縁結びで知られる島根県出雲市の出雲大社は、創建が神話の時代にまでさかのぼるほど古い歴史を持つ神社です。
出雲大社は古くから日本人の信仰を集めてきましたが、近年ではパワースポットとしても人気が高まっています。
1.全国から八百万の神々が集う神社
旧暦10月の異名を「神無月」と言いますが、これは全国八百万の神々が出雲大社に集まるとされていた故事に由来する呼び名です。
そのため出雲地方に限っては旧暦の10月を「神在月」と呼び、出雲大社に集まった全国の神々が神議を行うと言われてきました。
そうした伝承から見ても出雲大社は特別な神社だということがわかります。
現在の出雲大社本殿は江戸時代の1744年に建てられた歴史的建造物で、大社造りと呼ばれる最も古い神社建築様式を踏襲する国宝です。
現在の拝殿も高さが24mあって神社としては全国最大の建物ですが、平安時代には48m、それ以前は96mにも達する巨大な建物だったとも伝えられています。
この本殿は周囲を瑞垣で巡らせた八足門の内側にあって、一般の参拝客は正月三が日を除きその外側からしか参拝できません。
通常は八足門の前で本殿を参拝し、後述する御祈祷に参加した場合にのみ本殿を前にしての正式参拝ができます。
2.下り参道から拝殿まで
出雲大社に車で訪れる場合は400台近くが収容できる大駐車場もありますが、出雲縁結び空港や新幹線から連絡してJR出雲市駅に到着した場合は一畑バスで25分ほどかかります。
一畑電車大社線に乗り換えれば出雲大社前駅から徒歩5分ほどで出雲大社に到着です。
出雲大社には4つの鳥居があって、石でできた1つ目の鳥居をくぐって神門通りを歩いていくと、正門前の広場「勢溜」のところで木で作られた2つ目の鳥居が現れます。
ここから先が下り参道と呼ばれる全国的にも珍しい下り坂の参道で、右手に見える祓社で罪や穢れを落とすためにまず参拝するのが作法です。
その先に現れる3つ目の鳥居をくぐった後には、手水舎で手と口を洗って身体を清めます。
その際には水を汲み直さず、手水舎に一礼して汲んだ一杯の水を使い、左手・右手・口・柄杓の順番で洗うのが正式な作法です。
最後の銅鳥居をくぐった先に拝殿がありますので、ここでお賽銭を入れて参拝します。
3.独自の拝礼作法と御祈祷
寺社巡りを趣味としているシニアの間では有名ですが、出雲大社は他の神社と拝礼作法が異なります。
一般的な神社では「2礼2拍手1礼」で拝礼するのに比べ、出雲大社は「2礼4拍手1礼」が正式な拝礼作法です。
拍手の際には右手を少し下げて両手の指の節が当たらないようにするのがマナーとされています。
この場合の「礼」は「拝」とも書き、体を90度の角度に曲げる深いのが正式なお辞儀の仕方です。
2回目のお辞儀の際に願い事を祈願し、その後に神様への感謝の気持ちをこめて4回拍手をします。
お賽銭は縁結びの神社らしく5円や15円25円・415円などを入れている人が多いですので、事前に5円玉を用意しておくといいでしょう。
この後は反時計回りに進んで八足門の前で本殿を参拝しますが、有料の御祈祷に参加すれば八足門の内部にも入って本殿前での正式参拝ができます。
御祈祷を受ける際にはスーツや礼服などを着用するのが望ましいとされ、祈祷後は御札やお守りなどの授与品がもらえます。
4.祭神・大国主大神の物語
出雲大社の祭神は「古事記」や「日本書紀」の日本神話でも重要な役割を果たしている大国主大神です。
因幡の白うさぎや須世理姫との結婚、スサノオノミコトの試練などの神話で知られる大国主大神の物語は、古くから日本人に親しまれてきました。
因幡の白うさぎを助けた話で大国主大神は薬草を用いて傷を治す民間療法を実践し、医療の神としての性格も見せています。
兄弟の迫害を受けて一度は命を落としながら甦り、スサノオノミコトの与えた試練による二度目の死からも生き返った大国主大神は、病に苦しむ人たちにも大きな勇気を与えてくれる神でした。
大国主大神は古代日本の「国造り」をした神としても知られていますが、天皇家の祖先の「天孫」が高天原から降臨した際には「国譲り」をして国土を献上しました。
その代償として建設された大国主大神のための立派な宮殿が、出雲大社の起源になったと伝えられています。
5.素鵞社と神楽殿も必見
若き日の大国主大神に数々の試練を与えたスサノオノミコトは、ヤマタノオロチ退治でも知られた神です。
拝殿と本殿の参拝を終えたら本殿の裏手にも立ち寄り、スサノオノミコトが祀られている素鵞社を参拝するといいでしょう。
出雲大社の1キロほど西にある稲佐の浜から事前に砂を採取して持ち寄れば、素鵞社の床縁下にある御砂を持ち帰ることができます。
この御砂は自宅敷地の四隅に置けば家が守られると言われているほどご利益のある砂です。
出雲大社を訪れたら、西の門から出て川を渡った先にある神楽殿も見逃せませません。
正面破風の下に飾られた長さ13.5m重さ4.4トンにも及ぶ巨大なしめなわも目を引きますが、その上には神社に珍しいステンドグラスも見られます。
神楽殿の南側にある高さ47mの国旗掲揚台には畳75枚分という全国で最も大きい日の丸の旗が掲げられており、その風景も有名な出雲大社名物です。
出雲大社を訪れて「縁結びの神」のパワーを感じよう
八上姫や須世理姫など多数の女神と結ばれて大勢の子孫を残した大国主大神は、縁結びの神として人気を集めてきました。
農業の神や商売の神、さらに医療の神としても信仰されてきた大国主大神の力が出雲大社には宿っています。
寺社巡りが好きなシニアなら、出雲大社を訪れればそうした目に見えないパワーが感じられるものです。