足立美術館(島根県)日本一の庭園と所蔵数日本一の横山大観作品を楽しむ!

最終更新日:2017年11月23日

島根県安来市出身の実業家・足立全康氏は美術コレクターとしても知られ、71歳で故郷の安来に足立美術館を設立しました。

足立美術館は横山大観作品を柱とする足立コレクションの他、日本一と称される庭園でも有名です。

1.足立コレクションと日本庭園

島根県安来市にある足立美術館は1970年に設立され、横山大観ら近代の日本画作品と陶芸・童画・木彫・工芸など多彩な美術品を紹介してきました。

特に日本画最大の巨匠として知られる横山大観の所蔵作品数は130点にも及び、本館には横山大観特別展示室も設けられています。

いずれも生前の足立全康氏が精力と財力を傾けて熱心に収集してきた貴重なコレクションの数々です。

足立美術館には横山大観以外にも上村松園や菱田春草・竹内栖鳳・橋本関雪・前田青邨・川合玉堂など、著名な近代日本画家の作品が数多く展示されています。

北大路魯山人や河井寛次郎の陶芸作品、林義雄・鈴木寿雄・川上四郎らの童画、平櫛田中・米原雲海の仏教彫刻も見逃せない展示コレクションです。

足立美術館では本館を取り囲むようにして日本庭園が配され、日本庭園ランキングでも全国1位の常連として高く評価されてきました。

2.横山大観作品の所蔵数は日本一

足立美術館で一番の見どころと言えば、何と言っても日本一の所蔵数を誇る横山大観作品の数々です。

明治元年生まれの横山大観は岡倉天心を師として日本画に革新を引き起こし、現在に至る日本画壇の大きな流れを作った最大の功労者として知られています。

没線描法を特徴とする独自の画風は「朦朧体」とも呼ばれていますが、大観の革新的な作風も当初は保守的な画壇から批判的に受け止められていました。

西洋絵画の「印象派」も登場当時は曖昧模糊とした表現の意味で保守的な批評家たちから揶揄された呼び名でしたが、横山大観の「朦朧体」も同様のニュアンスで用いられていたのです。

海外で高評価を得るにつれて国内画壇での評価も高まり、横山大観は日本近代美術を代表する巨匠として認められるようになりました。

足立美術館では本館2階の横山大観特別展示室で<><><>といった代表作を鑑賞することができます。

3.国際的評価も高い日本庭園

横山大観作品を始めとする足立コレクションの数々にも劣らず、足立美術館のもう1つの魅力は日本一と称される日本庭園です。

5万坪にも及ぶ広大な庭園には創設者・足立全康氏自身が全国から収集した庭石等を配し、借景の技法も駆使して理想の庭園美を表現しています。

「枯山水庭」「苔庭」「寿楽庵の庭」「白砂青松庭」「池庭」「亀鶴の滝」の6つに分かれた日本庭園は、庭そのものが独立した美術作品として鑑賞の対象です。

喫茶室「翠」の屋外に広がる枯山水庭では、借景の山々をバックとして絶妙に配置された石や白砂による枯山水の美が味わえます。

12月初旬まで紅葉が見られる寿楽庵の庭は、風流な茶室から庭に出ることも可能です。

横山大観の<>をモチーフとした白砂青松庭や、喫茶室「大観」を取り囲む池庭の鯉も見逃せません。

足立美術館の庭園はフランスの著名な旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で最高評価の三つ星にも選ばれています。

4.美をこよなく愛した足立全康

明治32年に現在の島根県安来市に生まれた足立全康氏は、木炭を大八車で運ぶ仕事から着想を得た商売を手始めに非凡な商才を発揮するようになった実業家です。

終戦後は大阪を舞台に数々の事業を成功に導いた足立氏は、文字通り裸一貫から一代で富を築き上げました。

足立氏がその財力を投入して熱を入れていたのが、横山大観作品を始めとする美術品の収集と庭造りです。

それらは趣味の域を越え、故郷の安来に足立美術館を設立するという一大文化事業へと結実していきます。

一度惚れ込んだ美術品への執念は非常に強く、門外不出と言われた北沢コレクションの中から横山大観の<><>といった名作を購入した際の逸話は現在でも語り草となっているほどです。

1990年に91歳で足立全康氏が亡くなった後も、足立美術館では設立者が情熱を傾けて収集した美術品コレクションと庭園の美を現在まで守り続けてきました。

5.駅から無料シャトルバスが運行

国際的な評価も高い日本庭園に加えて日本一を誇る横山大観作品の展示室を備え、日本画家の巨匠が描いた作品や陶芸作品など日本美術の粋を集めた足立美術館はシニア層に人気の美術施設です。

日本文化に関心を持つ外国人も多く訪れる足立美術館は、交通の便という点でも来館客に配慮されています。

最寄り駅となるJR安来駅からは1日17往復の無料シャトルバスが毎日運行されており、駅前から20分ほどで足立美術館に到着できます。

航空機でアクセスする場合は米子空港や出雲空港から空港連絡バスを経て、JR米子駅または松江駅からJR安来駅まで移動するといいでしょう。

車で訪れる場合は山陰自動車道安来ICから足立美術館まで約10分で到着できる他、全国の主要都市からJR米子駅前まで高速バスも運行されています。

出雲大社や鳥取砂丘・松江城など、山陰地方の有名な観光スポットと足立美術館訪問を組み合わせた旅行ツアーも人気です。

足立美術館で日本一の庭園を楽しむ

若い頃は洋風のライフスタイルやカルチャーに親しみながら、シニアと呼ばれる年齢になってから日本の伝統美と伝統文化を愛するように志向が変化した人は少なくありません。

そうした人の感性を心地よく刺激してくれるような近代日本の美術作品と日本庭園を持つ足立美術館は、一度訪れたら何度も足を運びたくなる場所です。