定年後の失業保険(雇用保険)の受給要件と受給手続き方法とは。延長給付期間って?

最終更新日:2017年7月17日

雇用保険の失業給付には、失業者が日々の生活を心配することなく、再就職するための求職活動を支援する給付として、「求職者給付」があります。

この「求職者給付」には、一般被保険者のための「基本手当」、高年齢継続被保険者のための「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者のための「特例一時金」などがあります。

ここでは最も代表的な「基本手当」の受給資格、受給手続および延長給付期間について説明します。

なお、65歳以上で退職した場合は「高年齢継続被保険者」として「高年齢求職者給付金」の支給対象者となるため、「基本手当」が支給対象となるのは、65歳未満で退職した場合に限られます。

1.雇用保険の受給資格

雇用保険の受給資格は、離職(退職)した理由によって異なっています。

その理由というのは、自分の都合で離職した場合と、会社の都合などで離職した場合です。

自分の都合で離職した場合は「一般受給資格者」と呼ばれています。

これに対して、会社の都合などによる場合については、二通りがりあります。

会社の倒産または会社から解雇されて離職した場合を「特定受給資格者」といい、また、期間の定めのある労働契約が更新されなかったか、或いはその他やむを得ない理由による場合を「特定理由離職者」と言います。

自分が離職した理由については、しっかりと把握しておきましょう。

受給資格だけでなく、受給期間(所定給付日数)や、受給の開始時期(3か月間の給付制限の有無)にも係わってきます。

それぞれの理由の場合の受給資格は以下に記載した通りです。

◆一般受給資格者の場合.離職の日以前2年間に12か月以上被保険者期間があること。

◆特定受給資格者の場合.離職の日以前1年間に06か月以上被保険者期間があること。

◆特定理由離職者の場合.特定受給資格者の場合と同様なお、被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間の内、離職日から1か月毎に区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月として計算しています。

また、定年や懲戒免職で離職した場合は、一般受給資格者として扱われます。

2.雇用保険の受給手続

離職者が雇用保険の受給資格を満足していて、なおかつ、健康状態や家庭環境などにも問題がなく、再就職の意思があり、就職活動を行っているのに就職できないでいる場合には、必要書類などを持参して離職者の住所を管轄するハローワークで求職の申し込みをします。

ハローワークでは、提出された書類などにより受給資格の確認と決定が行われます。

受給資格の確認に必要な書類などは以下に記載した通りです。

◆雇用保険被保険者離職票(-1、-2)
◆雇用保険被保険者証
◆個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票のいずれが1種類)
◆身元確認書類(①のいずれか1種類、または②の異なる2書類)①運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署発行の身分証明書・資格証明書(写真付)②公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書
◆最近の写真(正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)
◆印鑑
◆本人名義の預金通帳またはキャッシュカードハローワークでは、受給資格の確認と合わせて離職理由についても判定をします。

離職理由が事業主と違うなどの異議があれば、ハローワークが事実関係を調査し、離職理由を判断し判定します。

受給資格が決定されると、「雇用保険受給資格者のしおり」が渡され、ハローワークが指定する日に「雇用保険受給者初回説明会」が行われます。

「雇用保険受給者初回説明会」では「雇用保険受給資格者のしおり」などを使って雇用保険の受給についての詳細が説明され、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡されます。

◆雇用保険受給資格者証
氏名、性別、生年月日などの個人情報と、支給番号、被保険者番号、求職番号などが記載され、自分の写真が貼られている証書で、その後の雇用保険受給状況が、ハローワークによって記入されます。

◆失業認定申告書
雇用保険の受給対象期間(認定期間)中、受給資格者が失業状態にあったことを本人が記載し、ハローワークによる失業認定を受ける際に使う書類です。

なお、ハローワークでは原則4週間(28日)毎に失業認定が行われます。

通常、認定日は29日目(次の認定期間の1日目)になり、認定日前の28日間に2回以上の求職活動の実績が認定されれば、この28日分の基本手当が支給されます(支給額=基本手当×28)。

基本手当は雇用保険の被保険者期間や年齢などで異なります。

3.延長給付期間

雇用保険の給付には、日数や期間に関する2つの用語があり、混同され易く理解を複雑にしています。

1つは「所定給付日数」で、基本手当の付与が決定された日数のことです。

被保険者であった期間や年齢、離職理由などによって異なっています。

もう1つは、「受給期間」で、付与された基本手当はこの期間内で取得することができます。

したがって、受給期間が過ぎてしまうと、付与された所定給付日数が残っていても、その分については給付を受けることができなくなってしまいます。

受給期間も所定給付日数も要件が整えば延長することができる場合があります。

◆受給期間の延長
受給期間は原則として離職日の翌日から1年間ですが、この期間に以下の理由で30日以上働けない状況が生じた場合には、その日数を受給期間に加えることができます。

①病気・怪我②妊娠・出産、育児(3歳未満)③看護(6親等以内の血族、配偶者および3親等以内の姻族)④事業主の命令による配偶種の海外勤務への動向⑤公的機関が行う海外技術指導による海外派遣◆所定給付日数の延長雇用状態が悪い地域に住んでいる受給資格者については、給付日数を60日延長する措置が、平成34年3月31日まで暫定的に実施されます。

また、災害のために離職した受給資格者については、給付日数を60日(最大120日)延長できることとしており、震災時の機動的対応を可能としています。

定年後の失業保険の受給について知ろう

雇用保険の給付金は、冒頭で記載したように、あくまでも、働く意志があり、直ぐに働ける状態にある失業者が、日常生活に困窮することなく、求職活動ができるようにと支給されるものであり、受給要件を満たしている被保険者であっても、退職後に必ず支給されるというものではありません。

また、ハローワークで受給資格が決定されても、積極的に求職活動を行い再就職への努力をしなければ、失業状態と認定されず、やはり給付金は支給されません。

このことをしっかりと理解し、不正受給など不備のないように気を付けましょう。