誰しも、自分が死ぬことは考えたくないもの。
自分が死んだあと、大切な家族が争ったり、困ったりすることは、もっと避けたいですよね。
安心してその時を迎えるために遺言書は必要です。
今回は遺言書の書き方についてみていきましょう。
1.遺言書ってどんなもの?
遺言書とは、遺産相続の指示を故人が示した文書であり、故人の最後の意思ともいえます。
一口に遺言書と言っても、いくつか種類があり、それぞれに法律で決められた要件や形式があります。
遺言書は普通方式遺言と特別方式遺言の2つに分けられます。
通常の日常生活の中で作成する場合は普通方式遺言、危篤状態や遠隔地にいるなど普通方式遺言ができない場合は特別方式遺言を作成します。
特別方式遺言は普通方式遺言ができる状態になってから6か月が過ぎると効力を持ちません。
普通方式遺言には更に3つの種類があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言、そして秘密証書遺言です。
それぞれ、特徴や作成方法が異なりますので、まずはこの3つの普通方式遺言書についてみていきましょう。
2.3つの普通方式遺言書の特徴とメリット
まず、自筆証書遺言書についてみていきます。
自筆証書遺言は本人がすべて作成する遺言です。
証人も必要なく自分一人で作成できるため、他の種類の遺言と比べて簡単に作成でき、また費用もかかりません。
また、書いた内容を家族に秘密にしておくことも可能です。
ただ、要件や形式に不備があり、無効となることも多い遺言ですので書き方には注意が必要です。
開封時には遺族が家庭裁判所に遺言書を提出し遺言書の存在や内容を知らせる「検認」という手続きを行います。
公正証書遺言は、公証役場で本人が口述した遺言を公正人が記述する方法で作成されます。
この際に証人が2人以上必要です。
遺産の額に応じて費用がかかりますが、遺言書を紛失する心配がなく、開封時の「検認」手続きも不要です。
秘密証書遺言は本人が証書に署名と押印したものを公正役場で証明してもらう方法です。
証人が2名必要ですが、公正証書遺言と異なり、遺言内容は証人には知らされず、秘密にすることができます。
遺言を作成するのは本人となりますので、要件に不備があった場合に無効になることがあります。
開封時には家庭裁判所の「検認」手続きが必要です。
3.家庭裁判所の「検認」とは
さて、自筆証書遺言を書く場合と秘密証書遺言を書く場合で必要な「検認」とは何でしょうか?
「検認」という手続きは家庭裁判所が遺言書の存在を確認し、偽造されたり、変造されたりしていないかを確認するというものです。
あくまで確認の手続きですので、遺言書の内容の効力を保証するものではありません。
遺言書を見つけてその場で遺族が開封した場合は罰金が科せられますので注意しましょう。
検認は故人の住所の管轄である家庭裁判所に申し立てします。
申し立てには遺言書1通につき800円の費用が必要であるのに加えて、故人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本、家事審判申立書などの書類が必要となります。
では、いよいよ、次は遺言書の書き方をみてみましょう。
4.遺言書の書き方とポイント
遺言書は法律で定められた要件を満たしていない場合は無効となり、自分の意思が実行されないばかりが、相続争いにまで発展することもあります。
遺言書は要件を漏らすことなく慎重に作成しましょう。
まず、すべてを「自分で書く」ことが必要です。
ビデオメッセージや音声の録音は無効となります。
また、代筆、パソコンで作成した文書も無効となりますので注意してください。
スタンプも無効です。
鉛筆よりも消すことができないボールペンで書いてください。
遺言内容は具体的に書きましょう。
曖昧ですと解釈でもめてしまいます。
また、土地に関しては登記簿謄本とおりに地目、地籍まで細かく正確に記入します。
預貯金口座についても金融機関名、口座番号だけでなく支店名、預金種類、名義と可能な限り細かく正確に記入しましょう。
日付を忘れずに、氏名は、ペンネームは避け戸籍通りの氏名で、印鑑は認め印でも構いませんができれば実印がよいでしょう。
5.遺言書の実例
では、実際の記入例をみてみましょう。
遺言書
私、遺言者〇〇一郎は次の通り遺言する。
第1条
私は次の財産を妻〇〇花子に相続させる。
1.東京都目黒区○○3丁目1番〇〇
宅地
120平方メートル
2.東京都目黒区〇〇3丁目1番〇〇
家屋番号 〇番〇号
構造 木造1階建て
種類 居宅
床面積 1階 75.5平方メートル
3.前期家屋内にある什器備品その他一切の動産
第2条
次の財産を長男〇〇太郎に相続する。
1.〇〇銀行〇〇支店の定期預金及び普通預金全額
定期預金 口座番号123456
普通預金 口座番号566778
2.株式会社〇〇の株式 30,000株
第3条
この遺言の執行者として次の者を指定する。
東京都板橋区〇〇1丁目3
山田一郎 昭和〇〇年2月2日生
平成〇〇年〇〇月〇〇日
遺言者 〇〇一郎 印
6.遺言書を作成したら
遺言書を作成したら、封筒に入れて保管しておきます。
封筒に遺言書を入れたら、封の部分に押印します。
封筒の裏には日付と自分の名前を明記しておきます。
「開封せず、家庭裁判所の検認を受けること」と明記しておくと万全です。
その後、紛失や盗難されない安全な場所に保管しておきましょう。
自分の死後に、遺族が見つけることができないと遺言書の意味がありませんので、遺族が見つけることができる場所に保管してください。
年を経るにつれて、自分自身の記憶が曖昧になっていくことも考えられますので、信頼のおける人、例えば配偶者には、遺言書の保管場所を教えておいてもよいかもしれません。
正しい遺言書の書き方とは
人の死はいつやってくるかはわかりません。
そして、誰しもいつかは必ず死がおとずれます。
遺言書は最後のあなたの意思です。
遺言書は要件を守れば、死後もあなたの意思を遺族に伝えてくれます。
あなたの意思を伝えるためにも、そして遺された遺族が困らないためにも、不備のない遺言書を作成してその時に備えましょう。