年金定期便に記載されている年金の見込額が思っていたより低い理由とは?

最終更新日:2017年7月17日

毎年1回、誕生月になるとねんきん定期便が届きます。

これにより、将来受け取る年金額が確認できますが、「あれ?これしか年金貰えないの?思ったより低い」と思われる方もいるかと思います。

その考えられる原因と年金制度について確認していきましょう。

1.国民年金と厚生年金の基礎知識

日本の年金制度は2階建ての制度と言われています。

1階部分として、日本国内に住む20歳~60歳の全ての人が加入する全国民共通の基礎年金として国民年金があります。

2階部分には国民年金の上乗せ部分として、会社員等の加入する厚生年金があります。

厚生年金は受けている給料の額に応じて年金給付額も変わってくるため、報酬比例部分とも呼ばれています。

厚生年金の適用事業所で働いてない方や自営業者で国内在住の20歳~60歳の方は国民年金のみの加入となり、これを第1号被保険者と言います。

第1号被保険者は国民年金保険料を負担します。

厚生年金の適用事業所で働く方は第2号被保険者となり、毎月の給与から厚生年金保険料が徴収されます。

厚生年金に加入されている方の、20歳~60歳の被扶養配偶者は第3号被保険者となり、国民年金に加入します。

第3号被保険者の保険料は厚生年金制度全体で支払っているため、保険料の徴収はありません。

このように、年金制度は基礎部分と上乗せ部分の2階建ての仕組みとなっています。

年金を受給する際も、1階部分として国民年金から基礎年金、2階部分として厚生年金が支給されています。

2.国民年金に未納期間がある場合

国民年金から支給される老齢基礎年金は、20歳~60歳の40年間(480月)保険料を納付した場合満額支給されます。

納付月が480月に満たない場合その月数分減額される仕組みになっています。

第2号被保険者期間は、給料から保険料が天引きされるため未納となることはありません。

しかし第1号被保険者期間は、ご自身で保険料を納付する必要があるので未納機関が発生してしまうこともあります。

第3号被保険者は保険料は負担していませんが、配偶者の第2号被保険者が退職されて厚生年金から外れた場合は第3号被保険者ではなくなってしまいます。

そうなると第1号被保険者への種別変更の手続きを行い、保険料を負担する必要が生じます。

この手続きを忘れてしまうと、本来は第1号被保険者となる期間が第3号被保険者のままとなってしまい不整合が生じ、この期間は年金額に反映されません。

同様に、退職された第2号被保険者も種別変更の手続きが必要です。

また、20歳~60歳のうち海外在住期間は任意加入期間となっているので、国民年金に任意加入していないとその期間は年金額には反映されません。

国民年金の保険料を払ってないとその分年金額が減額されてしまうので、基礎年金の額が低いと思ったら、ご自身の年金加入期間と納付状況を確認してみましょう。

3.標準報酬月額と年金額

標準報酬月額とは給与の額を一定の区分に当てはめた額で、原則として毎年1回、4月5月6月に実際に受けた報酬の平均額を使い決定されます。

この標準報酬月額が将来貰う年金額の計算の基礎となり、毎月の保険料も標準報酬月額に保険料率を掛けて算出されます。

平成15年4月からは賞与も年金額の計算に含め、保険料も徴収されています。

老齢厚生年金額の計算式を簡単に表すと

平成15年3月までの標準報酬月額の平均×給付乗率×平成15年3月までの加入期間 + 平成15年4月4以降の標準報酬月額+賞与の平均×給付乗率×平成15年4月以降の加入期間

このようになっています。

長く勤務されて給与も上がってくると、「こんなに保険料とられてるのに年金額が思ったより低い」と思われる方もいるかもしれません。

老齢厚生年金額はこのように、加入期間の標準報酬月額の平均で決まるので、給与の低い時期が長かったり加入期間が短いと減ってしまいます。

そのため現在の給与に比べて低いと感じてしまうこともあります。

4.厚生年金基金の加入期間があるとき

厚生年金基金は企業年金の一つで、老齢厚生年金に加えて独自の年金の上乗せ給付を行っています。

厚生年金基金の設立された会社に勤務されていた方は、その厚生年金基金の加入員となり、基金からも老齢年金給付を受けることができます。

国民年金・厚生年金は国から支給されますが、加入員であった方には、代行部分として老齢厚生年金の一部と、上乗せ部分が基金から支給されます。

この基金からの支給分はねんきん定期便に記載されていないため、実際の総受給額よりも低く記載されています。

基金からの支給分は基金に確認を行うか、インターネット上でねんきんの確認ができる「ねんきんネット」で基金支給分も含めた総額を確認することができます。

5.離婚した場合の年金記録分割

離婚した夫婦は、婚姻していた期間について年金の加入記録を分割できる制度があります。

分割制度には2種類あります。

夫婦の合意により按分割合を決定して婚姻期間の年金記録の分割を行う離婚分割。

同意の必要なく第3号被保険者期間に対して第3号被保険者の請求により行う3号分割です。

離婚分割は最大で50%まで、3号分割は2分の1に分割できます。

離婚分割を行うと対象期間の標準報酬月額が少なくなりますので、被保険者であった方は年金受給額が減ってしまいます。

年金定期便の見込額の疑問を解決しよう

定期便の表記は50歳未満の方のねんきん定期便にはその時点での将来の年金額、50歳以上の方は現状のまま支給開始年齢に達した場合の見込額になっていますのでご注意ください。

50歳以上の方はより実際の支給額に近い額が記載されています。

このように年金制度には受給額の計算に様々な仕組みがあります。

毎年届く定期便によりご自身の年金記録を確認し、間違いがないか確認していくことも大切です。