定年後の旅!秋芳洞(山口県)で荘厳な自然の力と悠久の時に呆然

最終更新日:2017年9月25日

山口県美祢市、国定公園の秋吉台にある大鍾乳洞「秋芳洞」は、現存する数々の鍾乳洞のなかでも日本屈指の規模を誇ります。

地下100mの深さにある神秘の空間は一年中17℃に保たれ、約1kmのコースを遊歩道で快適に観光することができます。

1.歴史と魅力

鍾乳洞とは、地殻変動によってできる石灰質の岩の割れ目から長い年月をかけて雨水に溶かされ空洞化してできる洞窟のことです。

秋芳洞は、3億5000万年前に起きた海底火山の噴火によってできた堆積岩が隆起し、数十万年前にはたまった地下水が水路を成して侵食を始めたことに起源があります。

氷河期の訪れや、地形上の集水量に助けられ、現在の巨大な洞窟の形ができあがりました。

その昔「滝穴」と呼ばれ、神の住む神聖な場所として地元民ですら近づかなかった秋芳洞。

明治の頃になると探検・調査が進められ、素晴らしい景観が紹介されるようになり、今では山口県が誇る観光スポットのひとつとなっています。

また日本で唯一特別天然記念物に指定された鍾乳洞でもあり、大正15年には昭和天皇が探勝の際に「秋芳洞」の名前をつけたことでも有名です。

2.必見オススメ鑑賞ポイント

ひんやりと冷えた空気が肌を撫でる道を秋芳洞まで歩いていくと、洞内に湧き出る地下水と雨水が轟音をたてて勢いよく吹き出す岩の割れ目にたどり着きます。

意を決してその正面入り口をくぐると、内部は圧巻の広さ。
まず目に飛び込んでくるのは、外の光が水に反射にて入り口天井部を青白く照らす「青天井」です。

遠くなる水の音を背後にしばらく進んでいくと、うろこ状に皿が積み重ねられたような形の奇観「百枚皿」が左手に見えます。
これは、上方から流れる水の波紋の形に石灰成分が沈積してつくられる、いわば自然の彫刻。

そのまま進み天井を見上げれば、今度はまるで吊り下げられた無数の傘が今にも降ってきそうな「傘づくし」。
これは天井から下へ落ちる石灰分が固まってできたものです。

他にも「千畳敷」や「くらげの滝のぼり」など、長い歳月をかけてこの鍾乳洞が形づくられたことが分かる景観が多数あります。
なかでも秋芳洞中腹付近にある「黄金柱」は、秋芳洞のシンボルとも言える巨大石灰華柱。

何万年もの時間をかけて岩肌に付着した石灰分は両腕を広げるよりも太く、天を突き刺す柱状になり、黄金色に光り輝いています。

その他いたるところに見られる、固まりきれなかった石灰分が地面に落ちて筍のように積み上がった石筍や、石灰分が水に溶けだす軌跡を岩肌に残した鍾乳石を存分に楽しむことができます。

内部は明るすぎない程度にところどころライトアップされ、特に必見の見どころには、ボタン式の音声解説が流れる機械が設置されており、説明を聞くこともできます。

3.冒険コースで探検家気分

秋芳洞には3つの出入り口があります。

観光バスセンターに最も近い正面口・洞窟の観光途中で地上に一度出ることができるエレベーター口・正面口とは反対の洞窟末端にある黒谷口です。

そのなかでも正面口から入ると、すぐ左手に「冒険コース」の看板が見えてきます。
入洞料にプラス300円がかかりますが、懐中電灯をレンタルし、はしごを登ったり鍾乳石の間をすり抜けてのワイルドな体験が可能です。

所要時間は約15分。

ライト無しではじっくり見られない細部や、このコースにしかない見どころを堪能することができます。

4.生き物

洞窟のなかには、暗がりで独自の進化を遂げた生物やコウモリ、地下水中を住み家とする水性貝類が生息しています。
コウモリはモモジロコウモリ、テングコウモリ、ユビナガコウモリなど6種類。

光の届かない洞窟で目が退化し白い身体をもつようになったシコクヨコエビやゴミムシ、アキヨシミジンツボやオオアカザトウムシ、ホラアナナガコムシ等、珍しい生き物を見ることができます。

洞内、特に水中は暗いため、生物をよく観察したい人は、懐中電灯片手にまわれる冒険コースや、市の観光部が主催するツアーに参加するのがオススメです。

5.雨乞いの寿円禅師とかっぱそば

山口県に伝わる民間伝承には、秋芳洞にまつわるこのような話があります。
昔この地域にひどい日照りが続いて、村人がすっかり困ってしまったことがあったそうです。

この日照りには、人間のみならず瀧が淵に住む河童も悩まされ、空腹のあまり自住寺という禅寺の池に泳ぐ鯉を一匹食べてしまいました。

ちょうどその後に、その寺の住職・寿円禅師が滝穴(現秋芳洞)にこもり、雨乞いを始めたのを見て、河童は鯉を食べた自分を呪い殺そうとしているものと思い、祈祷の邪魔をしました。

けれど禅師は河童を気にもとめず、ひたすら人々のために祈り続けるのです。
河童はその姿に心を打たれ、禅師に弟子入りし、一緒に雨乞祈願を行いました。

そしてある朝、洞内に響く外の雨音に満願を悟った禅師は、自身の身を天に捧げようと、激流の瀧が淵に身投げしてしまいます。

気づいた河童は師を助けるため自分も追って飛び込みますが途中で力尽き、禅師と共に濁流に呑み込まれてしまいました。

その後、自住寺近くの川で寿円禅師の遺体を発見した村人は、その遺灰を練り込んで塑像をつくったということです。

現在この遺灰像は、秋芳洞の入り口付近にある開山堂に安置されています。
また、秋芳洞に続く参道付近の蕎麦屋では、この伝承をモチーフにした「かっぱそば」を食べることができます。

6.所要時間と注意点

秋芳洞は鍾乳洞探索と言っても、長靴や特別な装備は必要ありません。
車椅子の方でも、介助者同伴であれば正面入り口から百枚皿まで観覧することができます。

地面が一部滑りやすくなっているため、スニーカー等の滑らず長時間歩ける靴と、途中寒くなってもいいよう薄手の長袖があると良いでしょう。
所要時間はどの入り口から入るかによって変わってきます。

正面口から入り黒谷口から抜ける全てをまわるコースだと、のんびり進んで1時間、人によってはそれ以上かかります。

黒谷口から地上出口までの間にある、地球の歴史を歩いて体感する「3億年のタイムトンネル」は正面口からだと上り坂になっており、そこだけで10分程度みておいた方が無難です。

途中のエレベーター口を利用すれば、距離が半分になるので約30分程度で気軽に楽しむこともできます。
まわっているうちに疲れてしまった場合には、エレベーター口を気分転換に利用することもできます。

一度外に出ても、当日有効のチケット半券を見せれば再入場することが可能です。
また鍾乳洞の中にはトイレがないため、入洞前に済ませておくようにしましょう。

7.秋芳洞へのアクセス

JR山陽本線の新山口駅からバスで45分「秋芳洞」下車。
車の場合は、中国自動車道の美祢東JCT経由で小郡萩道路に入り、秋吉台ICから5分ほどで着きます。

入洞料は大人(高校生以上)1200円、中学生950円、小学生は600円。
利用時間は季節によって異なり、3〜11月の間は8.30〜17.30、12〜2月の間は8.30〜16.30になります。

年中無休。

秋芳洞で自然の神秘を楽しむ時間を過ごそう

荘厳な自然の力と悠久の時を感じる、日本最大規模の鍾乳洞「秋芳洞」。
静かにひとりで散策する方から賑やかな家族連れ、楽しそうなカップルまで、年間を通じて様々な方が訪れる観光名所になっています。

秋芳洞は、日本最大級のカルスト台地・秋吉台や科学博物館、全てを見渡せる展望台、少し先に進むとサファリパーク等もある、一日中楽しめるエリアにひっそりと開口しています。

山口県の市街地からは少し距離があり、バスの本数が少ないのが不便ですが、計画をたて、充実した旅行を満喫してみてはいかがでしょうか。