社会保険労務士の概要・試験内容・生かし方・シニアの勤務先は?

最終更新日:2017年10月19日

社会保険労務士(以下社労士)とは、人事労務、労働社会保険関係の専門家です。

企業の3大要素として「ヒト」「モノ」「カネ」が挙げられますが、その扱う分野から社会保険労務士は「ヒト」に関するプロフェッショナルと言えるでしょう。

1.社労士とはどんな仕事をしてる人か

多くの人が生活の糧を得るために会社で働き、その対価として給料をもらっています。

その際には各種労働法や労働保険によって、労働者の権利や生活が守られています。

また、健康保険・厚生年金保険にも加入し、ケガや病気、老後への備えもあります。

こうした労働社会保険諸法令に基づいた申請書・届出書の作成し手続きを代行したり、帳簿書類の作成、労務管理・社会保険に関しての相談に応じ、指導したりすることが主な業務となります。

このうち、相談・指導に関しては社労士でなくても行えますが、報酬を得て申請書や届け出の作成、手続きの代理は社労士資格がないと行うことができない独占業務となっています。

その他、会社の設立から廃止までの手続き、給与計算、年末調整と広く行っています。

社労士には、報酬を得て他人の求めに応じて業務を行う開業社労士と、企業等に勤務して業務を行う勤務社労士がいます。

2.どうやって社労士になるの?誰でもなれるの?

社労士になるには社労士試験に合格し、通算2年以上の実務経験があれば登録することができます。

実務経験がない人でも、受講料として75000円程かかります。

試験合格後に行われる約4か月の通信指導と、4日間の面接指導からなる事務指定講習を修了すれば登録することができます。

通信指導は各種事例に応じた申請書、届出書の作成、面接指導は各種法令に関する座学による講義になります。

試験には一定の受験資格があり、主な受験資格としては

1、学歴:短大卒以上、4年生大学の場合は62単位以上修得した者
2、経歴:国、地方公共団体の公務員として通算3年以上行政業務に従事した者
3、国家資格:行政書士となる資格を有するもの等

等の要件があります。

社労士試験は難関国家資格のひとつに数えられていて、合格率は毎年5%~8%程度で推移しています。

試験範囲も広く、合格に必要な勉強時間は1000時間が目安と言われています。

ですが合格者は20代から60代までと広く合格しており、受験者の中には一度目でお試し受験で来ている人も多いです。

しっかり勉強してきた人だけでの合格率はもっと高くなるため、十分に対策をして臨めば狙える資格です。

3.試験について

試験は毎年1回、8月の第4日曜日に行われています。

試験内容は択一式と選択式の2種類に分かれています。

択一式は各設問ごとに5つの文章があり、その中から正しいものまたは誤っているものを選択する形式です。

選択式は各設問に5つの空欄があり、用意された20個の語句の中から正解を選択する形式です。

全てマークシートになっており、計算問題や記述式の問はありません。

試験範囲となる主な科目として労働基準法、労働安全衛生法、労働保険徴収法、雇用保険、労働一般、社会保険一般、健康保険、国民年金、厚生年金保険が出題されます。

このうち、労働一般と社会保険一般からは、労働組合法や労働契約法、介護保険法等の法律や、厚生労働白書からの出題もあります。

合格基準の目安としては、択一式は総得点の7割(全70点中49点)かつ各科目4点以上、選択式は総得点の7割(全40点中28点)かつ各科目3点以上となります。

社労士試験の合否判定は相対評価で行われているため、受験者の平均点が高いと合格に必要な総得点も上がり、平均点が低いと総得点、各科目の基準点も下がります。

このように、その年の試験の難易度により合格ラインは変動します。

4.試験対策

社労士は多くの法律を扱うために各規定も膨大になり、試験範囲も広くなるため知識問題が多くなってきます。

実務と試験とは別物となり様々な内容が問われるため、実務経験者でもしっかりと試験対策が必要となります。

出題される問題のうち約6割は基本問題となり、ここは多くの受験者が正解してくる部分になります。

残り3割が更に発展した応用問題、1割が奇問難問という構成が多いです。

試験は相対評価で行われるため、誰もわからないような難問は間違えても合否に与える影響は少ないです。

誰もが正解する基本問題を間違えると影響は大きくなるので、各法律の基本的な事項は確実に押さえておく必要があります。

奇問難問は重箱の隅をつつくような問題が多いので、完全に網羅して押さえようとすると膨大な勉強範囲になってしまいます。

出題されても誰もわからないような問題は余り影響はありませんので、まずは基本問題を理解していくことが大切です。

また、総得点だけでなく各科目ごとに合格に必要な基準点があることに注意が必要です。

1科目でも基準点に満たないと、他が満点でも不合格となってしまうので、苦手科目を作らないように勉強を進めていくことが重要です。

試験範囲には厚生労働白書からの統計データからの出題や法改正も含まれており、特に法改正部分は出題頻度が高いので、直前期にはこれらも確認して対策が必要となってきます。

5.社労士資格の活かし方

社労士試験に合格して登録する人の3分の2が開業社労士となり自分の事務所を構え、3分の1が勤務社労士として登録すると言われています。

開業社労士として登録すれば、顧客を持ち労働相談、各種手続き等を請け負うことができます。

社労士には独占業務もあり、社労士資格は営業許可証のようなものとなります。

勤務社労士は企業に勤務し、主に総務、人事課等で業務を行います。

開業社労士の中には、長年年金関係に携わってきて年金関係に強い先生や、助成金を得意とする先生等、自分の得意分野に特化した業務を行う先生方もいます。

新たに開業しても、資金繰りや顧客の獲得が上手く廃業となる方もいますが、営業力や自分の得意とする分野があれば開業するのも社労士の選択肢のひとつです。

勤務社労士であれば資格手当がつく場合もあるでしょうし、培ってきた知識で労務管理、労働社会保険に広く対応できるようになれば大きな強みとなるでしょう。

社会保険労務士の概要について知ろう

社労士は人事労務、労働社会保険関係の専門家として、企業経営に必要なヒトに関することに多く関わるやりがいのある職業です。

全く違った職種から社労士の道を目指す人もいれば、キャリアアップのために資格を取得する人もいるでしょう。

今後の目標やそれまでの経験と併せて、社労士資格は仕事の幅を増やし新たな人生を拓くきっかけとなってくれるでしょう。