吉野山中千本の桜(奈良県)は3万本。紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録!

最終更新日:2017年12月29日

日本全国に多数ある桜の名所の中でも、古くから知られていた吉野山の桜は日本一と言われています。

古代には山林修行の霊地だった吉野山だけに古寺社も多く、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。

1.シロヤマザクラを中心に3万本が咲き誇る

奈良県吉野町にある吉野山は熊野三山へと至る大峯奥駈道の北の入り口に当たり、修験道では古くから山岳修行の場として信仰されてきました。

吉野山には蔵王権現を本尊とする金峯山寺があり、桜は蔵王権現の神木とされていたために、多くの人が桜の苗を寄進してきたのです。

これは金峯山寺を創建した修験道の開祖・役小角が厳しい修行の中で蔵王権現を感得し、桜の木を使って蔵王権現像を彫ったという故事に由来します。

平安時代から桜の植樹が繰り返されてきた結果、現在は吉野山の桜が200種3万本にも達するほどに増えました。

桜の名所では一般にソメイヨシノが多数を占めますが、吉野山の桜はシロヤマザクラという品種が大半です。

ソメイヨシノは江戸時代末頃に作られた比較的新しい品種で、短期間のうちに一斉開花するのが特徴です。

これに対してヤマザクラは個体間でも開花時期にずれがあり、長期間にわたってゆっくりと花見が楽しめます。

2.4つのエリアとそれぞれの名所

ソメイヨシノと比べて歴史が古く、昔から日本の象徴と言われきた吉野桜は長寿の木としても知られます。

ソメイヨシノの樹齢が平均で60年と言われているのに比べ、吉野山の桜の大半を占めるシロヤマザクラは樹齢が数百年です。

近鉄吉野線の終点・吉野駅から南に広がる吉野山は、標高の違いによって4つのエリアに分けられます。

吉野駅に近い下千本は標高が230mから350mまでのエリア、中千本は350mから370mまでのエリアです。

370mから600mまでの上千本を経て、600mから750mに達する奥千本までが世界遺産に登録された吉野山の範囲に含まれます。

下千本には金峯山寺や南朝皇居跡といった名所があり、中千本では吉水神社・如意輪寺・東南院といったところが代表的な名所です。

坂道が急になる上千本でも花矢倉展望台という絶景スポットがある他、西行法師が住んでいたと伝えられる西行庵のある奥千本もシニアに人気のパワースポットです。

3.中千本エリアの見どころ

吉野山はどのエリアも桜の季節になると大勢の観光客で賑わいますが、桜の開花時期は標高や品種の違いによって異なります。

3月下旬から4月下旬頃まで長期間にわたって桜が楽しめる点が吉野山の特徴で、中千本エリアにある東南院のシダレザクラは開花時期が早く3月終盤から4月始めが見頃です。

世界遺産の構成資産となっている吉水神社では4月10日前後に中千本から上千本にかけての桜が「一目千本」で一望できるため、吉野山でも一、二を争うほどの人気スポットとなっています。

南北朝期に後醍醐天皇が仮の皇居にしたと伝わる場所だけに、吉水神社は後醍醐天皇を主祭神として忠臣・楠木正成を合祀した神社です。

同じ中千本エリアには後醍醐天皇陵を持つ南朝ゆかりの如意輪寺もあって、楠木正成が出陣の際に辞世の句を刻んだ扉が今も寺に伝えられてます。

吉水神社と如意輪寺の間には豊臣秀吉ら5千人が花見をした跡地「太閤の花見塚」もありますので、歴史好きのシニアは見逃せません。

4.吉野山を巡る数々の歴史秘話

桜の名所として有名になった吉野山は、日本史の舞台としても古くから数々の逸話を残してきました。

後に天武天皇となる大海人皇子が出家して吉野山に隠遁し、天智天皇崩御後に挙兵して大友皇子(弘文天皇)方と戦った壬申の乱はその最初の例です。

壬申の乱に勝利した後に即位した天武天皇は乱の7年後に6人の皇子を伴って吉野に行幸し、彼らに吉野の盟約として知られる誓いを立てさせました。

「よき人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よよき人よく見つ」という有名な吉野の歌はこのときに作られたと伝えられています。

吉野山はこの他にも源義経が兄・頼朝の追討を受けて静御前とともに身を隠した地として知られ、その悲劇は浄瑠璃や歌舞伎の「義経千本桜」として語り継がれました。

南北朝期には鎌倉幕府を倒した後醍醐天皇が吉野山を拠点に南朝を開きながら志半ばのまま病に倒れ、この地で崩御した歴史の舞台となっています。

5.桜のシーズンには交通規制も

吉野山には以上のような歴史上の人物にまつわる史跡が多く残されており、日本一と称えられた桜を楽しみながら歴史にも親しめる点が大きな魅力です。

中千本エリアは特に吉水神社の一目千本桜が大人気のため、見頃となる4月10日前後は周辺道路も混雑します。

4月の第1と第2の土日は車の入山規制が行われる例も多く、その場合は吉水神社付近まで車で入ることができません。

下千本駐車場から中千本までの主要道は日中に歩行者天国となりますので、健脚のシニアは徒歩で桜を楽しみながら吉野山を散策するといいでしょう。

期間中は近鉄吉野駅近くの乗り場から中千本公園まで臨時バスも運行されており、シニアを中心として便利に利用されています。

吉野駅から吉水神社までは徒歩で35分ほどかかりますが、途中で通る七曲坂も桜の名所です。

吉野駅近くの千本口駅からロープウェイに乗れば、七曲坂付近の桜を眺めながら金峯山寺黒門手前の吉野山駅まで楽に登ることができます。

秋の紅葉や夏の紫陽花だけでなく、春の桜も楽しめる吉野山

吉野山は桜の名所というだけでなく、金峯山寺や吉水神社など世界遺産に登録された古寺社の散在する聖地でもあります。

芭蕉句碑や西行庵なども含めた史跡も多くある吉野山は、シニアの定年後の旅にも最適のスポットです。

吉野山は秋の紅葉シーズンや夏の紫陽花も人気ですが、桜の季節は最も多くの観光客で全山が賑わいます。