定年後の旅!島根県の「出雲そば」の黒い色と強い風味、独特の食感の起源を求めて

最終更新日:2017年9月25日

島根県東部、出雲地方で多く食べられている出雲そば。

そばといえば「わんこそば」、「戸隠しそば」が思い浮かびますが、実は出雲そばは、先ほど挙げた二つに加えて、日本三大そばに数えられています。

今回は、健康食品としても注目されている出雲そばの魅力についてご紹介します。

1.特徴

出雲そばの起源は江戸時代にまでさかのぼります。

松平直政が信濃松本藩主から出雲松江藩主になったときに、そば打ち職人を一緒に連れてきたのが始まりとされています。

その後、そば自体は庶民の食べ物として親しまれていましたが、のちの藩主、松平治郷(はるさと)が茶懐石に取り入れるなど、上流階級にも親しまれるようになりました。

このそばの特徴は、その黒い色と強い風味、独特の食感にあります。

ふつうそば粉は、そばの実の殻を取り除いた上で、製粉とふるいの度合いによって「一番粉」から「四番粉」に分けられます。

そば粉の種類についての詳細はここでは割愛しますが、出雲そばは、これらとは異なり、殻がついたままの玄そばを、すべて石臼で挽いたものになります。

そば粉100%で捏ねたそばは、風味と香りが強くはなりますが、舌触り、のどごしは悪くなります。

つなぎとして小麦粉をどの程度入れるかによって、舌触りやのど越しが変わります。

出雲そばは、小麦粉2割、そば粉8割のいわゆる「二八そば」です。

強い風味と食感、そしてのどごしの両方を楽しむことができる一石二鳥のそばです。

2.健康食品として注目

そばの原料となるそばの実は、近年海外でもスーパーフードとして注目されています。

なぜなら、そばに含まれる成分が、ダイエットや生活習慣病の予防に役立つからです。

そばの実には、食物繊維、ビタミンB群、ルチン、鉄分、必須アミノ酸が含まれています。

とくにルチンは、血流をよくする効果があり、動脈硬化症や脳卒中の予防に向いています。

血糖値が上昇しにくい食品でもあるため、糖尿病の方にもオススメできる食品でもあります。

そばの実の中で、一番の栄養価が高い部分が殻になりますので、玄そばを使用している出雲そばは、そばの中で栄養価の高い食品になるといえるでしょう。

3.割子そばの由来

出雲そばの食べ方は主に二つあります。

その一つが、松江発祥の割子(わりご)そばです。

割子そばは、3段の丸い器にそばが持ってあるもので、出雲そばの代名詞ともいえます。

松江は小京都とも呼ばれており、江戸時代に地域の産業・文化振興に力を入れた藩主、松平治郷が、そばの地位向上に努めていました。

松江では、茶会などを親しむ趣味人がそばを野外で食べるために、重箱に入れて弁当のように持ち歩きました。

そして食べる直前にそばつゆをかけていました。

この地方では重箱のことを割子と呼んでおり、これが割子そばという名前の由来になりました。

もともと重箱は四角いもの、ひし形や正方形のものでしたが、20世紀に入りまもなくして、容器を洗うときの衛生上の観点から、ヒノキを使った底の厚い丸型の漆器に変わりました。

4.割子そばの食べ方

通常、割子そばには薬味がついてきます。

お店によって種類や数は異なりますが、主にねぎ、かつおぶし、のり、もみじおろし、大根おろし、とろろ、なめこなどがあります。

うずらのたまごを落として食べることもあります。

食べ方としては、一段目に好きな薬味を乗せ、そばつゆをお好みの量でさっとかけて、そばと馴染ませてから食べます。

一段目が終わったら二段目に移るのですが、ここで一段目の器に残ったつゆを一緒にかけてください。

再びお好みで薬味とつゆをかけて食べます。

空になった容器は一番下に重ねてください。

二段目を食べ終えたら、再び残っているつゆを三段目にかけて、同じように食べてください。

初めて出雲を訪れた人は、そばつゆをどこにかければいいのか分からず戸惑っているのが見かけられますが、つゆは直接そばにかけるのが出雲流です。

そば湯を飲むのも忘れないでください。

お店の人に言えば、そば湯をもらうことができます。

猪口に入ったものを出されますが、直接猪口につゆをお好みで入れて召し上がってください。

もちろんつゆを入れずにそのまま飲んでもかまいません。

5.釜揚げそばのルーツと楽しみ方

出雲そばの楽しみ方のもう一つは、出雲大社を発祥の地とする釜揚げそばです。

神道では10月になると、日本全国の八百万の神様が出雲にやってくると考えられています。

そのため日本では10月のことを「神無月」、反対に出雲では「神在月」と言います。

神在月になると、出雲大社では「神在祭」と呼ばれる、神様をお迎えする祭りが執り行われます。

それに合わせて、出雲大社の周りには、そばの屋台が立ち並びました。

そこで参拝者は、釜でゆでた新そばを食べて体を暖めたのです。

通常、そばはゆでた後水切りをするのですが、釜揚げそばは、屋台で売るため、水洗いができないという制限がありました。

鍋や釜からそのまま器に盛り付け、茹で汁であるそば湯をかけ、これを釜揚げそばと称して振舞うようになったのです。

出雲そばは玄そばを使用していますので、その栄養が溶け出たそば湯はとろみがあり、強い風味を楽しめます。

釜揚げそばの食べ方はシンプルで、お好みの量でつゆを入れて食べるだけです。

それぞれに特徴がある二種類の出雲そばを楽しもう

以上、出雲そばについて、その魅力についてお伝えしました。

観光で出雲地方を訪れた際は、冷たい割子そば、温かい釜揚げそば、両方食べてみることをオススメします。

その風味と食感を楽しんでみてはいかがでしょうか。