赤身魚にはDHAやEPAが多く認知症予防にも役立つ!

最終更新日:2017年11月23日

世界には3万種類近くもの魚が生息していると推測されていますが、それらの魚は白身魚と赤身魚に大きく分けられます。

赤身魚にはサンマ・アジ・サバ・マグロ・カツオなど、日本人に馴染みの深い魚が多く含まれます。

1.白身魚との違い

赤身魚と白身魚では肉の色が異なるだけでなく、習性や含まれる栄養素にも違いが見られます。

タラやヒラメ・カレイ・サケ・フグなどが代表的な白身魚で、それらの魚は基本的に回遊しません。

普段はそれほど泳ぎ回る必要がなく、エサとなる獲物を捕獲するときだけ瞬発力を必要とします。

そのため白身魚の筋肉は酸素の割合が低くなっており、酸素を運搬するための色素たんぱく質が少ないことから肉の色が白いのです。

一方の赤身魚は外敵から身を守るため群れを作って回遊する習性を持っており、眠っている間でさえ泳ぎ続けなければなりません。

そうした事情から赤身魚の筋肉にはヘモグロビンやミオグロビンなど、酸素を運搬するための色素タンパク質が豊富に含まれています。

ヘモグロビンやミオグロビンは材料のヘム鉄に由来する赤い色素を持っており、それが赤身魚の肉の色となっているのです。

赤身魚の筋肉には長時間泳ぎ続ける中でエネルギー源となる脂肪も多く含まれています。

2.赤身魚にDHAやEPAが多い理由

赤身魚に多く白身魚に少ない栄養素には、DHAやEPAの不飽和脂肪酸と鉄分が挙げられます。

このうち鉄分は前述の色素たんぱく質を構成するヘム鉄の材料として赤身魚の肉に含まれる成分です。

人間の血液中でも同じ赤い色素を持つヘモグロビンが赤血球を形作り、その中に含まれる鉄が酸素と結びつきやすい性質を利用して細胞への酸素運搬の役割を果たしています。

ヘモグロビンは酸素の運搬能力に優れる反面、酸素を放出しやすい性質も持ちます。

絶えず泳ぎ回っていなければならない赤身魚は筋肉中に大量の酸素を貯蔵する必要もあるため、ヘモグロビンよりも酸素を放出しにくい性質を持つミオグロビンも欠かせません。

ヘモグロビンによって運ばれてきた酸素を筋肉中のミオグロビンが受け取り、長時間貯蔵して泳ぎ続けるためのエネルギーとして利用されているのです。

そのエネルギー源には燃焼効率の高い脂肪が使われますが、魚の場合はDHAやEPAの形で貯蔵されています。

3.認知症予防にも役立つDHA

保存性の高いエネルギー源として人間も利用している脂肪には、常温で固体の飽和脂肪酸と液体の不飽和脂肪酸の2種類があります。

飽和脂肪酸は牛肉や豚肉など動物の肉に多く、不飽和脂肪酸は植物油や魚油に多いのが特徴です。

赤身魚に多く含まれるDHAとEPAも不飽和脂肪酸の一種で、摂取されると細胞膜の材料などに使われます。

このうちDHAは血液脳関門を通過して脳神経細胞の細胞膜の材料にも利用されるため、「頭を良くする成分」として広く知られるようになりました。

DHAの摂取量が豊富な人の脳では神経細胞の細胞膜が柔軟になって反応が良くなり、アルツハイマー型認知症を発症しにくくなると考えられます。

認知症はいろいろな原因で発症するため、DHAだけで完全に予防できるというわけではありません。

それでも魚を1日1回以上食べる人はそうでない人と比べ、アルツハイマー型認知症の発症率が5分の1という調査結果は注目すべき数字です。

4.血管を健康にさせるEPA

一方のEPAはDHAと違って血液脳関門を通過できませんが、血管の健康には欠かすことができない成分です。

特に中高年の人は若い頃と比べて血管のしなやかさが徐々に失われ、動脈硬化や高血圧が進んで血栓ができやすくなっています。

血管の壁が傷つくとそこに悪玉コレステロールが入り込んで血管壁が厚くなり、血液の通り道が狭くなるため血圧が高くなります。

こうしてできるコブ状の部分はプラークと呼ばれていますが、このプラークが破れると傷を修復しようとして血小板が集まり血栓が作られます。

この血栓が何かの拍子に剥がれると血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすのです。

EPAは血小板の働きを抑制して血栓ができにくくするだけでなく、悪玉コレステロールを減らして血液をさらさらにしてくれる効果も持ちます。

EPAの効果で脳梗塞が予防されれば、脳血管性認知症も結果的に防ぐことができます。

5.赤身魚をおいしく食べる工夫

長時間泳ぎ続けるためのエネルギー源としてDHAとEPAを豊富に持つ赤身魚を食べれば、以上のような健康効果を得ることができます。

ミオグロビンやヘモグロビンの材料となる鉄分も貧血予防や疲労回復に役立つため、人体に必須となる栄養素の1つです。

栄養豊富な赤身魚を毎日の食事に取り入れることで認知症や生活習慣病の予防につながりますが、魚より肉の方を好むという人はシニア世代にも少なくありません。

淡白な味の種類が多い白身魚と比べ、赤身魚には魚特有の味を持つ種類が多いものです。

魚が苦手な人でも缶詰を使った料理や揚げ物・照り焼きなら赤身魚特有の癖もそれほど気にならず、おいしく食べられる可能性があります。

魚を抵抗なしに食べられる人は赤身魚をおいしく食べる工夫を凝らしたメニューを毎日の食事に加えることで、食事を楽しむと同時に健康に役立つ効果も享受できます。

赤身魚から貴重な栄養素を摂取する

日本人の間では若い世代ほど魚離れが顕著と言われていますが、シニア世代では魚を食べている人の割合も比較的高いものです。

外敵に食べられないよう絶えず泳ぎ回る習性を持った赤身魚を食べることで、貴重な栄養素が摂取できます。

赤身魚の生きる知恵がDHAやEPA・鉄分などに凝縮され、人間の健康に大きく役立ってくれるのです。