独特のタッチの童画や絵本で知られる画家・絵本作家いわさきちひろの作品は、子どもから大人まで幅広い年代の人々に親しまれてきました。
そんないわさきちひろにちなんだ安曇野ちひろ美術館が長野県松川村にあります。
1.ちひろ作品や絵本原画が豊富に展示
童画や絵本の分野で活躍してきたいわさきちひろは1974年に亡くなりましたが、遺族の尽力によって1977年には東京都下石神井の自宅跡にいわさきちひろ絵本美術館が開館しました。
ちひろ作品だけでなく世界の絵本原画収集活動を続けた結果この美術館が手狭になったことから、長野県松川村での安曇野ちひろ美術館開館の運びとなったのです。
開館場所として松川村が選ばれたのは、戦時中にいわさきちひろの両親がこの地に疎開していたことに由来します。
安曇野ちひろ美術館にはいわさきちひろの原画やスケッチの他、彼女の人生に関する貴重な資料が展示されています。
世界の絵本画家が描いた原画コレクションも豊富に見られ、3000冊の絵本が閲覧できる図書室も館内で人気のコーナーです。
美術館は5万平方メートルにも及ぶ広大な安曇野ちひろ公園の一角にあって、周辺には美しい自然が広がっています。
2.いわさきちひろの業績を一望
シニア世代には自身の子育ての中で、いわさきちひろが挿絵を描いた絵本を子どもに読ませてあげた体験を持つ人が少なくありません。
いわさきちひろは1981年に大ベストセラーを記録した黒柳徹子著「窓ぎわのトットちゃん」の挿絵でも知られています。
独特の淡い色づかいと繊細なタッチで描かれた子どもの絵は、一度見たら忘れられないほど多くの人の記憶に焼き付けられているものです。
安曇野ちひろ美術館ではそんないわさきちひろの描いた代表作の絵本原画が多数展示された展示室1に加え、いわさきちひろの人生を紹介する展示室2の素描やスケッチも見逃せません。
展示室2では彼女が影響を受けた画家に関する資料なども展示されており、いわさきちひろの画業が一望できるように構成されています。
何よりも多くの子どもたちや大人たちにも愛されてきたいわさきちひろの貴重な原画を間近に見られる点が、安曇野ちひろ美術館を訪れる人にとって一番の魅力です。
3.世界の絵本画家の作品も展示
絵本作家や挿絵画家の地位向上に大きな役割を果たしてきたいわさきちひろの業績を現在に伝えるため、安曇野ちひろ美術館では世界の絵本作家の原画を数多く収集してきました。
かつての挿絵は文章の付属品と見なされていたため挿絵画家の地位も低く、絵本の原画は古い作品ほど散逸しています。
いわさきちひろの活躍が認められて挿絵が独立した美術作品として評価されるようになり、現在ではそうした絵本原画も美術館の展示対象とされるようになりました。
安曇野ちひろ美術館の展示室3では、ヨーロッパやアメリカからアジアに至るまで多くの国々の画家が描いた絵本原画を見ることができます。
これほど多様な国籍の絵本作家による原画を鑑賞できる機会は、他の美術館ではなかなか得られません。
展示室4でもそうした世界の絵本原画を集めた企画展が季節ごとに開催されていますので、絵巻物まで含めた絵本の歴史が学べる展示室5と合わせて鑑賞してみるといいでしょう。
4.挿絵画家の地位向上に貢献
若い頃に太平洋戦争を経験したいわさきちひろは、世界の子どもたちに平和と幸せを届けたいという願いを抱きながら子どもの絵を数多く描いてきました。
終戦後の1947年に28歳で描いた紙芝居「お母さんの話」が、画家としての本格的なスタートとなった作品です。
二度目の結婚を経て長男が誕生し、子育てをしながらいわさきちひろは新しい絵本づくりに取り組んでいきます。
水彩絵の具を生かした淡い色づかいと大胆な構図を特徴とする彼女の絵は、水墨画の技法にも通じる独自の表現を生み出しました。
息子の成長する姿をスケッチしながら腕を磨いたいわさきちひろは、アンデルセンや宮沢賢治の世界観も取り入れて誰にも真似のできない作風を確立させていったのです。
いわさきちひろは自分の絵だけでなく、絵本画家の著作権を守る活動にも力を注いできました。
1974年に55歳という若さでいわさきちひろは亡くなりましたが、彼女が残した絵は時代を越えて今も多くの人に愛されています。
5.孫を連れて訪れたい美術館
いわさきちひろが挿絵を描いた絵本は、現在でも子どもたちの間で根強い人気を集めています。
シニア世代の人なら、安曇野ちひろ美術館には是非とも孫を連れて訪れたいものです。
美術館内には「トットちゃんの部屋」と称する展示室も用意されており、さまざまな企画のワークショップが随時開催されています。
隣接する「絵本の部屋」は3000冊もの絵本を自由に閲覧できるだけでなく、おはなしの会なども開かれる子どものための図書室です。
そういった絵本や原画の展示コーナーにあまり興味を示さないお子さんも少なくありませんが、そうした小さな子どもが遊べる「子どもの部屋」も館内に用意されています。
美術館から徒歩5分ほどの場所には、「窓ぎわのトットちゃん」に出てくる「電車の教室」を再現したトットちゃん広場もあります。
安曇野ちひろ公園の豊かな自然と触れ合いながら散策するのも、安曇野ちひろ美術館を訪れる際の楽しみの1つです。
孫と一緒に安曇野ちひろ美術館を楽しもう
いわさきちひろの原画や資料の展示を中心とした「ちひろ館」と「世界の絵本館」に大きく分けられる安曇野ちひろ美術館は、絵本や童画の魅力がいっぱいに詰まった場所です。
孫を持つ人や絵本に興味のあるシニアはもちろん、普段は絵本や美術作品にそれほど親しんでいない人でも、安曇野ちひろ美術館では新たな発見が得られます。