日本人のライフスタイルは欧米の影響を受け、食生活もここ数十年の間に大きく変わりました。
朝食にパンを食べている人はシニア世代にも少なくありませんが、白いパンは必ずしも健康的な食品ではないと言われています。
1.白パンと黒パン
ポップアップ式のトースターが発売された昭和30年代頃から庶民の間でも食パンが普及し、日本でも朝食に食パンを食べる家庭は珍しくなくなりました。
スーパーのパン売場でも食パンが普通に売られるようになりましたが、それらの大半は精製された小麦粉を原料とする白いパンでした。
小麦は表皮と胚乳・胚芽という3つの部分からなり、精白する過程で表皮と胚芽の部分が取り除かれて胚乳だけが残されます。
このように精白された小麦粉は米で言うと白米に相当し、小麦に含まれていた食物繊維やビタミン・ミネラル分が失われているために大半が糖質です。
ヨーロッパでは小麦を挽いて作られた柔らかい白パンは比較的裕福な家庭の食べ物で、貧しい家庭ではライ麦を材料とした堅い黒パンを食べていました。
日本にパン食が取り入れられた際にも、食味に優れているという理由で当初から小麦を材料とする白パンが選ばれたのです。
2.GI値の高い白いパンは食後の血糖値が急上昇しやすい
>エネルギー源を得る目的でパンを食べるのであれば、このような白いパンは白米と同様に最も効率的な食事のように思われがちです。
白いパンは大半がでんぷんから成っており、余計な食物繊維がほとんど含まれないため食後速やかに消化されてブドウ糖に分解されます。
その結果食後の血糖値を急上昇させる傾向も見られ、血糖値を下げるため膵臓から大量のインスリンが分泌されるために健康への悪影響が懸念されるのです。
食パン1枚当たりのカロリーは150kcal前後で、ご飯1杯の250kcal前後よりも低いように見えます。
しかしながら食後の血糖値上昇スピードを示すGI値は食パンが91で白米の81よりも高く、それだけ食後の血糖値が急上昇しやすいことを示しています。
精白された米も同様に胚乳だけにした食品ですがが、白いパンの原料となる小麦粉は胚乳だけになった小麦をさらに粉にしているため、糖質が米よりも吸収されやすくなっているのです。
3.精白過程で失われる栄養素
食後の血糖値を急上昇させる白いパンは、精白の過程で糖質以外の栄養素がほとんど失われるという点でも問題があります。
精白される前の小麦にはビタミンやミネラルが豊富で、特に胚芽の部分には100g当たり2.2mgのビタミンB1が含まれていました。
精白後の小麦粉に含まれるビタミンB1の量は、100g当たり0.13mgにまで減ってしまいます。
白いパンを食べると短時間で消化されて糖質がブドウ糖に分解され、血液中のブドウ糖濃度が高まります。
このブドウ糖を細胞が取り込んでエネルギーとして活用するには、ビタミンB1の働きが必要です。
白パンだけを食べてエネルギー源として利用しようとすれば、体内に蓄えられていたビタミンB1を消費するしかありません。
その点で昔のヨーロッパの貧しい人たちが主食としていた黒パンにはビタミンB1も豊富に含まれていたため、パンを食べてもビタミンB1不足に陥るリスクが低かったのです。
4.全粒粉パンやブランパンが人気上昇中
以上のような理由から、健康志向の人たちの間で白いパンを避ける動きが広がっています。
健康を意識する人たちの間で近ごろ人気を集めているのは、全粒粉パンやブランパン・ライ麦パンなど、GI値の低いタイプのパンです。
全粒粉パンも小麦を原料として作られる点では白いパンと同じですが、精白された小麦粉を使う白いパンと違って全粒粉パンは小麦の表皮や胚芽も含めた粉を使います。
ふすまパンとも呼ばれるブランパンはコンビニなどでも取扱店舗が増えている商品で、小麦の表皮の粉を原料にして焼き上げられたパンです。
GI値は全粒粉パンが白いパンの91よりも大幅に低い50で、比較的高めのライ麦パンでも58に過ぎません。
ブランパンのGI値は正確なデータが見つかりませんが、60は下回っていると考えられます。
いずれも食後の血糖値上昇が緩やかで糖尿病リスクを低くできるだけでなく、ビタミンB1が豊富に含まれている点でも健康的なパンと言えます。
5.パン食を続けるならGI値の低いパンを
GI値の低い全粒粉パンやブランパン・ライ麦パンは糖質が少ないことから、ダイエット志向の女性の間でも人気が高まっています。
GI値の高い食パンは100g当たりのカロリーも高く、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されます。
インスリンは血糖値を調節するだけでなく脂肪の合成や分解抑制作用も持っており、過剰に分泌されると肥満の原因にもなりかねないのです。
特にシニア世代の人は健康診断などで血糖値が高いと言われている人が多く、食事にも何かと気を使うことが増えてきます。
朝食で長年パン食を続けてきた人は急に和食へと切り替えるのも難しいですが、白いパンを全粒粉パンやブランパンに替えるだけでも健康リスクを低くすることは可能です。
製パンメーカーでは味に工夫した製品を開発していますので、血糖値が気になる人は一度試してみるといいでしょう。
白いパンを控え、GI値の低いパンに切り替えよう
米の分野では健康志向の人たちの間で一足早く玄米や雑穀米がブームを呼びましたが、同様の動きがパンの分野にも広まりつつあります。
白いパンは柔らかくておいしい代わりに、食後血糖値の急上昇という健康リスクも持つ食品です。
パンの好きな人が糖尿病を予防するには、白いパンからGI値の低いパンへの切り替えが最も効果的です。