定年後に働きながら年金を満額受給する方法

最終更新日:2017年7月17日

公的年金だけでは将来の生活に不安があり、定年後も働く人が多くいます。

働きながら年金を貰うとどうなるのか、どうすれば満額貰えるのかその仕組みを見ていきましょう。

1.厚生年金の支給開始

厚生年金では、以前は60歳から定額部分(65歳以降の老齢基礎年金相当部分)と、報酬比例部分(65歳以降の老齢厚生年金相当部分)が支給されていました。

平成6年の法改正により、まず定額部分が2年ごとに1歳ずつ支給開始が繰り上げられていきます。

定額部分の支給開始の65歳までの引き上げが完了すると、次いで報酬比例部分も2年ごとに1歳ずつ繰り上げられます。

最終的には厚生年金、国民年金共に65歳からの支給になります。

現在は報酬比例部分の繰り上げ途中にあり、昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生まれの方は62歳から報酬比例部分の厚生年金を受けることが可能。

65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金の組み合わせで受給することができます。

昭和36年4月2日以降生まれの方は、年金の支給は65歳からとなります。

女性の支給開始年齢繰り上げは、これより5年遅れのスケジュールで行われています。

2.働きながら年金を貰うと

多くの会社は60歳の定年の定めがあります。

会社には希望者の65歳までの雇用を確保する義務があり、定年後も働き続けることを希望する人も増えています。

60歳以降も働き続けた場合、生年月日に応じた報酬比例部分の支給開始年齢に達すると年金を貰いながら被保険者として保険料を納めるという形になります。

この場合の年金額は一度受給権取得時に決定され、以後の被保険者期間は年金額には反映されず一旦据え置きとなります。

受給権取得後の被保険者期間をその都度計算していたら毎月年金額が変更になってしまいます。

その後、退職して被保険者でなくなり、資格を取得することなく1月が経過した時点で、受給権取得後の被保険者期間も含めた年金額に再計算されます。

そして年金受給権者が被保険者である時は、受ける報酬と年金額に応じて年金額の一部、または全部が支給停止になります。

この仕組みを在職老齢年金と言います。

3.在職老齢年金の仕組み

在職老齢年金の支給停止額は、被保険者の標準報酬月額とその月以前1年間に受けた標準賞与額、年金月額の合計によって決まります。

標準報酬月額とは、受けている報酬の1月分の平均額を一定の範囲に区分した額です。

標準賞与額は受けた賞与額の1000円未満を切り捨てた額です。

年金の月額とは報酬比例部分のみで計算し、加給年金額や繰下げ受給した場合の加算額、老齢基礎年金の額は含まれません。

65歳前の在職老齢年金の場合は、標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額の12分の1の合算額(これを総報酬月額相当額と言います)と年金の月額との合計が28万円を超える場合は一定額が年金額から減額されます。

65歳以降の在職老齢年金は基準が緩くなっており、総報酬月額相当額と年金の月額との合計が46万円を超えた場合は、超えた額の2分の1相当額が年金額から減額されます。

尚、厚生年金から支給されている経過的加算と、繰下げ受給した場合の繰下げ加算額、老齢基礎年金は減額されずに全額支給されます。

加給年金額は、年金月額が全額支給停止となっていなければ支給されます。

4.被保険者とならずに働く

このような在職老齢年金の仕組みにより、年金を貰いつつ被保険者として働くと年金が減額して支給されます。

特に65歳前は支給停止となる基準額が低い為、減額の対象となる方も多いかと思います。

働きながらでも年金を満額受給する方法として、被保険者とならずに働く方法があります。

短時間労働者でも勤務時間、勤務日数がその事業所の通常の労働者の4分の3以上あれば被保険者として扱われます。

目安としては週30時間以上、月15日以上の勤務となります。

そこで、労働契約の変更により、被保険者の適用を受けない短時間労働者として働き続ければ在職老齢年金による調整は行われません。

注意点として、厚生年金は健康保険とセットでの加入となっている為、同時に健康保険の資格も喪失となってしまいます。

また、被扶養配偶者がいる場合は健康保険の被扶養者と国民年金第3号被保険者から外れてしまい、配偶者の方ご自身での保険料負担が発生してしまいます。

契約変更には会社側の都合もあるので協議が必要となりますし、社会保険から外れた後の負担等も考慮する必要があります。

また、個人事業主は被保険者とはなれませんので、定年後に個人事業主として働き続ければ、減額されずに満額の年金を受給しながら働き続けることができます。

5.減額調整の範囲内に収める

60歳以降再雇用や継続雇用として働き続ける場合、60歳前と比べて賃金額が減少することが一般的です。

賃金を多く貰っても年金額が減額されてしまうので、トータルで受け取る金額は同じになるように賃金額を調節する方法もあります。

65歳以降は支給停止の基準額が46万円と高額になるので調整もしやすいでしょう。

また、60歳~65歳までの間であれば、高年齢雇用継続基本給付という制度を活用することができます。

5年以上の加入期間があれば60歳時点に比べて賃金が下がった場合、低下した割合に応じて最大でその月の給与額の15%が支給されるという雇用保険の仕組みです。

この場合、60歳時点の賃金月額に比べて給与額が61%未満に低下場合は、給与額の15%が雇用保険から支給され、年金額の方はその月の標準報酬月額の6%相当額が支給停止となります。

これにより雇用保険からの給付と併せて貰える額は増えることになります。

定年前の賃金額に応じて、雇用継続後の賃金を調整していくのもひとつの方法となるでしょう。

働きながら年金を満額受給する方法を考えよう

毎月の収入によって老後の生活は大きく変わってきますし、仕事を続けることで健康の維持に繋がります。

年金を貰いながら働くことで生活の充実度を高めることにもなるかもしれません。

受給額やどのような老後生活を送りたいかを考えて、自分にあった選択をしていくことが重要になってきます。