武家屋敷のシダレザクラ(秋田県・仙北市)は江戸時代へタイムスリップしたような風景

最終更新日:2017年11月1日

全国に数多くある桜の名所の中でも、角館のシダレザクラで有名な秋田県仙北市は武家屋敷の情緒が味わえる観光地として知られます。

まるで江戸時代にタイムスリップしたような風景の中で見る桜の美しさは格別なものです。

1.国の天然記念物の桜は162本

秋田県内陸部の仙北市は平成の大合併で誕生した歴史の新しい市で、武家屋敷のある角館は市の中心部に位置しています。

江戸時代の町並みを現代に残す角館は「みちのくの小京都」とも称され、特に桜の季節は大勢の観光客で賑わいます。

角館の武家屋敷は昭和51年に、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

随所に植えられたシダレザクラが一斉に開花する4月中旬から5月上旬にかけての季節は、風情ある武家屋敷と桜が一体となった見事な風景が見られます。

角館の武家屋敷に植えられている約400本のシダレザクラのうち、162本が国の天然記念物に指定されています。

樹齢300年とも言われる老桜と江戸情緒にあふれる武家屋敷の競演が見られる場所は、全国広しと言えどもこの角館に限られるのです。

2.黒板塀に映えるシダレザクラの美

角館の武家屋敷に植えられているシダレザクラは、大半がエドヒガンザクラの枝垂れ品種と言われています。

国の天然記念物に指定されている桜は全国に数多く存在しますが、こうしたシダレザクラが指定された例は少ないものです。

ソメイヨシノなどと比べて枝が長く柔らかいため、柳のように垂れ下がるのがシダレザクラの大きな特徴です。

垂れ下がった枝に満開の花が咲く独特の景観は、武家屋敷の古い町並みと絶妙に調和します。

黒板塀とシダレザクラの淡いピンクのコントラストも鮮やかで、写真好きのシニアなら持参の一眼レフカメラで撮影したくなる光景です。

シダレザクラそのものは他の地域でも見られますが、角館の武家屋敷ほど多く群れている場所はありません。

天然記念物に指定されるほど希少価値の高いシダレザクラが162本もこの地域に集中している点で、角館の武家屋敷は貴重な自然遺産の宝庫と言えます。

3.江戸情緒あふれる武家屋敷

角館の武家屋敷通りには石黒家や青柳家など、県や市の史跡または有形文化財に指定された武家屋敷が並んでいます。

シダレザクラが咲き誇る風景を鑑賞したら、次はそれらの武家屋敷を見学するのも角館観光で見逃せない楽しみの1つです。

中でも石黒家は座敷に入って内部を見学することができますので、角館を訪れたら是非一度立ち寄ってみるといいでしょう。

かつて角館の地を治めていた佐竹北家の家臣・石黒氏の子孫家族が現在もこの家に住んでおり、年中無休で案内を務めてくれます。

青柳家や松本家・岩橋家など他の武家屋敷は母屋の中に入れませんが、希望すれば敷地内を見学できます。

青柳家の敷地内には武具・美術品を展示するコーナーやコーヒーショップもありますので、武家屋敷の見学に疲れたら一休みすることができます。

いずれも時代劇の舞台に出てきそうな江戸時代そのままの風情が残されており、歴史が好きなシニアにはたまらない観光スポットです。

4.シダレザクラにまつわる歴史

江戸時代には当然のことながら全国各地の城下町に同様の武家屋敷が築かれていましたが、明治維新でその大半が国有地となった結果多くが失われてしまいました。

現在でも武家屋敷の町並みを残している地域としては、角館の他にも青森県弘前市や島根県松江市・山口県萩市などが知られています。

角館の武家屋敷がそれらの地域と違うのは、敷地内に多くのシダレザクラが植えられている点にあります。

戦国時代から城下町として発展してきた角館では江戸時代初期に町の基礎を築いた蘆名氏が断絶した後、秋田藩主佐竹氏の分家・佐竹北家の所領となりました。

2代目佐竹義明の妻は京の公家から角館に輿入れした経緯があり、娘が寂しくないようにと実家の母が嫁入り道具にシダレザクラの苗木3本を持たせてあげたと伝えられています。

現在に見られる武家屋敷のシダレザクラは、そのときの苗木が数百本にまで増えたものと考えられるのです。

5.桜の開花時期に注意

角館では武家屋敷通りの他にも桧木内川堤のソメイヨシノが桜の名所として知られており、開花期間中は120万人の観光客で賑わいます。

秋田県は冬の気候が寒冷で特に内陸部は積雪も多いため、桜の開花時期がゴールデンウィークに重なる年も少なくありません。

角館では開花時期に合わせて毎年桜まつりを開催しており、多彩なイベントも行われて観光客を楽しませています。

鉄道を使って角館を訪れる場合は秋田新幹線を角館駅で下車し、武家屋敷通りまで徒歩20分ほどで到着できます。

車でアクセスする場合は秋田自動車道を大曲ICで下りた後、国道105号線から角館入りするのが一般的なコースです。

桜の開花時期はここ数年早まる傾向も見られ、早い年ではゴールデンウィーク前に見頃が終わってしまいます。

満開のシダレザクラの下で風情ある武家屋敷通りを歩くには、事前に開花情報を確認してから現地入りするといいでしょう。

シニアの1人旅としても人気が集まる武家屋敷のシダレザクラ

江戸時代へのタイムスリップ体験とシダレザクラの情緒が同時に味わえる角館の武家屋敷は、時間をかけてじっくりと見て回りたい観光スポットです。

仕事を抱える身ではなかなかそうした余裕が持てないものですが、定年後の旅なら時間に縛られることもありません。

角館の武家屋敷はシニアの1人旅としても人気を集めています。