定年後の趣味!裁判傍聴の始め方と注意点

最終更新日:2017年9月27日

皆さんは裁判員制度のことを既に耳にしておられることでしょう。

この制度の趣旨は、一般市民の経験や感覚を裁判の評決に生かそうというものです。

これによって、司法の場に国民がはじめて参加することになります。

裁判員には全国平均で5600人に1人が選ばれます。

しかし、いきなり裁判員と言われても、どうしていいかわからないという人も多いでしょう。

裁判を知るには、直接裁判所へ行って傍聴するのが、一番の近道だと言えます。

また、定年後で時間を持て余しているなら、今の世間を知り、刺激を受けて若返るため裁判傍聴に出かけましょう。

1.まず、裁判所へ行きましょう

裁判の公開は憲法によって保障されています。

しかし、すべての裁判が公開されているわけではありません。

簡易裁判所や家庭裁判所の調停や審判は、非公開が原則です。

また、少年審判も原則は非公開ですし、離婚などのプライバシーに関わる調停や審判も非公開です。

地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の裁判は、原則として公開です。

しかし、オススメできるのは、第一審の行われる地方裁判所です。

高等裁判所の控訴審では、書類のやり取りが主となります。

また、最高裁判所は裁判自体の数が少ないです。

裁判所では、特に身分証明書の提示を求められることもありませんし、入場料を徴収されることもありません。

ただし、カメラ、ビデオ、テープレコーダーなどの持ち込みは禁止です。

筆記具やノートの持ち込みはできるので、メモを取ることはできます。

危険物の持ち込みが禁止なのは当然ですが、変わったところでは、はちまき、たすき、ゼッケンなどの持ち込みが禁止です。

裁判に影響を与えるような行為は、禁止されているわけです。

世間を騒がせた有名な事件には多数の傍聴希望者が集まります。

こういった裁判では、傍聴券を入手するために抽選をすることもあります。

時間と場所が指定されて、まず整理券が配布されます。

その後抽選が行われますが、先着順になることもあります。

ただし、裁判そのものが延期されることもあります。

また、人気のある裁判では、整理券の配布時間が早められたり、また、異常に多数の人が集まって当選率が低下することもあります。

傍聴券を必要とするような重要な裁判では、厳しいボディチェックと持ち物チェックが実施されます。

通常は入廷は自由ですが、この場合は例外です。

カバンはすべて開けられます。

携帯電話など電子機器も持ち込み禁止です。

ポケットの中まで調べられることもあります。

2.傍聴する裁判を選びましょう

裁判所に着いたら、傍聴する裁判を選ぶことになります。

「公判開廷予定表」という一覧表が備え付けられているので、この中から裁判を選びます。

裁判には大きく分けて、刑事裁判と民事裁判があります。

大まかに言えば、犯罪に関係する裁判が刑事裁判で、それ以外の私人同士の争いが民事裁判ということになります。

傍聴するのは、素人でも比較的わかりやすい刑事裁判がよいでしょう。

刑事裁判の公判開廷予定表の事件名を見れば、事件の内容がわかります。

窃盗、詐欺、殺人と犯罪の名称が並んでいます。

いかにもショッキングな名称ばかりですが、そういった派手な事件よりも交通事犯や薬物事犯を選んだほうがよいでしょう。

刑事手続きの流れを、1回の裁判で最初から終わり(判決)まで見ることができるからです。

また、公判開廷予定表の予定の欄に、新件、審理、判決と記載されています。

裁判の現在の進行状況が記載されているわけです。

新件は第1回公判のことです。

最初に事件のあらましが陳述されるので、この新件を選ぶのがよいでしょう。

審理は裁判によっては、証拠調べが長引いたり、回数も複数回に及ぶことがあります。

逆に判決は、ごく短時間で終わるため、裁判の内容がよくわかりません。

民事裁判を傍聴する場合は、公判開廷予定表の事件進行状況の欄に注目してください。

この欄に、本人、証人という記載がある場合は、事件の当事者や関係者が出廷して尋問を受けるということです。

裁判内容を知ることができます。

事件進行状況の欄が弁論となっている場合は、文書のやり取りが主となります。

弁論と言っても、実際には書類によって裁判が進行しているわけです。

傍聴しても内容を把握できません。

判決言渡しも、文字通り判決の宣告だけで、内容については一切説明がない場合もあります。

3.裁判所内ではエチケットに注意しましょう

裁判所内には、もちろん警備員が巡回しています。

しかし、よほど怪しい行動をしないかぎりは何も言われません。

普通にリラックスして行動してよいわけです。

ただし、社会人としてのエチケットが必要なのは言うまでもありません。

傍聴者は一般待合室で開廷を待ちます。

開始10分前くらいに扉が開きますから、一般の人は傍聴人入口と書かれたドアから入室します。

途中から入室することもできます。

ドアにはのぞき窓があるので、傍聴席が満席のときは別の法廷に行きましょう。

審理の邪魔にならないように、ノックやあいさつはせずに入室します。

好きな席に着席することができます。

途中からの入室も退出もできますが、原則として開廷中に退出すると再入室はできません。

刑事事件、それも凶悪事件の場合、明らかに一般市民には見えない集団が傍聴しているときがあります。

近づかないようにしましょう。

また、正体不明の傍聴人がいることもあります。

小声で裁判官の発言にツッコミを入れたり、ロビーで裁判のゴシップを交換していたりします。

いわゆるマニアの人たちです。

裁判の傍聴を趣味とする人たちがいるわけです。

裁判は公開されていますし、傍聴も権利として認められています。

何か問題を起こさない限り、裁判所から追い出されることはありません。

ただし、裁判は見世物ではありません。

節度をもった態度が必要です。

傍聴券には、禁止事項が列挙されています。

先述した持ち込み禁止物などいずれも常識的なことが書かれています。

その中でも「騒がしい言動をしないこと」、「裁判長の命令に従うこと」という記述が目を引きます。

裁判において、政治的な主張をすることや、妨害行為をすることが、禁止されています。

そして、当然ですが、裁判長の権限は絶大です。

法廷において、注意したり、場合によっては退廷を命じたりといった権限を裁判長は持っています。

この裁判長の権限は、裁判長の意思ひとつで行使することができます。

ごく些細な不作法でも厳重注意を受けることがあります。

定年後に裁判傍聴で世の中を知る

この文章の冒頭で裁判員裁判のことを挙げましたが、もちろん、そのことがなくても、裁判を知ることの重要性は変わりません。

社会の中では、争いも犯罪も永久に消滅することはありません。

これらの争いや犯罪を、法律に従って解決するという裁判所の働きは文明社会であれば不可欠です。

すべての国民が公正な裁判を受けることができてはじめて、権利も自由も守られます。

その裁判の公正を担保するための手段として、裁判を傍聴する権利も不可欠と言えます。

また、そういった堅い話は抜きにしても、人や社会との関わりが薄れる定年後に、今世の中で何が起きているのかということを知るうえでも、裁判の傍聴には大きな意味と価値があります。