岐阜郡上おどりは、誰でも飛び入り参加自由で踊り上手には免許皆伝も受けられる

最終更新日:2017年12月14日

盆踊りは全国各地で行われていますが、その中で最も長い日数踊り続けられるのが岐阜県の郡上おどりです。

7月中旬から9月上旬まで続く郡上おどりは、徹夜で踊り明かす8月13日から16日の4日間にクライマックスを迎えます。

1.日本三大盆踊りの1つとして有名

郡上おどりが行われる岐阜県郡上市八幡町は郡上藩の城下町として栄えた町で、日本最古の木造再建城として知られる郡上八幡城が町のシンボルです。

そんな郡上八幡で夏の2カ月近くにわたって繰り広げられる郡上おどりは、郡上藩の初代藩主・遠藤慶隆が領民に奨励したのを発祥とする説があるほど古い歴史を持ちます。

郡上八幡の民衆が400年にもわたって伝えてきた伝統の郡上おどりは、徳島県の阿波踊りや秋田県の西馬音内盆踊りとともに日本三大盆踊りの1つに数えられています。

国の重要無形民俗文化財にも指定された郡上おどりは期間中の延べ32夜にわたって踊り続けられますが、8月13日から16日までの「徹夜おどり」は一番の盛り上がりを見せる4日間です。

2017年の例ではこの4日間を中心として7月8日の「おどり発祥祭」を皮切りに、9月3日の「おどり納め」まで2カ月近くにもわたって町中の会場を一巡りする盆踊りが展開されます。

2.盆の4日間は徹夜おどりに20万人が熱狂

盆踊りを徹夜で踊り明かす風習も昔は珍しくありませんでしたが、時代の移り変わりとともに日付が変わる前に終了するのが一般的となっています。

郡上おどりとともに日本三大盆踊りとして有名な阿波踊りは4日間で100万人以上の動員数を誇る日本一の盆踊りですが、終了時刻は連日午後10時半です。

同じく三大盆踊りの1つ西馬音内盆踊りも以前は夜が明けるまで踊られていたのが、現在では1日目と2日目の終了時刻が午後11時、最終日でも11時半で終了します。

その点で郡上おどりは8月13日と16日は翌朝4時頃まで、14日と15日は5時頃まで踊り明かすという文字通りの「徹夜おどり」です。

江戸時代に始まった当初から身分に関係なく参加者全員で楽しむ盆踊りでしたが、現在の郡上おどりも地元の人だけでなく誰でも自由に飛び入り参加して踊りを楽しめます。

3.「かわさき」から「松阪」まで踊りは10種類

郡上おどりの行われる会場はその日によって異なり、2017年は8月13日から15日までは新町から橋本町にかけて、16日は本町が会場でした。

いずれも会場の中央に据えられた屋形と呼ばれるおどり屋台の音頭とりと囃子かたによる唄と伴奏に合わせ、連日数万人の参加者が踊りの輪を繰り広げます。

踊りの種類は1つでなく、「かわさき」「春駒」「松阪」など10種類の唄に合わせて異なる振り付けで踊るのが郡上おどりの特徴です。

「かわさき」の朗々とした調べに乗って準備運動を兼ねた踊りを披露するのを皮切りに、アップテンポの拍子に合わせて飛び跳ねるように踊る「春駒」や、最も古く成立したと伝えられる「古調かわさき」など多彩な踊りが次々と登場します。

踊りの順番は必ずしも一定ではありませんでしたが、最後は必ず「松坂」で締めくくるのが習わしです。

4.初代郡上藩主が領民に踊りを奨励

400年の歴史を持つと言われる郡上おどりの起源が郡上藩の初代藩主・遠藤慶隆に由来するという説は前述しましたが、明確な記録が残されているわけではありません。

昔はそうした記録も文筆能力を持つ支配層の武士階級に独占されるのが常で、起源に関する記録がないのは郡上おどりが民衆の間で何百年も伝えられてきた証拠です。

その伝承によると初代藩主は領民との交流を深める目的で、藩内に行われていた風流踊りや念仏踊りを集めて奨励したと考えられます。

江戸時代中期になると郷土資料にも郡上八幡の民衆の間で行われていた唄や踊りに関する記述が登場します。

明治時代初期には風紀を乱す動きを取り締まる目的で全国各地の盆踊りが禁止されたのを受け、郡上おどりにも禁止令が出されました。

大正期になると郡上踊り保存会が発足し、昭和期にかけて郡上おどりが年々盛んとなっていったのです。

5.誰でも飛び入り参加自由で踊り上手には免許皆伝も

同じ日本三大盆踊りでも阿波踊りや西馬音内盆踊りはどちらかと言うと見る祭りですが、郡上おどりは誰でも飛び入り参加できる点が最大の特徴です。

踊りの振り付けには10種類あると言っても基本的な動作は共通しており、意外にシンプルな所作の繰り返しなのでそれほど難しくはありません。

浴衣に下駄履きで踊るのが本式とされますが、服装なども制約がなく自由に踊ることができます。

盆踊りと言えばシニアの女性は踊りやすいものですが、男性にとっては参加に躊躇される場合も少なくありません。

その点で郡上おどりは観光客の飛び入り参加を含めて男性の踊り手も多く、老若男女入り乱れて踊りに熱狂するような独特の雰囲気があります。

踊り疲れたら輪の外に出て一休みするのも自由で、時間の経つのも忘れて踊りに没頭するうちに夜明けを迎えているのです。

踊り上手と認められたら郡上踊り保存会から免許皆伝を受けられますので、自信のある人は審査してもらうといいでしょう。

日本三大盆踊りの1つ「岐阜郡上おどり」を楽しむ

今でも徹夜で踊り明かす風習を守っている点や、踊りを見る人より踊る人の方が圧倒的に多い点など、郡上おどりは日本三大盆踊りの名に恥じない祭りです。

夏の間は連夜のように町のどこかで盆踊りが繰り広げられる城下町の郡上八幡は、小京都と呼ばれる町並みや全国名水百選に選ばれた宗祇水もシニアの人気を集めています。