鹿苑寺(金閣寺)は将軍・足利義満の美意識が集約された世界文化遺産

最終更新日:2017年11月27日

金閣寺の別称で知られる鹿苑寺は、室町幕府3代将軍の足利義満が創建した臨済宗相国寺派の寺院です。

豪華絢爛な金箔張りの金閣は昭和30年に再建された建物で、日本の伝統文化を代表する建築物として外国人観光客にも人気です。

1.世界文化遺産は放火焼失の悲劇を乗り越え再建

京都市北区にある鹿苑寺の境内には金閣の名で知られる舎利殿の他、本堂に相当する方丈や夕佳亭と呼ばれる茶室・不動堂などの建造物が庭園の間に点在しています。

国の特別史跡・特別名勝にも指定された庭園の美は金閣とともに日本の伝統文化を愛する国内外の人々を魅了してきました。

室町時代の北山文化を現在に伝える金閣と鹿苑寺は国際的評価も高く、1994年に「古都京都の文化財」の構成要素としてユネスコの世界文化遺産にも登録されています。

目にも鮮やかな金箔張りの金閣は鹿苑寺を訪れる観光客にとって一番のお目当てですが、室町時代に建てられた旧国宝の金閣は昭和25年の放火で焼失してしまいました。

政府・自治体や経済界からの援助を受けて5年後の昭和30年に再建された金閣は金箔張りの装いも新たにされ、室町時代に創建された当時の姿が再現されることとなったのです。

2.再現された創建当初の姿

昭和25年に焼失する直前の金閣は金箔もほとんど剥がれ落ち、創建当時の華麗さが失われた簡素な姿だったとも伝えられています。

500年以上の歴史を持つ貴重な文化財が焼けてしまったのは大きな損失でしたが、再建されたことで金色に輝く本来の姿を取り戻した金閣は観光の大きな目玉となりました。

幸いにして焼失前の金閣は明治時代に大規模な修理が行わており、その際に詳細な図面が残されていたことから忠実な復元が可能だったのです。

材料が一新されて細部のデザインも焼失前と再建後では微妙な違いが見られますが、全体的には創建当時の姿が再現されたと言えます。

貴族的な寝殿造りの建築様式と武家的・禅寺的な落ち着いた佇まいが融合した金閣の建築美は、華麗な北山文化を代表する最高傑作の1つです。

鏡湖池に映る「逆さ金閣」は写真好きのシニアにとって絶好の被写体となりますが、好天に恵まれた日ほど良い写真が撮影できます。

3.将軍・義満の美意識を集約

現代に再現された金閣には、室町幕府の権威を高めて自ら太政大臣となった足利義満の美意識が集約されています。

足利家の嫡男を代々将軍とした室町幕府も、2代義詮の時代までは権力が不安定でした。

3代将軍となった義満は管領を廃して南北朝合体を実現させ、絶大な権力を手中に収めたのです。

明との国交を回復して勘合貿易を奨励した義満は築き上げた莫大な富を背景に、豪華絢爛を特徴とする北山文化の担い手となります。

義満は鎌倉時代に西園寺公経が建立した西園寺を譲り受けると、これを改築して北山山荘として整備しました。

義満が1408年に没した後は彼の遺言に従って、北山山荘が鹿苑寺の名で禅寺とされます。

鹿苑寺にあった建造物は応仁の乱で大半が焼失しましたが、舎利殿は長い歴史を経て昭和の時代まで保存されてきました。

そんな金閣も昭和25年に起きた火災によって失われ、再建されることになったのです。

4.焼失の経緯と文学作品

昭和25年7月2日未明に発生した火災で金閣は全焼し、金閣とともに国宝指定されていた木造足利義満坐像も同時に焼失しました。

この火災は当初から不審火の疑いがあるとして捜査が進められた結果、修行中だった見習い僧による放火と判明しています。

その動機をめぐっては三島由紀夫や水上勉らが小説やノンフィクションを通じて大胆な推理を展開し、数々の名作を生んできました。

特に三島由紀夫の「金閣寺」では劣等感を抱える僧の複雑な心理が精緻に描かれ、三島文学の代表作として国際的にも高い評価を得ています。

水上勉のノンフィクション「金閣炎上」も金閣寺放火事件を知る上で重要な資料です。

社会に大きな衝撃を与えた放火事件の悲劇を乗り越え、多くの支援を受けて再建された金閣だからこそ、訪れる観光客に感動を与えているのです。

5.庭園や夕佳亭・不動堂も必見

鹿苑寺では有名な金閣にばかり注目しがちですが、境内には他にも見どころが多くあります。

国の特別史跡・特別名勝に指定された庭園には鏡湖池に鶴島や亀島といった風流な島々が配され、「畠山石」「細川石」などと命名された奇岩名石も見逃せません。

鹿苑寺の庭園は園内を回遊しながら鑑賞する池泉回遊式日本庭園で、江戸時代前期に再興された入母屋造の方丈には胡蝶侘助と呼ばれる椿の名木が前庭に植えられています。

足利義満がお茶の水を汲んだ銀河泉や手洗いに使ったとされる厳下水、鯉魚石が置かれた竜門滝を過ぎると、虎渓橋を渡った先に夕佳亭と呼ばれる茶室が見えてきます。

弘法大師の作と伝わる不動明王が安置された不動堂は、戦国時代に宇喜多秀家が再建したと言われるほど古い建造物です。

鹿苑寺を訪れたら金閣と並んで庭園の美しさもじっくり鑑賞しながら、それらの由緒ある建物や名所を見て回るといいでしょう。

昔訪れた鹿苑寺の美しさをもう一度

波乱の歴史を経て創建当初の輝きを取り戻した金閣は、日本が誇る伝統文化の最高傑作と言っても過言ではありません。

その金閣を中心に据えて日本庭園の美を極め尽した鹿苑寺には、国内外から1年を通じて大勢の観光客が訪れます。

紅葉の季節や雪の季節の金閣も美しく、四季折々に表情を変える点でも鹿苑寺は人気を集めているのです。