日本で聞いたことがない人はいないであろう三国志。
三国志には歴史としてのものと、物語としてのものが二つ存在しています。
物語の方は歴史と区別して三国志演義と呼ばれるのですが、日本で大ブームになりました。
そのブームの起源となったのが吉川栄治さんが著した三国志です。
1.三国志演義の内容
三国志の舞台は、古代中国です。
今からおよそ1800年前の西暦184年から280年までの約100年の実際の歴史を基にしています。
その時代は漢という国が存在していましたが、国は乱れて民は苦しむ状態でした。
そんな中各地で有力な武将が立ちあがり、群雄割拠の時代になります。
最終的に勝ち残ったのが、曹操が作る魏・劉備が作る蜀・孫権が作る呉の3つの国で、ここから三国志という名前が生まれました。
2.登場人物の魅力
三国志では数千人もの登場人物がいますが、その中でも非常に知名度が高い人物がいます。
曹操と諸葛亮孔明です。
吉川栄治三国志では、前半の主人公は曹操、後半は諸葛亮と捉えることがでます。
ここが普通の三国志とは違う部分です。
曹操という人物は最近では歴史研究が進み、偉大な英雄であることが認識されるようになりましたが、最近までは物語上の公式の主人公である劉備の最大の敵として認識されていました。
それゆえ必要以上に悪役として仕立て上げられていました。
しかし吉川栄治三国志では、曹操は若いころは野心に燃える男であり、歳を取るごとに風格を増す大人物として登場します。
劉備や諸葛亮の敵という立場は変わりませんが、魅力的に描くことでヒーローとしての曹操が演出されています。
これによって、劉備や諸葛亮が圧倒的な力を持つ曹操に立ち向かうドラマを演出しています。
3.誰でもわかりやすい物語
三国志演義はあくまで歴史を基にしたものです。
よって、三国時代以前の歴史の流れや、正史三国志の知識を持っている方が読みやすいです。
また、多くの三国志の書物はある程度の知識があることを前提に展開しています。
しかし、吉川栄治三国志では、時系列にそって丁寧な描写をすることで、初めて三国志を読む人物では充分に楽しむことができます。
同時に語彙力もつくので、小学生程度でも読むことができます。
4.多くのエピソード
三国志には、多くのエピソードがあります。
それらは直接歴史には関係ないのでどのエピソードを扱うかは作者の価値観等によって影響されます。
エピソードというのは、例えば日本で言えば聖徳太子が一度に10人の話を聞くことができた、といったものです。
吉川栄治三国志でも、劉備や曹操といった主要人物のエピソードが多数紹介されています。
これによって、その人物の性格等もわかる気になり、感情移入等もしやすくなっています。
5.豪傑の活躍が多い
三国志演義では豪傑同士の一騎打ちが数多く存在します。
代表的なのは三国志最強の男呂布でしょうか。
その他にも関羽や張飛・張遼・甘寧といった武将たちは聞いたことがあるのではないでしょうか。
各勢力の豪傑たちが一騎打ちをして華々しく戦うのはまさに醍醐味ですし、男の浪漫とも言えます。
なぜ一騎打ちがこれほど面白く感じるのかというと、真面目な話をすると歴史上では一騎打ちはほとんど存在しませんでした。
なので、歴史上の戦をみると華々しさが欠けていると捉えることもできます。
そこを吉川栄治三国志では劇的に描くことで、より当時の戦をダイナミックに演出しています。
6.軍師も活躍する
豪傑だけでなく、知恵者である軍師も大活躍します。
諸葛亮と司馬懿の対決等はまさにそれでしょう。
群雄割拠の時代がおわり、生き残った勢力がわずかになってくると、それだけ規模も大きくなってきます。
つまり、一人の豪傑がいかに強くとも戦況を動かすことができなくなってくるのです。
そういった戦場を操る存在が軍師です。
とりわけ、三国志演義の主人公とされる諸葛亮はその智謀でもって数々の大軍を打ち破ります。
ここらへんの演出が非常にうまいのです。
例えば諸葛亮が所属する劉備軍は当初負け続きでした。
関羽や張飛といった豪傑が存在するものの、知略に長けた曹操軍に勝つことはできなかったのです。
しかし諸葛亮が登場してからは、その智謀で大軍の曹操軍を幾度となく破ります。
負けていた弱者が智謀によって勝っていくのは見ていて気持ちがいいものです。
三国志はシニアの人生のカンフル剤
これまで三国志の魅力を語ってきました。
三国志の魅力はその書き手によって大きく動きますが、吉川栄治三国志は丁寧に演出をすることで誰でも三国志を楽しむことができます。
そして、三国志から学べることというのは非常に多く、現代の経営者や管理職は、皆読んでいるとされているほどです。
吉川栄治三国志を読むことで、教養を深めつつ、激動の時代を生きた英雄たちの生きざまを味わってみてはいかがでしょうか。
三国志は、まさにシニアの人生のカンフル剤とも言えるでしょう。