インドに起源を持つ料理でありながら、カレーは今や日本の国民食と言われるほど広く親しまれてきました。
カレーライスが手軽に作れる市販のルウやレトルトカレーには、体に良くない成分が含まれている場合もあります。
1.市販のカレーに潜む健康リスク
明治時代にイギリスを通じて日本に伝えられたカレーは、その後カレーライスとして日本人の食生活に合う形に改良されてきた経緯があります。
以前はカレー粉を加えた小麦粉をバターで炒めてカレールウを手作りしていたため、作るのに手間がかかる料理でした。
昭和の戦後になって固形のカレールウが商品化され、カレーライスが簡単に作れるようになっため庶民の間で爆発的に普及していきます。
その後はレトルトパウチに入ったカレーをお湯で温めるだけで食べられる製品が登場し、料理の苦手な人でも自宅で手軽にカレーライスが作れる時代が到来しました。
現在では食品メーカー各社からいろいろな種類のカレールウやレトルトカレーが発売されており、味や具材もバラエティに富んだ商品がスーパーの店頭を飾っています。
それらのカレールウやレトルトカレーは糖質が多く含まれているためカロリーが高く、使われている油脂や添加物にも問題があります。
2.糖質が多く血糖値が上がりやすい
代表的な市販のカレールウを例に挙げれば、1皿分のルウに含まれる炭水化物量は8gから9gほどです。
甘口と中辛・辛口では数字が若干異なりますが、これをカロリーに直せばいずれも100kcal前後となります。
当然のことながらこれにご飯のカロリーが加わりますので、カレーライスを1皿食べただけでかなりのカロリーを摂取することになります。
食欲の旺盛な人は2皿、3皿とおかわりをすることも珍しくないため、そのような人はさらに大量のカロリーが摂取されることが避けられません。
カレールウには小麦粉や砂糖・はちみつなどの糖質が多く使われており、スパイスとなるカレー粉にも100g当たり12gの糖質が含まれます。
甘口のカレーには中辛や辛口と比べて砂糖やブドウ糖なども多く使われており、製品によってははちみつやリンゴペーストなどで独自の甘さを出している例も少くありません。
糖質が多く含まれるカレーを食べると食後の血糖値が急激に上昇しますので、糖尿病予備群の人は特に要注意です。
3.油脂の多さと種類も問題
カレールウを自分で作る場合にはバターなどを使って加熱しますが、市販のカレールウやレトルトカレーを製造する際にも油が使われています。
このうちレトルトカレーでは豚油や牛脂が使われている例も多く見られ、食後に胸焼けをするという人も少なくありません。
カレールウも含めてパーム油などの植物油脂だけが使われている製品なら、そのような胸焼けも起きにくいものです。
ただしマーガリンやショートニングの原料にもなるパーム油は、悪名高いトランス脂肪酸の材料にもなります。
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増やして動脈硬化や心筋梗塞などの原因となる物質です。
カレールウのおよそ3分の1は食用油脂と考えられますので、植物性油脂が多く使われている製品ほどトランス脂肪酸も多く摂取される可能性があります。
オリーブ油が使われているような製品以外は、市販カレールウに含まれる油はあまり良質でないことを覚えておくといいでしょう。
4.市販カレーに含まれる添加物
市販のカレールウやレトルトカレーには糖質や油脂成分ばかりでなく、さまざまな添加物も含まれています。
工場で製造されるカレー製品の多くは、茶色を出すためにカラメル色素と呼ばれる着色料が使われている点が問題です。
カラメル色素には4種類あって、中には糖類だけを材料とした安全な種類もありますが、アンモニウム化合物や亜硫酸化合物が使われているタイプは発がん性を持つと言われています。
原材料名には単に「カラメル色素」としか表示されていないため、消費者が安全な種類のカラメル色素を使った製品を選べない点が問題です。
カレー製品にはカラメル色素以外にも化学調味料のグルタミン酸ナトリウムや合成甘味料のスクラロースなど、多くの添加物が使われています。
グルタミン酸ナトリウムは頭痛や手足の痺れの原因となる可能性があるため、大量摂取は避けるべき物質です。
150種類ほどある合成香料の中にも危険な種類が含まれますが、原材料名には「香料」としか表示されません。
5.頻繁に食べるのは避けるのが無難
即席麺やカップラーメンなどと同じような感覚で手軽にカレーライスが食べられるようになった点で、カレールウやレトルトカレーはとても便利な食品です。
シニア世代の中にもカレーライスに日頃から親しんでいる人は少なくありませんが、以上のような成分分析を考えると頻繁に食べるのは避けた方が無難と言えます。
辛さは食欲をそそるため、カレーライスを食べるときはついつい何杯もおかわりしてしまうという人もいます。
市販カレーやレトルトカレーを使って週に1回以上カレーライスを食べている人は、回数を減らすか1回当たりに食べる量を減らした方がいいでしょう。
これまでに挙げた糖質や油脂成分・添加物は、いずれも過剰摂取による健康への悪影響が懸念される成分です。
シニア世代でも血糖値がそれほど高くない人は、月に1回程度の頻度で市販のカレー製品を食べる程度なら健康に大きな影響が及ぶ可能性は低いと考えられます。
カレー粉やスパイスを使ってカレーを作るのがベスト
月にカレーライスを食べる回数が少ない人でも、市販のカレールウやレトルトカレーを購入する際にはできるだけ添加物の含まれない製品を選ぶことが健康の維持につながります。
料理が得意で手間を厭わないという人は、カレー粉や好みのスパイスと小麦粉を使って手製のカレーに挑戦してみるのもシニアライフの楽しみとなるものです。