なまはげ(秋田県)は子供たちが恐れる大晦日に訪れる正月の来訪神!

最終更新日:2017年11月20日

秋田県の代名詞とも言われるなまはげは、その姿と所作のインパクトが非常に大きいことから全国的に有名です。

本来は大晦日に行われる男鹿半島の伝統行事ですが、男鹿市では2月にもなまはげ柴灯まつりが開催されます。

1.子供たちが恐れる伝統行事

たいていの人はテレビなどで一度は見たことがあるように、なまはげは赤鬼または青鬼の大きな面をかぶり、「ケデ」「ハバキ」と呼ばれるわら製の衣装を着てわらぐつを履いた特徴的な姿をしています。

手に出刃包丁を持ちながら「泣ぐ子はいねがー」などと奇声を発して集落の家々を練り歩くその姿は、子供たちにとって恐怖の的です。

家に乱入したなまはげを家人たちはひたすら丁重に迎えてなだめ、酒をふるまってから帰ってもらいます。

現在でも秋田県の男鹿半島ではおよそ80の集落でこうしたなまはげ行事が大晦日に行われており、昭和53年には「男鹿のナマハゲ」として国の重要無形民俗文化財にも指定されました。

「ヤマハゲ」「アマハゲ」「ナモミハゲ」といった秋田県内の行事に加え、鹿児島県甑島の「トシドン」や石川県能登半島の「アマメハギ」など類似の行事は全国に見られます。

その中でも男鹿のなまはげは全国区の知名度を獲得したのです。

2.大晦日に訪れる正月の来訪神

男鹿半島のなまはげ行事は大半の集落で大晦日に行われていますが、わずかながら1月15日の小正月に実施する集落もあります。

小正月に行う集落の方が古い形を残しているとも言われているように、なまはげ行事の実施日は過去に何度も変遷を経てきました。

昭和40年代頃からほとんどの集落で大晦日の実施に統一され、現在に至っています。

なまはげは幼い子供を脅かす場面が有名になったため鬼のような存在と見られがちですが、地元の人たちは正月の来訪神として家々に迎えてきました。

家に招き入れて酒をふるまったり家内安全や無病息災を祈願してもらったりするのも、なまはげが来訪神と見られている証拠です。

そのため本物のなまはげ行事は大晦日の男鹿半島でしか見られませんが、たいていの人は大晦日を自宅で過ごすことが多いものです。

そうした人たちでも2月に行われるなまはげ柴灯まつりを訪れれば、生の迫力でなまはげを見ることができます。

3.観光客向けのなまはげ柴灯まつり

昭和39年に始まったなまはげ柴灯まつりは、男鹿市の真山神社に900年以上の昔から伝わる伝統的な神事の柴灯祭と観光的ななまはげ行事を組み合わせたイベントです。

毎年2月の第2金曜日から日曜日にかけての3日間に行われ、現在ではみちのく五大雪まつりの1つとして知られるようになりました。

なまはげ柴灯まつりは真山神社境内で午後6時頃から始まり、6時半過ぎには神楽殿でなまはげ行事が再現されます。

男鹿市内の家々で今も大晦日に行われているなまはげの来訪場面が子供たちを交えて再現されますので、民俗行事に興味のある人は必見です。

秋田出身の現代舞踏家・石井漠の振り付けによるなまはげ踊りや勇壮ななまはげ太鼓も見逃せません。

なまはげ柴灯まつり最大のクライマックスは、松明を手にしたなまはげたちが雪山から降りてくる「なまはげ下山」の幻想的場面です。

この「山のなまはげ」と会場に乱入する「里のなまはげ」の面の違いにも注目してみるといいでしょう。

4.なまはげの起源と面の特徴

なまはげの扮装で最もインパクトの大きい特徴と言えば、何と言っても赤鬼や青鬼の大きな面です。

しかしながらこのなまはげ面は行事を行う集落によってかなりの違いが見られ、なまはげ柴灯まつりで見られる「里のなまはげ」は角や牙が極端に強調されたユニークなデザインをしています。

これに対して真山地区に古くから伝わる伝統的ななまはげ面には角がないのが特徴で、こちらも「山のなまはげ」としてなまはげ柴灯まつりではおなじみの存在です。

男鹿半島でこうしたなまはげ行事が行われるようになった時期は定かでありませんが、江戸時代後期の旅行家として知られる菅江真澄の著作に書かれたのが文献上最初のなまはげと言われます。

その起源は漢の武帝伝説から漂着した外国人とする説まであって、全国に分布する類似行事との関連には不明な点も少なくありません。

男鹿市に残されている最も古いなまはげの面には角も牙もなく、もともとは鬼ではなく神として扱われていた事実が窺えます。

5.男鹿半島へ行く方法

日本各地に残る多種多様な民俗行事を訪ね歩く旅は、定年後の趣味としてシニアの間でも人気が高まっています。

全国に伝わる類似行事の中で最も有名な秋田・男鹿半島のなまはげは、民俗文化に関心を持つシニアなら一度は生で見ておきたい風習です。

秋田県男鹿市は日本海に突き出した半島に位置しているため以前は交通アクセスが良くありませんでしたが、近年では車で訪れる場合でも秋田自動車道を利用してアクセスしやすくなっています。

昭和男鹿半島ICを出て1時間ほどでなまはげ柴灯まつりの行われる真山神社に到着し、臨時駐車場から会場まで無料シャトルバスも運行されます。

電車で訪れる場合はJR男鹿駅から真山神社まで臨時有料バスを利用するのが便利です。

2月中旬の男鹿市は冷え込みも厳しいですので、なまはげ柴灯まつりを見に行く際には防寒対策を欠かせません。

真山神社の近くにあるなまはげ館や男鹿真山伝承館では、1年を通じてなまはげを間近で見ることができます。

次のシーズンには秋田のなまはげを見に行こう

秋田県内にはなまはげ柴灯まつりと同時期に横手のかまくらや六郷の竹打ちなど、小正月行事が目白押しです。

日本各地に残る民俗行事の数々を見る定年後の旅として、2月の秋田は絶好の機会を提供してくれます。

シニアの中には孫を連れて男鹿を訪れ、本物のなまはげの迫力を間近で体験させてあげている人もいるものです。