寺号を改めたのです。

越前国の有力な土豪でもあった波多野氏の保護を受けた永平寺は道元入滅後に三世義介禅師が七堂伽藍を整備し、現在に見られる伽藍配置の基礎が形作られました。

度重なる伽藍焼失にも屈せずその都度再建されてきた永平寺は、曹洞宗のお寺を継ぐために全国の禅僧が修行をする場として今もなお多くの雲水が坐禅に励んでいるのです。

5.厳しい修行の場を見学する際のマナー

厳しい修行が現在も行われている永平寺を見学する際には、当然のことながら修行の邪魔にならないよう配慮する必要もあります。

永平寺には傘松閣大広間の天井画や仏殿の欄間彫刻、山門の守護神として祀られている四天王像など、数々の撮影スポットが存在します。

写真撮影を趣味とする定年後シニアにとっては境内を自由に撮影できる点も永平寺の魅力ですが、修行中の雲水にはカメラを向けないというルールは守らなければなりません。

参拝の際には回廊など決められた参拝コースから外に出ないようにして見学するのもルールの1つで、境内には立入禁止の場所もあります。

携帯電話をマナーモードに設定するのも参拝マナーとされており、特に僧堂と浴室・東司は修行僧にとっても「三黙道場」と呼ばれる私語厳禁の場所です。

以上のようなルールを守りながら永平寺の七堂伽藍を静かに巡るうちには身も心も清められ、日常とは異なる空間に精神が一体化していきます。

大本山永平寺で厳しい修行を見学する

日本全国に数ある寺院の中でも最も厳しい修行が今なお行われている永平寺には、訪れただけで身が引き締まるような緊迫した空気が満ちています。

永平寺に魅せられた定年後シニアの中には、修行体験にまで身を投じる人も少なくありません。

土産物店や食事処が並ぶ門前町をぶらぶらと歩くのも、永平寺を訪れる際の楽しみの1つです。