定年後の旅!秋田竿灯まつり(秋田県)の起源(七夕行事の眠り流し)で夏の睡魔を払う

最終更新日:2017年9月25日

東北地方には全国的にも有名な夏祭りが8月上旬に集中して行われ、大勢の観光客を楽しませています。

中でも仙台七夕まつりや青森のねぶた祭りと並んで東北三大祭りの1つに数えられるのが、秋田の竿灯まつりです。

1.東北・秋田を代表する夏祭り

秋田の夏を彩る代表的な祭りとして毎年多くの観光客を集めている竿灯まつりは、8月3日から6日の4日間にわたって開催されます。

連日午後7時前に竿灯が秋田市山王の竿灯大通りへ入場し、8時半過ぎにかけて竿灯の演技が繰り広げられるのが基本的な祭りの流れです。

この他にも8月4日から6日までの3日間は、昼竿灯とも呼ばれる竿燈妙技会が日中に開催されて演技者の技を競います。

高さが10メートルを超え、重さ50キロにも達する巨大な竿灯を人力で持ち上げる行事だけに、竿灯は天候の影響も大きく受ける点も大きな特徴です。

竹を十文字に組んだ上に9本の横竹を組んで竿灯の骨組みが作られ、それぞれの横竹には合計46本の提灯が吊るされています。

強風が吹いている中で竿灯を持ち上げて倒さないようバランスを取るには高度な技が必要で、そこがまた演技者にとっては腕の見せ所です。

1つ1つの提灯には雨を防ぐ目的で油が塗られているため小雨決行ですが、荒天の場合は中止になった例も過去にはありました。

2.七夕行事の眠り流しが起源

全国各地に多種多様な夏祭りが見られる中でも秋田の竿灯は見た目も独特で、これと似た祭りは存在しないかのようにも思われがちです。

しかしながら竿灯の源流をたどってみると、全国で広く行われていた眠り流しの七夕行事に行き着きます。

夏の睡魔や邪気を短冊などの形代に託して水に流す眠り流しのことを、秋田では古くから「ねぶり流し」と呼んでいました。

青森のねぶた祭りや弘前ねぷたも同様の眠り流しを起源に持つと言われており、秋田県内でも能代でねぶながしと呼ばれる類似の七夕行事が行われています。

青森や弘前・能代の行事では巨大な灯籠を担いで練り歩くスタイルが大きな特徴です。

それらと違って稲穂に見立てた提灯の連なりを持ち上げるという竿灯特有のスタイルは、江戸時代中期の宝暦年間頃に確立されたと伝えられています。

秋田の竿灯まつりは七夕行事であると同時に、盆の最初の行事でもあります。

祖霊の目印になるよう門前に立てた高灯籠に眠り流しを習合させた行事が、竿灯まつりの起源とも考えられるのです。

3.スリルも味わえる豪快な技

以上のような歴史と起源を知ることで竿灯まつりもまた違った味わい方が可能ですが、最大の魅力は巨大な竿灯を1人の力で持ち上げる豪快さにあります。

入場した竿灯が一斉に持ち上げられ、夜空に1万個もの提灯が浮かび上がる様子はまさに圧巻の光景です。

演技者はみな子供の頃から竿灯の演技を繰り返し練習して腕を鍛えており、手のひらだけでなく額や肩・腰で竿灯を支えるアクロバティックな技も披露してくれます。

中には重さ50キロの竿灯を口や顎で支えたり、同時に和傘や扇子を使った演技を行う熟練者もいるほどです。

竿灯をさらに高く持ち上げるためにしばしば継竹も行われ、継いだ竹を大きくしならせながらバランスを取る演技も見逃せません。

途中で継竹が折れたりバランスを崩したりして竿灯が倒れる場合も少なくありませんが、そうしたスリルを味わいながら見物するのも竿灯の醍醐味です。

稀には電柱や木に竿灯が引っかかって提灯が燃え上がることもありますので、演技者の周りにはサポート役の人が常に数人控えて安全対策を取っています。

4.囃子方と掛け声の魅力

竿灯には一番大きな大若の他にも、サイズによって中若・小若・幼若も含めた4種類があります。

小若や幼若は将来の竿灯まつりを担う子供たちが担当していますので、その可愛らしい演技を竿灯まつりを見るのも楽しみの1つです。

豪快さが持ち味の竿灯まつりを盛り上げるもう一方の担い手は、笛・太鼓による囃子方です。

竿灯が会場入りする際と各町内に帰る際に演奏される流し囃子に加え、竿灯本番の演技を行うときに演奏される本囃子の2種類があります。

現在は40近くの町内が竿灯まつりに参加しており、夜の本番になると竿灯大通りは各町内の奏するお囃子の音で大変賑やかになります。

竿灯を持ち上げる演技中には、「ドッコイショー ドッコイショ」という独特の掛け声をかけて演技者を盛り立てるのが習わしです。

この掛け声とお囃子が一体となって祭りの熱狂的なムードを味わえる点も竿灯の見逃せない魅力です。

5.竿灯妙技会とふれあい竿灯

竿灯本番の演技は8時半過ぎで終了しますが、終了後にはふれあい竿灯と呼ばれるイベントも開催されます。

ふれあい竿灯は各町内の参加者と観客との交流の場で、写真撮影の他に竿灯を持ったり太鼓を叩いたりする体験もできます。

中には一番大きい大若の竿灯を持たせてくれる町内もありますので、腕に自信のある人は挑戦してみるといいでしょう。

金色の稲穂に見立てた竿灯が夜空に映える光景が最大の魅力とは言え、竿灯まつりは夜だけではありません。

竿灯まつりの2日目から4日目にかけては日中にも竿灯妙技会が行われ、各町内の演技者が腕を競い合っているのです。

昼竿灯とも呼ばれるこの竿灯妙技会では、団体戦と個人戦・囃子方という3部門にわたって各町内の達人たちが技を競います。

夜の本番と違って竿灯妙技会はスポーツ競技のような面白さがあり、夜とは違った意味で手に汗握るスリルが味わえるものです。

夜だけでなく一日がかりで竿灯をじっくりと味わいたいという人には昼竿灯も必見のイベントです。

6.竿灯まつりを見る方法

竿灯妙技会は秋田市中心部のエリアなかいちにぎわい広場で行われ、競技が行われている場所で誰でも自由に見物できます。

夜の本番では竿灯大通りに観覧席が設けられており、迫力の演技が特等席から目の前で見られます。

有料の観覧席は毎年5月頃から予約受付を開始していますので、良い席を確保したい人は早めに予約しておくといいでしょう。

観覧席以外でも立ち見で竿灯の迫力は十分に味わえますが、入場した竿灯が持ち上げられる瞬間はスリルを堪能できる見どころの1つです。

会場までの交通アクセスはJR秋田駅から徒歩で約15分ですが、車の場合は会場周辺に設けられた無料駐車場を利用するといいでしょう。

会場付近は午後6時15分から交通規制が開始されますので、無料駐車場を利用する際には早めに駐車場所を確保しておくのが安心です。

旅行会社では竿灯まつりに合わせたツアーも多く開催しており、日程が近い仙台七夕や青森ねぶたなども含めた東北夏祭りを巡るツアーも人気を集めています。

秋田竿灯まつりで東北のパワーを感じよう

五穀豊穣の祈りをこめて稲穂に見立てた竿灯を操る演技には、他の祭りに見られない波乱の展開も付きものです。

時には竿灯が倒れたりする失敗もありますが、そうしたハプニングも含めた熱気が竿灯まつりの大きな魅力です。

日本を代表する夏祭りの1つとして、秋田の竿灯まつりは遠く海外から見物に訪れる観光客も少なくありません。