工場で大量生産される食品の中には、腐敗を防ぐ目的で保存料が使われている場合があります。
栄養ドリンクや醤油などへの使用が可能な安息香酸ナトリウムもその1つですが、この物質には健康リスクが潜んでいます。
1.保存料の種類と健康リスク
食品の腐敗や細菌の繁殖を防ぐ目的で添加される保存料にも多くの種類があって、安息香酸ナトリウムの他にソルビン酸カリウムやプロピオン酸類などが食品に使われています。
このうちソルビン酸カリウムは安息香酸ナトリウム以上に多くの食品で保存料として使用されていますが、動物実験では発がん性が確認されていることから健康への影響が懸念される物質の1つです。
安息香酸ナトリウムはシャンプーや化粧品にも使われている保存料で、日本国内で製造される食品では清涼飲料水と醤油・シロップ・マーガリン・キャビアにのみ使用が許可されいます。
安息香酸ナトリウムそのものにも動物実験での大量投与で死亡例が見られたような毒性は確認されていますが、保存料として微量に摂取する程度なら健康に大きな影響はないとも言われます。
それも以下に挙げる特定の条件下では有害性が発揮される可能性があるため、警戒すべきな保存料です。
2.安息香酸ナトリウムの特徴
安息香酸ナトリウムの元となる安息香酸は芳香族と呼ばれる有機化合物の一種で、微生物の繁殖を抑える抗菌作用を持つ物質です。
そのままでは水に溶けませんが、ナトリウムと結合させた安息香酸ナトリウムは水溶性に変化するため保存料としての使用が可能になります。
通常であれば食品に含まれる安息香酸ナトリウムが体内に摂取されても、肝臓の解毒作用で代謝された後に尿として排出されるためすぐに健康被害が生じることはありません。
動物実験では確かに毒性が確認されていますが、食品の保存料として添加されている安息香酸ナトリウムはごく微量です。
体内に蓄積されない限りは安息香酸ナトリウムも同様の毒性を人体に及ぼすことはないとは言え、ビタミンCと同時に摂取すると有害なベンゼンに変化することが知られています。
3.ビタミンCとの同時摂取は危険
ビタミンCは野菜や果物などに多く含まれている栄養素として、健康を維持するのに欠かせない物質の1つです。
ビタミンCは体の調子を整えるだけでなく、体内で発生する有害な活性酸素を除去する作用も持っています。
そのため食品添加物としてもビタミンCは酸化防止剤としてよく使用されており、清涼飲料水もその例外ではありません。
酸化防止剤として使われるビタミンCは、原材料名に「アスコルビン酸」と表示されている場合もあります。
安息香酸ナトリウムが保存料として含まれる飲料にこのビタミンCが存在すると、鉄や銅など微量金属を触媒としてベンゼンが生じます。
ベンゼンは豊洲市場の移転問題でも土壌汚染物質として取り上げられたように、白血病などがんの原因となる有害な物質です。
実際に安息香酸ナトリウムとビタミンCの両方が含まれた清涼飲料水からベンゼンが検出され、回収騒動になった例も過去にはありました。
飲料にベンゼンが含まれていなくても、安息香酸ナトリウムを含む飲料とビタミンCを含む食品を知らずに同時摂取してしまう可能性は考えられます。
4.ベンゼンが引き起こす病気
ベンゼンは六価クロムやヒ素・アスベストなどと並んで、国際がん研究機関の認定する発がん物質リストのグループ1として指定されています。
このグループ1はグループ2以下と比べて最も発がん性が高い物質群で、実験結果から人間に対する発がん性が確認されたことを意味します。
ベンゼンには発がん性以外にも悪性貧血の原因となる可能性や生殖毒性も指摘されており、日本でもさまざまな法規制の対象とされている有害物質です。
食品などを通じてベンゼンを摂取すると、白血病その他のがんを発症するリスクが高まります。
安息香酸ナトリウムはビタミンCとの相互作用でベンゼンを発生する可能性があるため、食品の保存料として使用する際にはメーカー側も同時使用しないよう万全の対策が行われています。
とは言え購入した人がビタミンCを含む食品と食べ合わせる可能性もありますので、安息香酸ナトリウムが保存料として使われている食品は可能な限り避けるのが無難です。
5.栄養ドリンクには要注意
魚介練り物や加工肉・乳製品・和菓子・菓子パンなど多くの食品に保存料として使われているソルビン酸カリウムに比べ、安息香酸ナトリウムが使われている食品は限定的と言えます。
安息香酸ナトリウムの使用例が比較的多いのは、シニア世代の人も疲労回復や滋養強壮の目的でよく飲んでいる栄養ドリンクです。
栄養ドリンクにはさまざまな滋養成分が含まれているため、安価に細菌の繁殖を防止できる安息香酸ナトリウムがよく使われているのです。
安息香酸ナトリウムが含まれた栄養ドリンクを飲む場合は、ビタミンCを含む食品や飲み物を摂取してから時間を置くようにするといいでしょう。
栄養ドリンクを始めとする清涼飲料水を購入する際には、できるだけ安息香酸ナトリウムが含まれていない製品を選ぶことも大切です。
安息香酸ナトリウムが含まれる食品に気をつけよう
がんの原因は必ずしも発がん性を持つ食品の摂取に限らず、長年の生活習慣やストレス・加齢によっても発症します。
がんになる確率を少しでも減らすためには、ベンゼンなどの発がん物質をできるだけ摂取しない食生活の工夫も欠かせません。
栄養ドリンクをよく飲むという人は、原材料名の表示を一度確認してみるといいでしょう。