残尿感を感じるシニアは多い。その原因と解消法は?

最終更新日:2017年10月16日

排尿後もすっきりせずに尿が残っているような感覚が残ることを残尿感と呼びます。

残尿感があると単に気持ち悪いというだけでなく、夜間も頻繁に尿意を覚えたりして睡眠不足につながり、健康に悪影響を及ぼしかねません。

1.残尿感の原因となる病気

このような残尿感が起きる原因にはストレスや免疫力の低下も考えられますが、背後に何らかの病気が隠されている可能性もあります。

ストレスが強すぎると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働いて膀胱を収縮させるため、尿を長く溜めておくことができなくなって頻尿や残尿感が起きやすくなるものです。

特に女性の場合は尿道が男性よりも短いため、膀胱が細菌に感染して膀胱炎を発症しやすい傾向が見られます。

疲労や睡眠不足・加齢などで免疫力が低下していると余計に膀胱炎を起こしやすくなり、その症状として残尿感が起きている可能性も考えられるのです。

残尿感の原因として女性の場合は膀胱炎が多いのと比べ、男性では前立腺肥大を原因とするケースが多数を占めます。

この他にも神経の損傷によって脳からの排尿指令が伝わりにくくなる神経因性膀胱や、骨盤を支える筋肉の衰えによって膀胱が下がる骨盤性器脱も残尿感の原因として考えられる病気です。

2.女性に多い膀胱炎

女性の残尿感で原因トップに挙げられる膀胱炎は膀胱に大腸の細菌が侵入して起こる病気で、特に急性膀胱炎は30代以下の若い女性に多いのが特徴です。

しかしながら男性の場合でも、前立腺肥大や膀胱機能の低下が原因で慢性膀胱炎を発症する例は少なくありません。

急性膀胱炎では残尿感に加えて頻尿や排尿痛などの自覚症状が起きやすく、尿が濁るような症状も見られます。

泌尿器科を受診すれば尿検査や細菌培養検査を実施してもらえますので、検査の結果一定数以上の細菌が認められれば膀胱炎と診断されて有効な治療が受けられます。

経口抗菌薬という薬を服用することで膀胱内の細菌が退治されるため、数日のうちに症状が改善されるのが普通です。

膀胱炎を放置していると膀胱の外まで細菌感染が広がってしまいますので、排尿に違和感を覚えたら早めに病院を受診するのが大切です。

治療中は細菌を膀胱から早く洗い流すため、水分を多く摂って尿の量を増やすようにするといいでしょう。

3.男性に多い前立腺肥大

男性で残尿感の原因トップに挙げられる前立腺肥大症は、60歳以上のシニア世代に多発している病気です。

前立腺は男性特有の臓器で尿道括約筋の奥にあり、その中央を尿道が通っています。

前立腺肥大症はこの臓器の内部に瘤のような前立腺腺腫ができる病気とも言えますが、ほとんどの男性は加齢とともに前立腺の肥大が避けられません。

この瘤ができる位置や大きさには個人差があり、尿道に近い場所にできた場合は瘤が小さくても尿道を圧迫するため、残尿感や頻尿といった症状が出やすくなります。

前立腺肥大症の症状には3つの段階があって、第1段階では頻尿や尿意切迫感といった症状が中心です。

残尿感を覚えるのは第2段階の大きな特徴で、前立腺腺腫が大きくなっているため膀胱では実際に残尿が見られます。

第3段階になると尿の排泄ができなくなる尿閉に及び、尿漏れや腎機能障害の恐れも出てきます。

そうなる前に残尿感を自覚した段階で泌尿器科を受診すれば、薬物療法や手術による治療で症状が改善可能です。

4.骨盤性器脱と神経因性膀胱

残尿感の原因は以上のように膀胱炎か前立腺肥大症が多数を占めますが、必ずしもこれらの病気だけが症状を引き起こすとは限りません。

男性の場合は前立腺がんでも前立腺肥大と区別がつきにくい症状が見られますので、排尿に違和感を覚えるようになったら病院で詳しく検査をしてもらうことが大切です。

女性の場合でも更年期以降は骨盤性器脱という病気が原因で排尿困難や残尿感・頻尿といった症状が発生します。

膀胱が下がってきて膣口から脱出する膀胱瘤は骨盤性器脱の一種で、特に残尿感が起きやすいものです。

骨盤性器脱でも症状が軽いうちなら手術をするまでもなく、骨盤底筋体操によって症状を改善できます。

この他に脳卒中の後遺症や腰椎間板ヘルニアなどさまざまな病気によって起きる神経因性膀胱もまた、頻尿や排尿困難とともに残尿感を起こす原因の1つです。

神経因性膀胱では排尿をコントロールする神経の障害によって症状が発生していますので、膀胱の刺激による排尿促進や間欠的自己導尿法で解決できる場合があります。

5.漢方薬やサプリメントの効果と注意点

ドラッグストアや通販サイトでは、残尿感や頻尿などの尿トラブルに効果があるとされる漢方薬やサプリメントも多く売られています。

男性の前立腺肥大に改善効果を持つと言われるノコギリヤシなどは、その代表的な例です。

ノコギリヤシに含まれる成分に前立腺の肥大を抑制する作用があると考えられているため、この成分を配合したサプリメントがシニア層の男性に人気を集めているのです。

女性の残尿感の原因で最も多い膀胱炎の改善効果を謳っている商品としては、猪苓湯などの漢方薬が挙げられます。

そうした漢方薬は排尿を促す効能を持つことから、膀胱内の細菌を洗い流して感染防止につながると考えられています。

残尿感の原因にはさまざまな病気が潜んでいる可能性もありますので、これらのサプリメントや漢方薬を過信せず一度は泌尿器科で診察してもらうことも大切です。

医師が処方する薬は即効性が高く、薬での完治が困難な病気が原因の場合でも手術その他の治療法が残されています。

残尿感の悩みは、勇気を持って専門医に相談することも大切

一口に残尿感と言っても以上に見てきたような付随症状や原因によって対処方法が違ってくるため、素人判断で簡単に解決される例は決して多くありません。

症状が軽いうちはサプリメントや市販の漢方薬を試してみるのもいいですが、残尿感が我慢できなくなったり排尿困難が生じたりしている場合は専門医に診てもらうといいでしょう。