会社に勤めると、健康保険に加入し被保険者となり、必要に応じて保険給付を受けることができます。
このとき、給付を行う保険者にはどのような種類があり、その給付内容に違いはあるのでしょうか。
1.健康保険の保険者は2種類
健康保険に加入すると、病院にかかったときの費用負担が3割になったり、
私傷病で働けなくなった間は手当金が支給されたりと様々な保険給付を受けることができます。
この保険給付を行う者を、保険者と言います。
健康保険の保険者には、公法人である全国健康保険協会と、
企業が単独もしくは共同で、別法人として設立している健康保険組合があります。
全国健康保険協会の行う健康保険は「協会けんぽ」とも呼ばれ、平成20年10月から発足されています。
それまでは政府が健康保険事業を行っていました。
健康保険組合は企業が設立するもので、単独設立では700人以上、共同設立であれば合計して3000人以上の被保険者がいれば、厚生労働大臣の認可を受けて設立することができます。
こちらは「組合健保」と呼ばれています。
2.どっちが保険者となるのか
このように、普段はあまり意識することはないかもしれませんが、健康保険の保険者には2種類あります。
原則として、健康保険組合の設立されている企業にお勤めの方は組合健保に加入し健康保険組合の設立されていない企業にお勤めの方は、協会けんぽへの加入となります。
被保険者の希望に応じて保険者を選ぶことはできません。
尚、2か所以上の会社に勤務されている方で、それぞれ協会けんぽと組合健保があり保険者が異なる場合は、一つの保険者を選択します。
一般的には健康保険組合は大企業が設立しているので、規模の大きな会社にお勤めの方は組合健保に加入されている方が多くなっています。
また、中小企業でも同じ業種の会社同士で共同で組合を設立している場合もあるので、その場合はその組合健保への加入となります。
交付されている被保険者証に保険者名が記載されているので、
こちらでご自身の加入している健康保険の保険者を確認することができます。
3.保険者による給付の内容の違い
健康保険からは、被保険者とその被扶養者の疾病・負傷、出産及び死亡について保険給付が行われています。
その内容は健康保険法に定めがあり、基本的に協会けんぽも組合健保も給付内容は同じになっています。
しかし組合健保には規約で定めることにより、保険給付に上乗せして付加給付を行うことができ、
一部負担金の額についても減額・免除することができる特例も認められています。
組合によって内容は異なりますが、同じ保険事故に対してでも協会けんぽからの給付よりも手厚い内容になっていたり、
被保険者や被扶養者の支払う一部負担金が低く抑えられていることが多いです。
この組合健保の付加給付と一部負担金の特例により、受けた療養によっては受け取れる手当金の額も、
自分で払う費用負担も協会けんぽに比べ大きく変わってくることもあります。
これは協会けんぽにはない、組合健保の大きなメリットとなっています。
ですが、財政難から付加給付等がなく保険給付水準を協会けんぽと同等とする組合や、組合を解散して協会けんぽへと移行する組合もあります。
ご自身の加入されている組合のホームページ等で給付内容について確認しておくとよいでしょう。
4.給付だけでなく保険料にも違いがある
協会けんぽと組合健保では、給付内容だけでなく支払う保険料にも違いがあります。
協会けんぽは都道府県ごとに保険料率が決まっていて、被保険者の標準報酬月額に保険料率を掛けて毎月の保険料を算出しています。
標準報酬月額とは、被保険者の給与の平均額を一定の額に区分けしたもので、保険料の徴収や保険給付の額の計算の基礎となる額です。
平成29年度の保険料率は都道府県ごとに9.69%~10.47%と設定されており全国平均は10%となっています。
組合健保は3%~12%の間で独自に保険料率を設定できるのですが、一般的には協会けんぽより低く設定されています。
更に異なるのは保険料率だけではありません。
保険料の負担割合も違ってきます。
基本的に社会保険料(健康保険、厚生年金)は被保険者と会社とで半額ずつ折半負担しています。
毎月の給与から引かれている保険料は、半額の被保険者負担分となっています。
協会けんぽでも保険料を被保険者と会社とで半額ずつの負担としています。
対して組合健保は会社側の負担割合を大きく設定していることがあります。
例えば保険料率が8.5%だとしたら、被保険者3.5%、会社が5%と被保険者の負担が少なくなっています。
標準報酬月額30万円の人だと、被保険者負担分の保険料率が2%違うだけでも毎月6000円、1年だと7万2000円の差となってきます。
保険料でも組合健保の方が有利なことが多いです。
協会けんぽと組合健保の違いを知り、その内容を確認しよう
普段は給付や保険料率について保険者ごとの違いは気にしたことはない方も多いかもしれません。
ですが、このように給付水準や被保険者の負担の面からも、協会けんぽより組合健保の方が有利な内容になっています。
ご自身の保険証を見直して、保険者が組合健保になっていたら給付内容や保険料率を確認してみるとよいでしょう。