シニアの旅!横手のかまくら(秋田県)で童話の幻想的世界に入る

最終更新日:2017年9月25日

雪国のメルヘンが味わえる行事として知られる横手のかまくらは、毎年2月15日と16日の2日間にわたって行われる雪祭りです。

期間中は市内随所に独特のかまぼこ型をした大きなかまくらが作られ、大勢の観光客で賑わいます。

1.雪国ならではのメルヘン風景

秋田県でも内陸南部に位置する横手市は全国有数の豪雪地帯で、冬の積雪量は市街地でも1メートルを超えることが珍しくありません。

街を埋め尽くす雪は市民にとって厄介な存在ですが、かまくらはそんな雪の多さを逆手に取ったような民俗行事です。

祭り期間中に市内の随所で見られるかまくらは、高さが約3メートルあって中は大人が5人ゆっくり入れるほどの広さがあります。

日が落ちるとかまくら内部に灯された明かりが夜の闇に浮かび上がり、一種独特の幻想的なムードを醸し出します。

横手かまくらの美しさはドイツの建築家ブルーノ・タウトが著書「日本美の再発見」で激賞したことでも知られています。

夢の国の出来事にも喩えられる光景が大きな特徴です。

秋田県内では2月に各地でさまざまな小正月行事が行われますが、その中でも横手かまくらは代表的な雪祭りとして最も多くの観光客を集めています。

2.かまくらの歴史と現在

横手かまくらは450年の歴史を持つ古い伝統行事ですが、現在の形で行われるようになったのは明治30年頃だとも言われます。

秋田県南部には同じ「かまくら」の名を持つ民俗行事が多く存在し、竹打ち行事が行われる六郷かまくらや角館の火振りかまくらも有名です。

それらの行事は必ずしも横手に見られるようなスタイルではなく、この時期に行われる小正月行事を総称して「かまくら」と呼ばれていた面もあります。

一方で秋田県南部には横手市以外にも同様の雪室を作る風習が古くから見られ、子供たちの冬の遊びとして親しまれてきました。

横手のかまくらは小正月に水神を祀る「おしずの神さん」という行事が原型とも言われています。

これに子供たちの雪室遊びが結びついて、現在の形に洗練されたと考えられます。

現在見られるようなかまぼこ型の雪室は、昭和30年代頃から作られるようになった「モデルかまくら」が原型です。

このかまくらを作る際には大人が何人もかかってしっかりと踏み固め、崩れないように万全の安全対策が施されています。

3.各会場の見どころ

横手かまくらはいくつかの会場が市内に分散しており、会場ごとに特色のある祭り風景が見られます。

伝統的なかまくらが見られる市内のスポットは、横手市役所本庁舎前道路公園の他、横手公園と羽黒街武家屋敷通り・二葉町かまくら通りの4会場です。

横手市役所本庁舎前道路公園は最も多くの観光客で賑わい、いかにもお祭りらしい雰囲気が味わえます。

市役所隣のかまくら館駐車場で開催される横手かまくらほっこり横丁には横手やきそばや稲庭うどんなどの屋台が並び、グルメが味わえる他に大抽選会なども行われます。

横手かまくらは基本的な開催時間が午後6時から9時までという夜の祭ですが、ほっこり横丁は午前中から開催されているので夜までの時間つぶしにも最適です。

4会場から少し離れた蛇の崎川原と横手南小学校校庭では、幻想的なミニかまくらを見ることができます。

この他に郊外の古民家を利用した民家苑木戸五郎兵衛村でもさまざまなイベントが行われ、市内各所に作られた雪の芸術も観光客の目を楽しませる趣向です。

4.子供たちが主役の祭り

市内に点在する横手かまくら会場の中でも、最も伝統的な民俗行事の趣を残しているのは羽黒街武家屋敷通りと二葉町かまくら通りです。

横手市は城下町として発展してきた歴史を持ち、羽黒町には古い武家屋敷の風情を残しています。

二葉町は昔からかまくら行事の保存に熱心な町だけに、最も古い形のかまくらが見られる地区です。

こうした伝統的なかまくらの主役は子供たちで、「あがってたんせ」「おがんでたんせ」といった温かい方言で観光客を迎えてくれます。

かまくらの内部は案外広く茣蓙が敷かれていて七輪が置かれ、昔ながらの綿入れ姿をした地元の小中学生が甘酒や餅を振る舞います。

そんな子供たちとの交流ができる点も横手かまくらの魅力ですが、中に入る際には水神様へのお賽銭をあげるのがマナーです。

現在のような観光行事に変わる以前のかまくらは、昔から子供たちが中心になって行事が進められていました。

大人たちが子供たちにあげる二度目のお年玉のように、お賽銭をあげる風習があったのです。

5.かまくらを見に行く準備

2月中旬と言えば横手市も寒さのピークを越えつつある時期ですが、それでも夜の気温は氷点下まで下がる日が少なくありません。

横手かまくらを見に行く際には防寒対策をしっかり整えた服装で臨み、雪に慣れていない人は滑りにくい靴を履いて会場入りするといいでしょう。

横手市までの交通アクセスに秋田新幹線を利用する場合は大曲駅で下車し、JR奥羽本線上り列車に乗り換えて約20分で横手駅に到着します。

車を利用する場合は秋田自動車道横手ICから市内に入りますが、市の中心部は駐車場が多くありません。

横手体育館が無料臨時駐車場として開放され、そこから各会場まで20分間隔でシャトルバスが運行されています。

市内に点在した会場を効率よく回りたいという人は、主要会場を結ぶ無料の巡回バスを利用するのが便利です。

市内の宿泊施設は祭り期間中の予約が取りづらく、確実に宿泊するために1年も前から予約する人も少なくありません。

横手に泊まってじっくりとかまくらを楽しみたい人は、早めに予約を済ませるといいでしょう。

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全国には雪をテーマとしたイベントも数多くありますが、中でも横手かまくらは古い民俗の痕跡をとどめている点でも貴重な行事と言えます。

まるで童話の世界に入ったかのような幻想的風景が、21世紀の日本にもまだ残されているのです。

雪国情緒たっぷりの横手かまくらを見れば日頃の疲れも癒され、ほっこりとした暖かい気持ちになれるものです。