愛知県名古屋市熱田区にある熱田神宮は、古くから皇室ゆかりの神社として伊勢神宮とともに信仰を集めてきました。
近年のパワースポットブームに乗り、熱田神宮は若い女性からシニア層まで幅広い参拝客で賑わっています。
1.三種の神器の1つ草薙神剣がご神体
熱田神宮が伊勢神宮に次ぐ権威ある神社とされているのは、ともに三種の神器を祀っている点に由来します。
「古事記」や「日本書紀」に書かれている天孫降臨神話によると、天孫の邇邇藝命が高天原から日向国・高千穂峰に降臨する際に、皇祖神の天照大神から三種の神器を授けられたとされています。
八咫鏡と八尺瓊勾玉・草薙神剣という三種の神器は歴代天皇が皇位継承の際に受け継がれ、即位の儀式でも三種の神器の形代が使われてきました。
皇室の象徴とも言える三種の神器のうち、八尺瓊勾玉は皇居・剣璽の間に実物があると言われています。
これに対して八咫鏡の実物は伊勢神宮の内宮に、草薙神剣の実物は熱田神宮にそれぞれご神体として祀られてきました。
日本広しと言えども三種の神器の実物をご神体とする神社は伊勢神宮と熱田神宮しかないため、この2つの神社が別格として日本人に深く信仰されてきたのです。
2.神明造の本宮と八剣宮
熱田神宮の近くにはJR熱田駅の他にも名鉄神宮前駅や地下鉄名城線の伝馬町駅など、徒歩圏内に複数の駅が存在するのでアクセスに便利です。
正門の第一鳥居をくぐって参道を進んでいくと途中で大楠の手前に手水舎が見えてきますので、ここで手と口をすすいでから参拝します。
ご神体の草薙神剣が祀られた本宮は参道の突き当りにあって、伊勢神宮と同じ神明造の社殿配置で建てられた建造物です。
昭和20年の熱田空襲で焼失した後の昭和30年に再建された本宮は、拝殿の奥に千木・勝男木を備えた本殿が控えています。
左手から通じる「こころの小径」を進んだ一番奥には熱田大神の荒魂を祀った一之御前神社がありますので、本宮に参拝したらこちらにも立ち寄るといいでしょう。
正門の左手にある八剣宮は、織田信長や豊臣秀吉・徳川家康などの武将に信仰されたことでも知られる別宮です。
八剣宮は本宮と共通する神明造で建てられており、神事なども本宮に準じて行われています。
3.日本武尊と草薙神剣の逸話
熱田神宮がご神体としている草薙神剣は、元はと言えば天照大神の弟神・素盞嗚尊のヤマタノオロチ退治に由来します。
高天原を追放されて出雲国に降り立った素盞嗚尊は8つの頭と8つの尾を持つ巨大な怪物・ヤマタノオロチを退治し、命を救った櫛名田比売を妻としました。
このときヤマタノオロチの尾の中から出てきた草薙神剣を素盞嗚尊が天照大神に献上し、後の天孫降臨の際に天照大神が三種の神器の1つとして邇邇藝命に授けたのです。
第12代景行天皇の時代は蝦夷征伐が活発に行われ、皇子の日本武尊が東国征伐の命を受けました。
日本武尊は出陣に先立って伊勢神宮の倭姫命を訪ね、伊勢神宮にあった草薙神剣を与えられます。
日本武尊は相模の国で野火の攻めを受けながら、この剣で草を薙ぎ払って難を逃れたという伝説は有名です。
日本武尊の死後は草薙神剣が伊勢神宮に戻ることもなく、妻の宮簀媛命が熱田の地で剣を祀ったのが熱田神宮の起源だと伝えられています。
4.約6万坪の広大な境内に多くの摂社・末社
熱田神宮の境内はおよそ6万坪にも達すると言われるほど広大で、本宮や別宮以外にも多数の摂社や末社が点在しています。
中でも女性の人気を集めているのが、こころの小径から本宮の東側に回り込んだ先にある清水社です。
清水社の祭神は水を司る神の罔象女神で、社殿の奥ににある湧き水で洗えば肌がキレイになると言われてきました。
この湧き水の流れの中央には楊貴妃の墓と伝わる石があり、絶世の美女として知られる中国唐代の皇妃にちなんで女性の参拝客が絶えません。
平安時代末期の武将・平景清がこの湧き水で目を洗い、眼病が治ったという言い伝えもあることから、罔象女神は目の健康にもご利益があるとされてきました。
この他にも知恵の文殊様として古くから信仰されてきた上知我麻神社が八剣宮の近くにあって、合格祈願だけでなく頭に関わる病気の平癒を祈る参拝客から人気を集めています。
5.弘法大師お手植えの大楠も必見
熱田神宮の広々とした境内の中でも本宮と八剣宮のちょうど中間にある大楠は樹齢千年を上回ると推定され、弘法大師お手植えと伝わるご神木です。
境内には七本楠と言われるほど巨大な楠が多く見られますが、手水舎の近くにあるこの大楠は特に強力なパワーを放っています。
幹周り7m高さ20mにも達するこの大楠の根本に卵がお供えされているのは、この樹に神の化身とされる蛇が住み着いてるからです。
この蛇はめったに姿を見ることができませんが、幸運にも見かけたら開運のご利益が得られると言われています。
歴史好きのシニアなら本宮手前にある信長塀も見逃せません。
織田信長が桶狭間の戦いへの出陣に際して熱田神宮に戦勝祈願し、見事勝利を収めたお礼としてこの築地塀を奉納したのです。
古くから武家に信仰されてきた熱田神宮には刀剣類も数多く奉納されており、国宝や重要文化財に指定された多くの名刀が手水舎向かいの宝物殿に展示されています。
草薙剣を祀った熱田神宮は、日本有数のパワースポット
草薙剣は素盞嗚尊がヤマタノオロチの尾から発見し、日本武尊が火難から逃れるのに使われたと信じられてきました。
そうした逸話を持つ草薙神剣を祀った熱田神宮だけに、古くから武家に信仰されてきたのです。
熱田神宮は大都市名古屋の中心部にありながら静寂に包まれており、神聖な気分が味わえるパワースポットでもあります。