祭りにはいろいろな魅力がありますが、豪華絢爛な山車など普段見られない出し物を見物する楽しみもその1つです。
1000年以上の伝統を持つ京都市の祇園祭では、ユネスコの無形文化遺産に登録された山鉾行事が見られます。
1.日本三大祭りの1つに数えられる伝統行事
京都府京都市で毎年7月に行われる祇園祭は春の葵祭や秋の時代祭とともに京都三大祭の1つに挙げられるだけでなく、東京の神田祭や大阪の天神祭と並ぶ日本三大祭りの1つとしても有名です。
祇園祭は京都市東山区にある八坂神社の祭礼でもありますがが、祭り好きの京都町衆の手で1000年以上も続けられてきました。
7月1日の吉符入から始まって7月31日の疫神社夏越祭まで1カ月にわたって続く祇園祭の中でもクライマックスとなるのは、7月17日の前祭に行われる山鉾巡行です。
昭和41年以降は後祭が前祭と統合されていましたが、2014年には祇園祭を本来の形に戻す目的で7月24日の後祭が復活しました。
それぞれ前日までの3日間に宵山も行われ、1カ月間の来場者数約180万人に対して宵山だけで100万人に達するとも言われるほど多くの観光客で賑わいます。
2.前祭の山鉾巡行と宵山
祇園祭のハイライトは何と言っても山鉾巡行ですが、本来は7月17日の神幸祭で八坂神社の神様が神輿に乗って御旅所に赴き、7月24日の還幸祭を経て帰る際に町衆が山鉾で露払いを行うための行事でした。
各町内が年々競い合うようにして山鉾を豪華に飾り立てるようになった結果、現在に見られるような山鉾行事が安土桃山時代頃に確立されたのです。
7月17日の前祭では午前9時に23基の山鉾が四条烏丸を出発し、2時間余りをかけて新町御池方面まで練り歩きます。
笛太鼓と鉦の祇園囃子が奏される鉾は豪華な飾り付けがされており、鉾頭までの高さが25mで重量約12トンもあるだけに、巡行には40人から50人もの曳手が欠かせません。
宵々々山と呼ばれる3日前から山鉾の飾り付けが始まり、山鉾町では巡行前日の宵山まで駒形提灯に灯がともされて祇園囃子が祭りの情緒を盛り立てます。
7月15日と16日には四条烏丸一帯が歩行者天国となって夜店も出され、祇園祭期間中でも最も賑やかな祭りの雰囲気が味わえます。
3.動く美術館と称される山鉾が見もの
宵山では各町内の山鉾を間近で見る絶好のチャンスとなりますが、前祭で巡行される合計23基の山と鉾は1つ1つ名前と作りが異なります。
2014年に復活した7月24日の後祭でも山と鉾合計10基が巡行され、その宵山では前祭の宵山より人出が少ないため落ち着いた雰囲気の中で山鉾を見ることができます。
前祭で毎年巡行の先頭に立つ長刀鉾を始め、それぞれ豪華な趣向を凝らした飾り付けは見ものです。
山伏や聖徳太子・弁慶と牛若丸などの人形を御神体として安置した山も鉾に劣らず豪華絢爛で、見物客の目を楽しませてくれます。
それらの山と鉾を飾る唐破風造りの屋根や精巧な懸魚と飾り金具、見送幕・水引幕といった装飾品の数々はどれも色鮮やかで、動く美術館とも言われてきました。
こうした山鉾とは別に宵山期間中の各山鉾町では屏風祭も行われ、表格子を外した旧家や老舗企業で秘蔵品の屏風や調度品・美術品などが見物客に披露されます。
4.平安時代初期以来1100年にも及ぶ歴史
現在では期間中合計200万人近い観光客を集めるほど盛大に行われている祇園祭も、もともとは疫病の祟りや怨霊を鎮める目的で始められた御霊会の行事です。
清和天皇の治世に当たる平安時代初期の貞観年間に京の都で疫病が大流行し、富士山の大噴火や貞観地震と大津波も続いた天変地異を朝廷は怨霊の祟りと見なしていました。
全国66の国に見立てた66本の鉾に諸国の悪霊を宿らせ、祟りをなしていると考えられた牛頭大王を祀って病魔退散を祈願した御霊会が祇園祭の起源です。
その後も疫病流行のたびに御霊会が行われてきましたが、平安時代中期の970年以降に祇園御霊会の年中行事として年に1回行われるようになりました。
祇園祭は京の都が焼け野原になった応仁の乱で途絶えたものの約30年後には再興し、安土桃山時代には舶来貿易で栄えた町衆の力で山鉾が豪華に飾り付けされるようになったのです。
5.シニアに人気の有料観覧席と暑さ対策
7月17日の前祭と24日の後祭ともに10万人から20万人の人出と混雑が予想される山鉾巡行では、京都市役所前付近に有料観覧席が設置されます。
豪華絢爛を誇る山鉾巡行を座ってゆっくり見物できることから、有料観覧席は場所取りの苦手なシニアに大人気です。
有料観覧席には一般席に加え、前祭では迫力の辻廻しが間近で見られる辻廻し観覧プレミアム席も販売されます。
いずれもインターネットのチケットやコンビニ・旅行会社窓口を通じて6月上旬に全国で発売が開始されますが、1日で完売になる例も珍しくありません。
祇園祭の山鉾巡行は有料観覧席以外の沿道からでも見物できるとは言え、よい場所を確保するには早い時刻から場所取りをする必要があります。
盆地気候の京都は非常に蒸し暑いことでも昔から有名で、2017年の例では7月17日と24日ともに最高気温が33℃でした。
有料観覧席を利用する場合も含めて帽子やうちわ・扇子などの暑さ対策が必要で、熱中症を防ぐためこまめな水分補給も欠かせません。
祇園祭で1000年の歴史に思いを馳せる
1000年以上も日本の都として栄えてきた京都市の町並みは、定年後の旅先としても根強い人気があります。
祇園祭見物を兼ねながら京都の町をぶらぶら歩いてみれば、伝統が育んできた情緒ある古都の風景と出会えるものです。
そんな京都の町が1年で最も熱く盛り上がる祇園祭の宵山と山鉾巡行は、祭り好きのシニアなら必見です。