味噌汁の具として日本人に親しまれてきたわかめは、ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富な海藻です。
わかめご飯やわかめ入りのおにぎりも子供からお年寄まで人気ですが、わかめの持つ優れた健康効果が注目を集めています。
1.わかめに含まれる栄養素
日本の沿岸や朝鮮半島南部の沿岸など限られた海域にしか生育していなかったため、わかめを食用とする国は世界でも日本と韓国に限られます。
日本は言うまでもなく世界有数の長寿国ですが、お隣の韓国も近年は平均寿命が飛躍的に伸び、将来的には世界一の長寿国となることも予想されています。
そんな両国だけで食べられてきただけに、わかめには長寿につながるような健康効果を持つ成分が多く含まれます。
わかめは食物繊維が多く腸内環境を整える効果があるだけでなく、ビタミンA・ビタミンK・葉酸などのビタミンやカルシウム・カリウム・マグネシウムといったミネラル分も豊富です。
海の野菜とも言えるほどビタミンやミネラルがたっぷり含まれたわかめには、甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素も含まれています。
わかめに含まれる食物繊維にもいろいろな種類があり、いずれも栄養素としては吸収されませんが、フコイダンやアルギン酸は特に健康効果の高い物質として注目される成分です。
2.食物繊維の健康効果
食物繊維には一般に水溶性と不溶性の2種類があって、わかめにはその両方が含まれています。
このうち不溶性食物繊維の代表格は、植物の細胞壁を形作っているセルロースです。
野菜の食物繊維ではセルロースが大半を占めますが、わかめの中にも存在します。
こうした不溶性の食物繊維は便に混じって腸の蠕動運動を促し、腸内の掃除役として活躍しています。
一方の水溶性食物繊維はわかめや昆布・ひじきなどの海藻と果物に多く、野菜ではゴボウやオクラなど限られた種類にしか含まれていません。
わかめに含まれる水溶性食物繊維の中でも、多糖類の一種フコイダンは免疫力を高めてがんを予防する効果があると言われています。
わかめのぬめり成分となっているフコイダンは、健康食品の材料としても使われるほど人気が高まっている成分です。
同じく水溶性食物繊維のアルギン酸は増粘剤や安定剤として食品添加物に使われますが、わかめにはこれが自然の状態で存在し、血圧上昇を抑制する効果やコレステロールを下げる効果を発揮します。
3.甲状腺ホルモンの材料になるヨウ素
以上のような食物繊維の健康効果が見直されているわかめですが、俗説として発毛にも効果があると言われてきました。
「わかめは髪の生育に良い」という評判が広まったため、薄毛に悩む男性の間でわかめを食べるのがブームになったほどです。
実際にはたんぱく質が大半を占める毛髪そのものの成分とわかめの成分に直接の関係はありませんが、わかめに含まれるヨウ素が髪の成長を促すことは考えられます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となる物質で、この甲状腺ホルモンが皮膚や毛髪も含めた細胞の新陳代謝を促す働きをしています。
日頃の食生活でヨウ素が不足している人は甲状腺ホルモンの働きも弱くなっている可能性がありますので、ヨウ素を多く含むわかめを食べることで結果的に発毛にもプラスに作用することは有り得ます。
ただしヨウ素の過剰摂取は甲状腺ホルモンの異常分泌にもつながりますので、乾燥わかめの状態で1日40gまでの摂取にとどめるのが無難です。
4.豊富なミネラルにも注目
ヨウ素を材料の1つとする甲状腺ホルモンは細胞の新陳代謝を促す働きをしてくれるだけに、老化を抑制する効果も期待できます。
甲状腺ホルモンは交感神経を刺激する作用をしており、その結果として基礎代謝が活発になるとともに精神の安定にもつながります。
わかめに含まれるヨウ素は、シニア世代が若々しさを保つためにも必要な栄養素の1つです。
わかめにはヨウ素以外にもミネラル分が豊富に含まれていますが、中でも骨の健康に役立つカルシウムやマグネシウムが注目されます。
カルシウムは言うまでもなく骨の材料となる物質の1つで、わかめには100g当たり150mg含まれています。
同じく107mg含まれるマグネシウムは骨の形成を助ける働きをしており、特に高齢の女性が発症しやすい骨粗鬆症の予防に欠かせません。
わかめは味噌汁の具として食べることが多いですが、わかめに含まれるカリウムはナトリウム排出を促してくれるため、味噌に含まれる塩分の減塩作用も持ちます。
5.わかめを取り入れたメニューの工夫
このように数々の健康効果を持つわかめを食生活に取り入れれば、さまざまな病気の予防にもつながります。
低カロリー食としても人気が高まっているわかめは、従来のように味噌汁の具だけでなくいろいろな調理法が考え出されています。
健康の観点から見て特に効果が高いのは、水溶性の成分が多いわかめの栄養素を丸ごと摂取できるわかめスープです。
わかめを味噌汁の具として食べる場合もそうですが、スープなら溶け出したビタミンなどの栄養成分もすべて飲み干すことができます。
生わかめを使った海藻サラダもビタミンを新鮮な状態で摂取できる点で人気のメニューです。
日本人にとって古くから親しまれてきたのは何と言ってもわかめを使った味噌汁ですが、ネギはカルシウムの吸収を阻害するリンが多く含まれていますので、同時に使用するのは避けた方がいいでしょう。
わかめの味噌汁はわかめと味噌の優れた栄養成分が一緒に摂取できるため、最も理想的な健康食と言えます。
わかめを食生活に取り入れ、海藻のパワーをもらう
日本人の食生活も近年はすっかり欧米化が進み、わかめの味噌汁を飲んでいる人も減ってきています。
そんな人でもわかめスープやわかめサラダなら、それほど抵抗なしに食事のメニューに付け加えやすいものです。
毎日の食生活にわかめを積極的に取り入れることで、豊富な健康効果を持つ海藻の成分が体の隅々にまで行き渡るようになります。