蔵王の樹氷(宮城)は大自然が作り出す芸術!その日の天候によって見え方が異なります

最終更新日:2017年10月18日

日本で見られる風景の中でも樹氷は限られた気象条件下でのみ発達するため、世界的に貴重な自然現象です。

青森県の八甲田山や秋田県の八幡平でも樹氷は見られますが、最も有名なのは宮城県と山形県にまたがる蔵王連峰です。

1.大自然が作り出す芸術

樹氷とは過冷却された水滴が樹木に付着し凍結し、全体が独特の形をした自然造形物にまで成長する現象です。

樹氷は気泡を多く含む構造をしているため白色不透明で脆く、樹木全体が氷のモンスターのように成長するのに適した気象条件は限られます。

宮城県と山形県の県境に位置する蔵王連峰はその気象条件が整っており、南蔵王を中心とする一帯は樹氷ができやすいアオモリトドマツの針葉樹林も広がっています。

1914年に蔵王で発見されて以来樹氷が有名になり、大自然が作り出す氷の芸術として冬の蔵王を代表する観光資源となりました。

東北地方を日本海側と太平洋側に分けている奥羽山脈の中にあって、蔵王連峰は山形県と宮城県のそれぞれ南部の県境に位置しています。

最も標高の高い熊野岳は1841mに達し、「馬の背」と呼ばれる稜線の北西が山形蔵王、南東が宮城蔵王です。

2.毎年2月頃が最盛期

蔵王の樹氷は冬の間にゆっくりと時間をかけて成長していくため、最盛期は2月頃です。

毎年11月頃からは西高東低の気圧配置となることが多くなり、大陸から北西の冷たい季節風が吹きつけるようなります。

日本海では暖流の対馬海流が流れているため冬でも水蒸気の発生が活発で、この季節風にたっぷりと水分を供給します。

発生した雪雲の中は氷点下でも凍らない過冷却の水滴が大量に含まれており、この水滴は障害物にぶつかると直ちに凍るのが特徴です。

蔵王には過冷却水滴が付着しやすい櫛状の形をしたアオモリトドマツが多く生育しています。

12月頃にかけて着氷した樹木の隙間に雪が取り込まれ、エビの尻尾と呼ばれる現象が進んでいきます。

氷点下10度以下という低温下でそうした着氷と着雪が繰り返されるうちに焼結と呼ばれる現象が起きて樹氷が硬く締まり、2月頃には最盛期を迎えて巨大なモンスターへと成長していきます。

3.雪上車とロープウェイ

樹氷が見られる場所までの行き方は、宮城蔵王と山形蔵王で異なります。

宮城蔵王では雪上車を使った樹氷鑑賞ツアーが12月中旬から3月中旬まで運行されており、運行時間も日中限定です。

天候が良ければ随所で雪上車を降りて、樹氷の迫力を間近で味わうことができます。

雪上車が発着するスキー場までは近くの温泉やホテルから無料の送迎バスも運行していますので、提携宿泊施設の申込時と同時に予約しておくといいでしょう。

一方の山形蔵王側から樹氷原まではロープウェイが運行されており、こちらは12月下旬から3月初め頃まで夜間も乗車可能です。

ライトアップされた夜の樹氷は、明るい日中に見るのとはまた違った幻想的ムードを醸し出します。

雪上車よりも高い位置から樹氷を一望できるロープウェイは、蔵王山麓駅を出発して樹氷高原駅まで片道7分ほどです。

樹氷高原駅からは雪上車に乗って樹氷を間近で楽しむこともできます。

4.万全の防寒対策が必要

今にも動き出しそうな白いモンスターを目の前で鑑賞できるのが雪上車を使った樹氷ツアーの魅力ですが、現地は厳冬期だと氷点下10度を下回るほどの寒さです。

参加する場合はダウンジャケットなどを着込み、しっかりとした防寒対策の上で出かけることが欠かせません。

特にシニア世代の人は暖かい雪上車の車内から極寒の樹氷原に出る際、大きな気温差で体に負担がかかります。

上手に気温差を調節できる服装を選び、雪の上を歩くのに転んだりしないよう滑りにくい靴を履いて出発することが大切です。

そのような靴の持ち合わせがない場合でも、宮城蔵王の雪上車発着スキー場では防寒長靴を有料で貸してもらえるサービスもあります。

いずれにしても現地は樹氷ができるほどの寒さで、冬場は天候が荒れる日も珍しくありません。

運悪く吹雪の状況に当たった場合に備え、通常の防寒具に加えて厚手の手袋やマフラー・ネックウォーマーといった防寒グッズも用意しておくといいでしょう。

5.樹氷めぐりバスツアーも人気

樹氷シーズンになると宮城蔵王・山形蔵王ともに樹氷ツアーが活発に行われ、主要都市を出発するバスツアーなども開催されます。

シニア世代の人は添乗員が同行するこのようなバスツアーに参加した方が、安心して樹氷を見に行けるものです。

1人でももちろん参加は可能ですが、気の合った友人同士や夫婦・家族で樹氷ツアーに出かけることで楽しさは倍増します。

地域の老人クラブやシニアクラブ・町内会などの団体でバスツアーを申し込めば、ツアーの最少催行人数にも達しやすく確実に参加できます。

ベストの状態で蔵王の樹氷が見られるかどうかは天候次第の面もありますが、運良く快晴の日に当たれば大自然の作り出した奇跡の造形を最高の条件で味わえます。

1つとして同じ形のものはないと言われるほど個性的な樹氷の数々を間近で見た貴重な経験が、一生忘れられない思い出となるのは間違いありません。

余裕のあるスケジュールで蔵王の樹氷を見に行こう

シニア世代の人の中には、定年退職後の時間をゆったりと過ごしている人も少なくないものです。

蔵王の樹氷もその日の天候によって見え方が異なりますので、日程に余裕があれば近くの宿泊施設に数日滞在するのもいいでしょう。

晴れの日を選んで樹氷ツアーに出かければ、青空や星空をバックにした樹氷の絶景を見ることができます。