森ねぶた祭は、東北三大祭りのひとつにも数えられ、東北の短い夏を燃やし尽くすエネルギッシュな祭りの代表格といえます。
そんなねぶた祭りですが、案外どのようなものか知られていないのも事実。
ねぶたとねぷたの違いとは?
どんなふうに楽しめばいい?
予備知識を得て、実際に見に行くときに思いっ切り楽しみましょう。
1.ねぶた祭りの由来
ねぶた祭りの由来には諸説あります。
もとは七夕の灯篭流しのように「川に流す」祭りの系統を汲みつつ、だんだんと灯篭が大型化して、練り歩くことがメインになったとされています。
「ねぶた」は「眠たい」という意味であり、農作業が忙しいこの時期、暑さに負けてついつい眠くなってしまうのを追い払うための行事である「眠り流し」がもとだったのではないか、とも言われています。
2.ねぶたとねぷたの違い
ねぶた祭り、それともねぷた祭り?
両方聞いたことがある方も、違いはなかなか知らないかもしれません。
元々は同じものだったとされていますが、現在では地域ごとに独自の進化を遂げています。
「ねぶた祭り」は県庁所在地でもある青森市で行われています。
「ラッセーラーラッセーラー」の掛け声とともに、横に広がる大型人形ねぶたと、お揃いの衣装を着た「ハネト」が列をなし、威勢よく飛び跳ねます。
ねぶたの一台一台が大規模なこともあり、それぞれのねぶたは企業や公共団体が主に制作しています。
最近では自主製作団体なども生まれています。
いっぽう「ねぷた祭り」は、お城と桜で有名な弘前市で行われています。
雄大さを感じさせる「ヤーヤドー」の掛け声で、扇形のねぷたが大小さまざまに現れて、小さい子供たちが練り歩く可愛らしい姿も見られます。
あまり勢いに乗って跳ねまわったりはしませんが、近くで見ると迫力はひけをとりません。
こちらは弘前市内の各地域の町内会や自治会などが、それぞれ地域でねぷたを制作します。
初夏になれば各地で祭囃子を練習する音が、地元の風物詩にもなっています。
他にも、青森県内の五所川原市で行われている「立佞武多」も最近有名になって来ています。
こちらは縦に大きい、ビルくらいある立佞武多と、「ヤッテマーレヤッテマーレ」の掛け声が特徴です。
弘前のねぷたが「出陣ねぷた」、五所川原の立佞武多が「合戦ねぷた」、青森のねぶた祭りが「凱旋ねぶた」とも言われます。
毎年同じ時期に行われますが、日程にやや違いがあります。
そのため、うまく全部を見るには事前の計画をしっかり立てることが重要です。
せっかく青森県まで訪れて祭りを見られる機会なので、はしごして形状や雰囲気の違いを見比べて楽しむのも、また思い出に深く残る経験となることでしょう。
3.青森ねぶたの楽しみ方
さて、3種類の祭りを紹介しましたが、弘前と五所川原が基本的には沿道から見学して楽しむものなのに対し、青森のねぶた祭りには「参加」することができます。
実は、青森ねぶた祭では誰もが「ハネト」となり、祭りの中に入って一緒に飛び跳ねることができます。
もちろん観光客も例外でもなく、小さい子供でも高齢者でも外国人でも、ひとつだけの条件を守ることで、誰でもハネトとして迎え入れられます。
その条件とは、決められた「ハネト衣装」を着ること。
そう聞くと、「どこで手に入るかわからない」「どうやって着ればいいのかわからない」「一度きりのために衣装を揃えるのも……」と思うかもしれませんが、心配は無用。
祭りの会場近くの百貨店や、商店街の洋品店・呉服店、雑貨屋などでは、祭り期間中衣装のレンタル・着付けサービスを行っています。
予約した時間に行けば、地元の熟練のスタッフが手早く完璧なハネト姿に着付けてくれます。
あとは祭りへ繰り出すだけ。
予約時に、荷物の預かりの有無や返却時間、消耗品のレンタルや販売の範囲等も確認するといいでしょう。
衣装を着てさえいれば基本的にはどこの団体へ飛び込んでもOKですが、ごく一部、企業等で独自の整列や衣装を揃えていることもあるので、心配な方は「ここ入っていいですか?」と尋ねると安心です。
また、衣装を着たからと言って必ず列に入らなければいけないわけでもありませんし、途中で離れることも自由です。
体力や足腰に自信がない方、雰囲気だけ味わってみたい方は、沿道を歩いて眺めてみたり、中高年や子供の多いゆっくりした団体に加わるとよいでしょう。
車いすや障害のある方の参加を歓迎している団体もあるので、事前に調べていくのもよいでしょう。
もちろん、体力に自信があって完全燃焼したい方は、活気のある団体に飛び込んで肌で熱気を感じるのもOK。
4.ねぶた鈴について
ハネトたちが腰につけている、カラフルな鈴が藤の花のように連なった根付を「ねぶた鈴」と言います。
大小さまざまなものが沿道で売られており、地元の学生の女の子たちが首から箱をかけて、タオルや土産ものと共に鈴を売り歩く姿にも出会うでしょう。
ねぶたバイトは青森の学生たちの青春でもあり、声をかけると可愛らしい訛りで応えてくれます。
ハネトたちの腰でまさしく「鈴なり」になっているねぶた鈴。
これは跳ねたり人混みに揉まれているうちにいくつかは外れて地面に落ちて転がっていきますし、ハネトが沿道に向かってポーンと投げることもあります。
いつからか、この鈴を拾うと幸運に恵まれると言われるようになったため、沿道の観客が必死に手を伸ばす姿が最近ではテレビなどでも見られるようになりました。
幸運にあやかりたいからと言って、ハネトから直接むしったり、無理に鈴を拾おうと殺到して踏んだ踏まれたの騒ぎになることは避けたいもの。
それでも地元のハネトやねぶた関係者は、小さな鈴ひとつでも、観光客に青森の思い出として持ち帰ってもらいたいと思っています。
もし拾うチャンスがあれば、ぜひ持ち帰ってください。
また、ハネトとして参加しているとき、もし足元に鈴が転がっていたら、沿道に向けて軽く投げると喜ばれます。
ただし、鈴を拾うために無理に立ち止まったり手を伸ばすと、ぶつかられたり踏まれる危険もあるので、無理はしないでください。
また、小ぶりの房をお土産として購入して持ち帰り、カバンや部屋のドアにさげておくと、可愛らしい鈴の音が長く楽しめます。
青森ねぶた祭に一度は参加してみよう
3つの祭りの中で唯一、観光客が一体となって参加することができる「青森ねぶた祭」。
普段はゆったりとのどかな青森の駅前通りに、年に一度全国からの観光客が大勢訪れて活気に満ち、迎える側も毎年街を挙げて迎える準備をしています。
短い夏を燃やし尽くす青森の熱気を、ぜひ一度は体感してみてください。