宇都宮の街、特に農家や大きめのお宅の側を歩いていると、塀や倉がちょっと普通と違うことに気が付きます。
少し黄色がかった、軽石のような石材でできているのです。
これが大谷石です。
宇都宮市大谷町の特産ですが、この大谷町に資料館があります。
1.大谷石
軽石のような、という印象は正解で軽石凝灰岩の1種です。
重量が軽く耐火性に優れ、柔らかく加工しやすい石質と相まって古くから建材として使用されていました。
旧帝国ホテルにも用いられましたし、市の中心部にある松が峰教会(宇都宮カトリック教会)も大谷石で造営され、見物客があとを絶ちません。
現在でも独特の質感が好まれ、薄くスライスされて床材や壁材に利用されます。
大谷町付近に東西に約8キロ、南北に約37キロメートル、地下200~300メートルに分布していると推定されています。
大谷資料館ではさらに傾斜を含めた詳細な情報や、石層の厚さ、最適な用途について詳しく知ることができます。
2.採掘道具
大谷石の採掘は江戸時代から始まりました。
当然ですが、当時は手掘りで石を切り出していました。
道具はわずかな種類のツルハシと、運搬用の背負子だけです。
1960年代の機械化まで、この状況は変わりませんでした。
1950年代の前半に人件費の高騰を受け採掘機の試作が始まり、中頃には公開運転を開始します。
1960年になって大谷の全採掘場で機械化された結果、採掘量が2倍に増えました。
現在では様々なバリエーションに富んだ採掘や加工を機械で行っています。
こういった歴史についても写真なども使った、わかりやすい展示に工夫が凝らされています。
3.採掘方法と形態
「平場堀り」と「垣根掘り」という2つの採掘方法が基本になっています。
平場掘りは手掘り時代から採用されてきた方法です。
垣根掘りは平場掘りよりも高度な技術を要す一方で美しい石だけを取り出す画期的な方法です。
明治末期から大正時代に掛けて大谷に伝わりました。
採掘場跡ではこの堀り跡が石壁に残されています。
この2つの掘り方を組み合わせた露天掘り・坑内掘りで大谷の石は採掘されてきました。
地形や採掘する深さにより、この形態もいくつかのバリエーションがあります。
その仕組みや変遷といった歴史も資料館では詳細に知ることができます。
4.採掘場跡(大ホール)
メインの大ホールは誰もが感動を覚えるでしょう。
まずはその広さです。
野球場がすっぽりと収まってしまうほどのスケールです。
採掘場跡地をそのまま展示場にしていますので、大谷石に四方八方を囲まれます。
露出した岩肌には直接触れることができるので、手触りを確かめられます。
殺風景に聞こえるかもしれませんが、天井も高く、地下にこれほどの空間があるとは信じられません。
趣向を凝らしたライトアップをするエリアがあり、バチカンやケルンの大聖堂のような荘厳さすら感じられます。
人によってはピラミッドの内部のように感じるようです。
日本とはとても思えない光景は圧巻の一言です。
5.イベント
普段は非公開の「教会ゾーン」が公開されることがあります。
教会ゾーンは結婚式場があるときにだけ教会として使用されるか、プロモーションビデオの撮影に使用する以外は立ち入ることができません。
日光が降り注ぐ幻想的な場所なので、ぜひ一度は見ておきたいものです。
撮影などが入り、公開終了時刻が前倒しされることもあるようなので、事前に確認をしてから見学に行くことをオススメします。
十字架が設置している場所は教会ゾーンではないので、取り違えにご注意ください。
公式サイトでも注意喚起をするほど勘違いをする人が多くなります。
気温が低くなると「塩の華(塩の吹き出し)」という壁や地面からまるで白い花が咲いたような不思議な現象が起こります。
坑内と外気の気温差がなくなり、暑い時期に結露で湿った岩肌が乾燥して塩の結晶を咲かせるのです。
夏になって気温・湿気が上昇すると消えてしまいます。
バレンタインにはこの塩の華がハートに咲くため、カップルで賑わいます。
6.見学上の注意
採掘場跡は地下にあり、盛夏でも気温が20度を下回ります。
上着は必携です。
寒がりの女性だとダウンジャケットでちょうどいいという意見すらあります。
また足元が暗く、湿っています。
手すりがあるとはいえ転倒には十分注意してください。
靴は、滑り止めのついたスニーカーが望ましいでしょう。
パンプスやヒール、革靴は避けた方が無難です。
車椅子やベビーカーを使用しての入館はできません。
入口近くの第一駐車場(約40台)が団体、身体障碍者、高齢者専用になっています。
三脚などの固定をする撮影用器具は使用が禁止されています。
自撮り棒も同様です。
他の見学客と譲り合って撮影しましょう。
大谷資料館で建材について学んでみよう
建材については普段あまり気にしないかもしれません。
しかし、大谷資料館で学んだあとはちょっと違った視点をから身の回りを眺めることができるでしょう。
屋内・地下の施設なので、たとえ雨降りでも体験型の観光施設で楽しめます。
また、社会科の授業では「露天掘り」といった言葉も習います。
どんなものか実際にわからずに覚えるだけよりも実際に目にした方がよりよい「学び」に繋がります。
お子さん・お孫さんと一緒に見て、触ってもう一度勉強をしても良いでしょう。