最大斜度35度の急坂を、大きな巨木が、男たちをぶるんぶるんと振り落として、すごい速さで落ちてゆく。
日本三大奇祭にも数えられている、「御柱祭(おんばしらさい)」という祭りが、諏訪大社にはあります。
奥山から切り出したモミの大木を、人間の手で神社まで曳いてくる祭り。
7年目ごと、寅と申の年に行われています。
1.古くは古事記に遡る
諏訪大社といえば、全国にたくさんある、諏訪神社の総本社。
諏訪大社は、諏訪湖の周りに4カ所あり、下社春宮は諏訪湖の北側に位置しています。
諏訪大社は、古事記の国譲りの神話で知られる、建御名方神(タケミナカタノカミ)と八重事代主神(ヤエコトシロヌシノカミ)という神様を主祭神としています。
「国譲りの神話」といえば、建御名方神が、建御雷神(タケミカヅチノカミ)との力比べに負けて遠い出雲の地から、諏訪まで逃げてきたお話。
建御雷神に、二度とこの地からでませんと許しを請うたとされています。
また、平安時代末期からは、武勇の神としても知られるようになりました。
戦国時代は武田信玄も、諏訪社を信仰しておりました。
創建された年代は分かっていませんが、諏訪大社は日本最古の神社の一つと言われています。
2.諏訪大社と関わりの深い御柱祭
冒頭でも説明した、御柱祭。
諏訪大社の4社それぞれの神社の4隅には、前回の御柱祭で山から、お社まで運ばれてきた「御柱」が建てられています。
こちらのお祭り自体もまた、古来より行われており、御柱の記録にのこる最初は、798年(延暦17年)。
ですが、その起源はさらに遡るといわれます。
諏訪の神様としての諏訪大社はこの地の人々にとって身近な存在であります。
そして、昔から続いてきた御柱祭の精神は、今の人たちにも粛々と受け継がれています。
その「御柱」に、諏訪の人たちの力、今日まで祭りを繋いできた力を感じてみるのもいいですね。
3.春宮の見どころ
奥にある、幣拝殿。
ここでお参りをしたら、見てほしいのが建築です。
現在あるこの幣拝殿は、大隅流の宮大工、柴宮(伊藤)長左衛門が請け負い、1780年(安永9年)に完成しました。
国の重要文化財に指定されています。
春宮は大隅流の宮大工が請け負いましたが、下社秋宮は立川流の宮大工が請け負っています。
同じ時期に、大隅流と立川流で技術が競われていました。
そんなドラマを感じながら、宮大工たちの技術のすごを感じてください。
ひっそりと、しかし、荘厳な作りの建築は春宮の大きな見どころの一つになっています。
また、春宮への参道には、下馬橋という橋があり、こちらは室町時代の造営。
下社の中では一番古い建物です。
今でも、遷座祭というお祭りで、神輿のみがこの橋を渡ります。
車が行き交う道の真ん中にポツンとのこる下馬橋は、今と昔が上手く融合して、街の空気を創り出している、境内の中とはまた違った見どころがあります。
4.合わせて見るべき万治の石仏
下社春宮に来たら、合わせて見てほしいのが、万治の石仏です。
名前の由来は、石仏の胴部に万治3年と刻まれていたことから。
春宮から徒歩で行けるほど、近くにあります。
川の流れの音と、小さな田んぼ、木々を背にして、ひっそりと鎮座しています。
この石仏は、「芸術は爆発だ」と言った岡本太郎さんが絶賛していたり、諏訪の出身である、新田次郎さんも感嘆しています。
著名人たちに多大なる影響を与えた「万治の石仏」。
癒し効果だけでなく、芸術のエネルギーも与えてくれるかもしれません。
五感をフル稼働させて、見ていただきたいです。
5.木落とし体験のできる博物館
もう一つ、春宮と合わせて見ていただきたいのが、この「御柱館よいさ」です。
こちらも春宮の近く、万治の石仏から少し下ったところにあります。
2016年、4月の御柱の年にオープンしました。
こちらの見どころは、見るだけでなく、体感として御柱祭を実感できるところ。
木落とし体験装置
と、映像によって、実際に柱に乗った人の目線で、木落としを体験することができます。
諏訪大社で昔からずっと行われてきた御柱祭。
神社で本物の御柱の高さと太さを実感していただいて、さらに御柱祭について知りたくなった方は、ぜひ、こちらの博物館にもお立ち寄りください。
諏訪には神々の宿るパワースポットがたくさん
紹介した、諏訪大社春宮周辺だけでなく、諏訪の地はパワースポットがたくさんあります。
諏訪大社は、春宮だけではありません。
秋宮に、上社は、本宮に前宮もあります。
それぞれ趣が異なります。
中でも春宮は、少し住宅地に入った、静かさののこる場所。
神聖さでいったら、春宮は一番それを感じられるかもしれません。
昔から続いている御柱祭の木や、建築の技、ポツンと鎮座する石仏。
そこから少しでも何か感じられたら、諏訪を守る神様からパワーを頂けたことになるのではないでしょうか。
春宮を気に入っていただけたら、今度は諏訪大社の他の神社も参拝してみてください。