定年後の旅!五山の送り火(京都府)ご先祖様を再び冥土へ送る道しるべ

最終更新日:2017年9月25日

京都の街の山ヶに、燃える炎で描かれた、文字や絵が浮かびあがる。

五山送り火は、祇園祭と並ぶ、夏の京都の伝統行事の1つです。

今回は、五山送り火の魅力と、観賞スポットをご紹介します。

ぜひ、闇夜に浮かぶ真夏の京の風物詩を、ご堪能ください。

1.五山送り火は、ご先祖様をあの世に導く道しるべ

一般には大文字焼きと呼ばれていますが、京都の人々は、五山送り火と言います。
お盆にお迎えした先祖の魂が、迷わずあの世に帰れるように、願いをこめて灯す炎の道しるべ。

赤く燃え上がる炎を眺めながら、先祖に鎮魂の祈りを馳せる、大切な時間です。

五山に灯る送り火は、東山如意ヶ嶽の大文字、松ヶ崎西山と東山の妙・法の文字、西賀茂船山の舟形(精霊船とも言います)、大北山の左大文字、嵯峨鳥居本の曼茶羅山の鳥居形です。

8月16日の夜、8時00分に大文字から始まり、8時05分妙法、8時10分舟形、8寺15分左大文字、8時20分鳥居型の順に点火され、30分程燃え上がります。

当日は、約10万人の人々で混み合う、夏の京都の大人気イベント。
雨天決行です。

京都の街は幻想的な世界となり、とても美しいものです。

2.五山送り火の歴史(起源)は?

五山送り火の起源や由来には、諸説があり定かではありません。
はじまりは、平安初期(空海)とも、室町中期(足利義政)とも、江戸初期(近衛信尹)とも言われています。

空海説では、浄土村という小さな村で、代々受け継がれた祭事が送り火として、全国に知られるようになったとか。
送り火を確認できる最古の資料は、慶長8年(1603)の「慶長日件録」で、その頃にはすでに習慣になっていたと、記録されているそうです。

明治時代には「十山送り火」で、北区市原の「い」、右京区鳴滝の「一」、北嵯峨の「蛇・長刀、」西山の「竿に鈴」がありました。
近代化がすすむと、先祖の霊や悪霊を否定する考えから10年間禁止され、解禁後に諸事情によりこれらは廃絶し、現在の五山のみとなりました。

また、昭和18年(1943)から3年間、太平洋戦争で人手が無く、「灯火管制」もあったため、送り火は行われませんでした。
代々受け継いだ伝統を守るため、市民と国民学校の生徒が、白いシャツで大の字を描き「朝の白い大文字」を奉納したというエピソードが残ります。

3.五山のご紹介と護摩木

拍子木型の護摩木(300円)に、名前と願い事を書いて志納しましょう。
当日、山上ヘ運ばれて、焚き上げていただけます。

・大文字(火床数 75基)
大の字は、弘法大師の筆によるとも伝わり、「大」は人の形を表すのだそうです。

護摩木に名前と病名を書いて納めると、病除けのご利益があると言われています。
護摩木の受付は、銀閣寺山門前。

・妙・法(妙 103基・法 63基)
涌泉寺と妙円寺の檀家の世襲で行われ、送り火の前夜と後に、日本最古の盆踊り「松ヶ崎題目踊り」が行われます。

護摩木の受付は、ありません。

・船形(79基)
舟形万燈籠ともいわれ、西方寺の開祖が唐から帰る途中で、船が嵐に遭ったが、「南無阿弥陀仏」と唱えて、無事だったという古事に由来しています。

点火の後、ふもとで西方寺住職の読経が行われ、送り火終了後には、念仏を唱えながら踊る、六斎念仏が行われますよ。
護摩木の受付は、西方寺門前。

・左大文字(53基)
大文字山は、険しい岩山のため火床が作れず、杭を立てたかがり火だったそうです。

東山の大文字より、太くたくましい文字です。
過去には、一画加えて、天の字だった時もあるとか。

護摩木の受付は、金閣寺門前。

・鳥居形(108基)
火床に松を使うため、他の山とは炎の色が違います。

親火床から松明を持って走り、火床に松明をそのまま突き立てるため、火の色が暗くなるそうです。
点火前の午後7時に、ふもとの広沢池で、灯篭流しが行われますよ。

護摩木の受付は、八体地蔵付近。

4.五山送り火のトリビア

送り火が消された跡の火床に、炭が残ります。
その消し炭は、魔除け・厄除け・無病息災・盗難除けのお守りになるので、多くの人が翌日、消し炭を取りに行くとか。

丸い器に水かお酒を入れて、送り火を映して飲むと一年無病息災に暮らせるという、風流な言い伝えがあります。
京都五山送り火協賛会から例年、オリジナル絵はがき(200円)や手ぬぐい(650円)、お扇子(2、200円)が販売されます。

(2017年)売上は、来年の送り火の資金になるそうです。

京都観光のお土産に、オススメです。

先祖への思いを大切に、送り火を楽しみましょう

京都五山送り火は、「大文字さん」とも呼ばれ、夏の観光イベントと思われがちですが、本来はお盆の終りに、ご先祖様を再び冥土へ送る、宗教行事です。
とはいえ、この夏の風物詩は、暑い京都の夜を彩る、見逃せない一大イベントです。

そっと手を合わせて、ご先祖様を偲びつつ、わずか1時間の厳かな行事を、存分に楽しみましょう。