金峯山寺(蔵王堂、奈良県)大峯修行に参加して宗教体験を!

最終更新日:2017年12月18日

古くから桜の名所として親しまれてきた奈良県の吉野山は、熊野三山へと続く山岳霊場の入口としても信仰を集めてきました。

山伏が修行を行う場でもあった吉野山の金峯山寺は、修験道の聖地としても知られています。

1.世界遺産にも登録された修験道の聖地

金峯山寺のある吉野山には多数の寺院や神社が点在しており、それらの社寺を含む山地一帯が吉野山と呼ばれています。

「吉野山」が単独峰を意味する名称でないのと同様に、「金峰山」もまた吉野山から南に20キロ余り離れた標高1719mの山上ヶ岳(大峰山)に至る山岳霊場一帯を指した名称です。

これらの山域は古くから山岳修行の場として神聖視されていただけに、山上ヶ岳は今なお女人禁制とされています。

金峯山寺を含む吉野山・大峰山の霊場は、熊野三山・高野山や巡礼路とともに「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に指定されました。

熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社という3つの神社を総称した熊野三山や、空海が創建した高野山の金剛峯寺と比べ、日本独自の仏と言われる蔵王権現を本尊とする金峯山寺は修験色の濃い点が特徴です。

金峯山寺は修験道の開祖として知られる役行者の創建と伝えられています。

2.国宝の蔵王堂と秘仏本尊ご開帳

奈良県吉野町に位置する金峯山寺へ行くには、近鉄吉野駅からロープウェイに乗り換える必要があります。

吉野大峯ケーブル自動車の吉野山駅で下車して数分ほど歩いたところに黒門があり、参道を進んだ先に見えてくるのが国宝の二王門です。

蔵王堂の北側にあるこの二王門には、室町時代の作で国の重要文化財に指定された高さ5mほどの金剛力士像が左右に配されています。

その先にある蔵王堂は本堂に相当し、国宝にも指定されている安土桃山時代の建造物です。

この蔵王堂は高さと幅・奥行きがともに30m以上もあって、木造の歴史的建造物としては東大寺大仏殿に次ぐ規模を持ちます。

蔵王堂には本尊として高さが最大7mに達する迫力の蔵王権現立像3体が安置されてますが、重要文化財のため通常は秘仏として非公開です。

毎年1回は期間限定で秘仏本尊の特別ご開帳も行われますので、期間中に金峯山寺を訪れる際には見逃せません。

3.節分会・花供会式・蓮華会の行事も人気

古くから山岳信仰の対象とされてきた吉野山の寺院だけに金峯山寺はパワースポット好きのシニアに人気ですが、年中行事が行われる日はさらに大勢の参拝客で境内が賑わいます。

毎年2月3日の節分会と4月に行われる花供会式、7月7日の蓮華会が金峯山寺の三大行事です。

節分会には「福は内、鬼も内」と唱える鬼の調伏式が行われる他、2月1日から3日までの3日間にわたって鬼火の祭典が蔵王堂を中心に行われます。

2月2日の鬼歩きや鬼火ライブ、2月3日の大護摩供や福豆まき大抽選会も鬼火の祭典で人気のイベントです。

神木の桜を蔵王権現に捧げる花供会式は吉野山の桜が満開となる4月10日から12日の3日間に行われ、大名行列や花供懺法会・花供千本搗きといった行事で境内が賑わいます。

弁天池の蓮の花を蔵王権現に供える7月の蓮華会では、大鷲にさらわれた修験者を蛙の姿に変えて救ったという伝承を再現する蛙飛び行事が見られます。

4.兵火や廃寺と再興の歴史

蓮華会で披露される蛙飛び行事は、金峯山寺で古くから行われてきた験競べの名残りをとどめる行事とも言われています。

修験者たちが二手に分かれ、修行で得た法力を互いに競い合ったのが験競べです。

厳しい山岳修行によって法力が得られるという考え方は、金峯山寺を創建したと伝えられる修験道の開祖・役行者に始まります。

飛鳥時代に生きた役行者は役小角が正式な名で、鬼神を自在に操るなど超自然的な法力を示す数々の伝説を残した人物です。

蔵王権現という日本独自の仏を信仰の対象とする金峯山寺は真言宗の僧侶・聖宝が中興して平安時代に盛んとなり、白河法皇や藤原道長などの信仰を集めてきました。

南北朝期には吉野山が南朝の本拠となった影響で金峯山寺の伽藍も焼失しましたが、その後再興されています。

金峯山寺は明治時代に新政府の神仏分離令で廃寺とされて最大の危機を迎えましたが、天台宗修験派として復興した後、太平洋戦争後に金峯山修験本宗が成立して独立を果たしたのです。

5.毎月1回大峯修行体験も実施

1300年以上という長い歴史の中で何度も存亡の機を迎えながらその都度乗り越えてきた金峯山寺には、古代から続く霊場ならではのパワーが満ちています。

この一帯に秘められた大地の力は金峯山寺のある吉野山だけでなく、古くから金峰山として総称されてきた山域を踏破することで最大限に体験できるものです。

山歩きを趣味としているシニアの中には、金峯山寺で5月から10月にかけて毎月1回募集される大峯修行体験に参加する人もいます。

今なお女人禁制が守られている山上ヶ岳への山上参や蓮華奉献入峯・大峯奥駈修行は男性限定ですが、金峯山寺では女性のための修行体験も募集しています。

金峯山寺を訪れて山岳信仰や修験道への関心が高まったら、人生観を大きく変える可能性のある大峯修行に参加してみるのもいいでしょう。

健脚に自信がない人でも、金峯山寺の境内と周辺の巡礼路を歩くだけで独特の宗教的なパワーに触れることができます。

金峯山寺の大峯修行体験にも参加してみよう

吉野山を含む紀伊山地には年間降水量が多い関係で森林が発達し、神々が宿る聖地として日本人の精神性を育んできました。

金峯山寺と合わせて熊野三山や高野山といった聖地も巡礼すれば、宗教体験がさらに深まります。

日本独自の蔵王権現を本尊とする金峯山寺には、吉野山に秘められた霊地としてのパワーが集中しています。