経営努力や社員育成の結果日本を代表する企業となり、今や世界の企業のお手本ともいえるトヨタ。
その始まりは創始者豊田佐吉の、母の苦労をなんとかして軽減したいという思いからでした。
様々な機械の製作に取り組む人々の工夫と挑戦の軌跡は驚きと懐かしさの連続です。
1.繊維機械館の見ごたえある数々の紡績機
母が機織り機で布を織る姿を見て育った豊田佐吉が、母に楽をさせてやりたいと最初に取り組んだのが自動機織り機の製作です。
糸の性質の研究、自動で横糸を継ぎ足す方法。
一つの技術を生み出しては出てくる新たな問題点を改善していく、この途方もない努力の過程を現存する機械を見ながら感じることができます。
古い機械は実際にまだ動き、少しずつ理想の機織り機に進化していく様子を実際に目にすることができます。
改善の努力は、コンピュータ制御により写真を簡単に織り込める現在の織機に結晶します。
布における柄の再現、織り上げるスピード、紡績機械の発展の歴史がこの展示室でわかるようになっています。
2.自動車館で懐かしの名車を間近に楽しむ
紡績によって得た財をもとに、車の開発に着手した新たなトヨタの始まりと発展を自動車館で体験できます。
車の部品の展示は細部にまで及んでいます。
車に使用するガラスの変遷や、エンジン、ブレーキなどの構造説明は、誰にでもわかりやすくするために実際に触れることができ、見学者を飽きさせません。
自動車館で圧巻なのは、ずらりと並ぶ懐かしの名車たちです。
トヨタ自動車の歴史を飾ってきた数々の車を間近で見ることができます。
新車同然に輝く往年の名車を見ていると、その車が走っていたころに気持ちがタイムスリップします。
また、車の生産過程も紹介されており、製品が流れる中、工業ロボットによって部品が加えられ車となっていく様子は工場見学に来たかのような迫力があります。
3.ミュージアムカフェとミュージアムショップの充実
じっくりと館内を歩いたあとは、ミュージアムカフェでひと休みできます。
軽食が用意されており、カレーは辛さを選べます。
中庭に面した大きなガラス窓が明るく開放感があります。
もう少しきちんと食事がしたければ、レストランでサラダやスープ付きのランチが楽しめます。
人数が多ければ団体としてランチの予約も可能です。
昼食をはさんでゆっくりと館内を見学、優雅なひと時が過ごせます。
展示室を出たところにあるミュージアムショップの販売品は多岐にわたります。
産業技術記念館の名入りの土産物はもちろんのこと、トヨタ車のミニカー、おもちゃから帆布製品、ネクタイ、名古屋土産なども充実しています。
館内の織機で織られていた繊維製品やタオルもここで販売しています。
4.これぞトヨタと感嘆せずにはいられない展示・説明の工夫
天井が高く広い館内を効率的に回るために展示の工夫がなされています。
ところどころに立つガイドの説明は、小型マイクによってなされるので、じっくり耳を傾けるもよし、さらっと聞き流すもよし。
一人のガイドが団体を連れて歩く方法をとっていません。
それぞれの滞在時間や興味によって聞く、聞かないを選択できるさりげなくも充実した説明方法です。
また、このガイドの説明には実際に「体験」させてくれるものが多く、糸や機械に触れて初めて気づき理解度が高まる効果もあります。
外国からの観光客も日本人にまじって思い思いに見学します。
ガイドの説明はもちろん日本語ですが、時に英語も混ざります。
臨機応変に言語を変えながら対応する姿に世界のトヨタの片鱗を見た気分になります。
紡績機械も車も、過去の産物のみでなく、現在活躍している機械、車まで展示してあります。
それぞれ原点から現在までの流れを網羅しており、時には他国の産業製品を並べることで、時空を超えた展示が産業の流れを一目でわかるようにしています。
5.トヨタを支える言葉
展示室の一つに、大企業トヨタを支えてきた言葉の数々が紹介されているところがあります。
この言葉たちによって研究者、社員たちは奮い立ち、ものづくりを牽引してきました。
まさにトヨタの精神を物語る名言です。
それぞれの言葉は、確かに産業に携わる人々を勇気づけ励ましてきたでしょう。
しかし、これらの言葉は、ものづくりに携わらない平凡な私たちの日常にも少し変化をもたらすものになりそうです。
相手を思いやったり、努力を認めたり、失敗を恐れない挑戦の心を評価したり。
日常で忘れがちなさりげなく相手を思いやる気持ちの大切さを再認識する場所となります。
最後にパートナーロボットによる楽器演奏を楽しむ
トヨタ産業記念館の展示室を一周し、その歴史と発展に触れて出てくると、出口にパートナーロボットが立っており、バイオリンの演奏をしてくれます。
トヨタが未来に向かってまた新たな歴史を創っている、その象徴ではないでしょうか。
戦後の日本の発展のシンボルともいえる車の歴史と、ものづくりの黎明期に登場した織機の開発過程。
どちらもゆっくりと時間をかけて見学する価値のある展示といえます。