広島平和記念資料館(原爆ドーム、広島平和記念公園)アウシュビッツ収容所と並ぶ人類の負の遺産で平和を祈念する

最終更新日:2017年10月23日

世界初の原爆の惨禍に見舞われた街・広島。

その原爆の惨禍を保存し、未来に伝えていく役割を担っているのが原爆ドームや平和記念資料館です。

その普遍的価値は、1996年に世界遺産にも登録されて、世界中の人から認識されています。

1.平和記念公園

平和記念公園は、広島市の中心部に広がる122、100平方メートルの大きな公園です。

原爆投下前は、中島町、材木町、木挽町など6つの街に4000人以上の人が住んでおり、映画館なども立ち並ぶ広島を代表する繁華街でした。

現在でも街の跡を示す石碑が残されていますので、その名残を感じることができます。

今でも県庁やデパートが立ち並ぶエリアから川一本隔てたところになりますが、公園に入るとにぎやかさは消え、祈りの空気に包まれます。

広島駅からは市内電車を使って20分ほどで着きますので、アクセスも非常に良くなっています。

2.原爆ドーム

市内電車で「原爆ドーム前」に着きますとすぐ、木々の隙間から原爆ドームの姿が見え隠れします。

この原爆ドームは、1915年にチェコの建築家、ヤン・レツルの設計で建てられた「広島県産業奨励館」だった建物です。

1945年8月の原爆投下時、この建物のほぼ真上で原爆が炸裂しました。

そのため強烈な熱線で銅板拭きの屋根が一瞬で蒸発し、猛烈な爆風は建物の真下へ通り抜け、壁面だけがほぼダメージを受けなかったため、このような形で残ったと言われています。

建物のそばへ近づくことはできませんが、折れ曲がった鉄骨や周囲に飛び散ったレンガ片など、原爆の威力を無言で今に伝えてくれています。

3.原爆慰霊碑と平和の灯

原爆ドームから川を渡ると、広場と平和記念資料館が見えてきます。

その広場の真ん中に建てられているのが「原爆慰霊碑(広島平和都市記念碑)」です。

毎年8月6日には、この碑の前で平和祈念式典が催されます。

2016年には、アメリカの現職大統領として初めてオバマ大統領がここを訪れ、この碑の前で被爆者の方と抱擁を交わしました。

碑の中の石棺には、被爆して亡くなられた人すべての方の名前を記した名簿が納められ、石棺の正面には「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませんから」と記されています。

ここに眠る被爆者の方を雨露から守るために、碑は埴輪の家形に設計され、この碑の向こう側にはまっすぐ「平和の灯」と原爆ドームが見えます。

「平和の灯」は世界中から核兵器が廃絶された日に、消されることになっています。

4.平和記念資料館

被爆資料を展示し、原爆の惨禍を未来に伝えているのが平和記念資料館です。

数多くの写真や模型、そして何より被爆した方々から寄せられた遺品の数々が原爆の悲惨さを伝えています。

遺品が伝えるメッセージは日本の方だけでなく外国の方にも強く伝わるようです。

旅行の口コミサイト「トリップアドバイザー」2015年1月時点で「日本における必見の場所トップ20」のリストでは、平和記念資料館が2位に挙げられています。

そして、世界各地で核実験が行われるたびに広島市から送られている抗議文が、壁面にすべて掲出されています。

これがいまだに増え続けていることが、世界を取り巻く核兵器の現状を伝えています。

展示ルームの最後には「平和へのメッセージ」としてノートに感想を書き残すコーナーが設けられています。

かつて資料館を訪れたローマ法王ヨハネ・パウロ二世やマハトマ・ガンジーなどのメッセージも残されています。

5.被爆建物

平和記念公園やその周囲には、原爆ドーム以外にも被爆当初から使われている建物が残されています。

公園内の元安橋のたもとにある「平和記念公園レストハウス」もその一つです。

かつては呉服商の店舗として建てられ、被爆時は「燃料会館」として使われていました。

たまたまこの建物の地下室に入っていた人が原爆の難を逃れ、爆心地で唯一の生存者を出した建物だと言われています。(地下室は非公開)

また、平和公園近くの本通りにあるベーカリー「広島アンデルセン」も被爆建物の一つ。

戦後ベーカリーレストランとして改装されました。

広い平和公園散策で疲れた後に、一息つくにはいいところになっています。

6.8月6日

8月6日には、広島は祈りに包まれます。

朝8時から行われる平和祈念式典には、多くの広島市民が平和公園に集まり、8時15分には原爆で亡くなった人のために市内のいたるところで黙祷が捧げられます。

原爆慰霊碑には夜になるまで絶え間なく祈る人が訪れ、暗くなると原爆ドームを臨む川から、平和への願いを書いた無数の灯篭が流されます。

平和を祈る世界中の人たちの熱気を一番感じることができる日。

そしてその熱気を少しでも多くの人に感じてもらいたいと広島の人が願う日。

それが8月6日です。

日本人なら一生に一度は訪れてほしい場所

ポーランドのアウシュビッツ収容所と並んで人類の負の遺産として世界遺産にも登録されている原爆ドームと平和記念公園。

しかしその一方で、緑と水に囲まれた広島市の憩いの場所としての一面も持っています。

そこに流れる空気は決して重苦しいものではなく、むしろ平和であることのありがたさを実感できる公園です。

気軽な気持ちで一度は訪れてほしい場所です。