犬は以前と違い、家族の一員として屋内で飼われることが当たり前のようになりました。
常に人間の目の届くところで生活することにより、住環境はもちろん食事や健康にも気を配ることが出来ることから犬も高齢化が進み、老犬介護が必要になっています。
1.住環境の整備
犬は老化により視覚・聴覚・嗅覚が衰え足腰が弱るため、少しの段差につまずいたり、家具にぶつかったりすることが多くなります。
また、痴呆の症状が現れると、同じところを円を描くように歩き続けたり、後退することが出来なくなるため家具の隙間などに頭を入れたまま動けなくなったりすることもあります。
犬が自力で歩ける状態であれば、家具の角を柔らかい素材のもので覆い、入り込みそうな隙間にマットを詰めたりしてふさぎます。
段差があれば板などを渡し、滑りやすい床には滑り止めマットを敷きます。
可能であれば、部屋の一角を仕切り、円形に柔らかいマットなどで壁を作ります。
その中に犬を入れてあげると、留守をしても安心ですし、痴呆の症状で同じ場所を歩き続ける犬も安全に過ごせます。
2.食事の介助
老化により足腰が弱ると、ふんばることが難しくなります。
食事をする場所は、足元に滑りにくいマットなどを敷いてあげます。
自力で食事が出来るならば、犬があまり首を下げなくても良い様にテーブルを作り、食器をその上に乗せてあげます。
ペット用品店に専用のものが売られていますが、自分で作るときは、食器が動かないように滑り止めのシートを敷くなどの対策が必要です。
食器の内側が斜めになっていて、食べやすい構造の食器なども販売されています。
歯が悪くなり、今まで食べていたフードを食べたがらない様であれば、お湯や温めたミルクなどで柔らかくしてあげたり缶詰などに切り替えてあげます。
フードを切り替えるときは、今まで与えていたフードから少しずつ割合を変えて、徐々に切り替えるようにします。
自力で食べることが出来ないときは、柔らかくして温めたものを、手やスプーンや注射器を使い、口の横から与えます。
食が進まないときは一度に食べさせず、少しずつ数回に分けて与えます。
3.歩行の介助
足腰が弱っても、歩く意欲があるなら歩行補助用ハーネスを使用します。
前足が弱っている場合は前足にはかせて吊り上げるものを後ろ足が弱っている場合は後ろ足にはかせて吊り上げるものを使用します。
家の中を少し歩くだけなら、バスタオルなどをお腹の下に通し、タオルの両端を持ち上げてハーネスの代わりにすることが出来ます。
この場合、お腹の下を通すタオルの幅が狭いとお腹にくい込んでしまうので、大きめのタオルを使用します。
ハーネスを使用することも出来なくなったときは、乳母車のようなカートを使用して外に連れていくことが出来ます。
4.排せつの介助
後ろ足が弱り、排せつのときにふんばることが難しいときは、その体勢になったときに腰を支えてあげます。
このとき、尻尾に糞便がつかないように持ち上げて補助します。
尿意や便意をもよおしても、足腰が弱っているために排せつ場所まで間に合わず、粗相をすることがあります。
普段寝ている場所などにはトイレシーツを敷き、汚したらすぐに交換します。
肛門の周りの毛をカットしておくと、排便後の手入れがしやすくなります。
いよいよ寝たきりになりオムツを使用するときは、こまめに取り替え体を清潔に保つ必要があります。
その都度入浴をさせることが大変なときのために、洗い流し不要のシャンプーを用意しておきます。
そうすれば、泡状のシャンプーで汚れたところを拭き取ることが出来ます。
5.床ずれの予防
立ち上がることが出来ず、寝たきりの状態になったときは、自力で寝返りをすることが出来ないため床ずれに注意が必要です。
床ずれ予防の体圧分散マットなどに寝かせます。
床ずれ防止クッションなども販売されていますので、使用すると良いでしょう。
時々体を動かし、同じ面が下にならないようにします。
大型犬など体重の重い犬を動かす場合は、胴全体に装着するハーネスを使用するか、バスタオルを使用して寝返りさせます。
床ずれが出来てしまったときは、ぬるま湯で洗浄し獣医師の指示に従います。
6.痴呆症になったら
痴呆症になると、昼間は眠り夜起きているようになります。
夜中に大きな声で鳴き続けるなどの症状もあり、介護する側も付き合わされることになります。
とりわけ夜中に鳴き続けると、近所に迷惑をかけることにもなります。
防ぐ方法としては、昼間にあまり眠らせないように散歩をしたり、歩けない場合は日光浴をさせるなど、なるべく疲れさせ夜眠くなるようにします。
それでも夜鳴きが収まらないときは、獣医師に相談します。
愛犬の介護でも無理をしないことが大事
犬の介護は体力と精神力が必要です。
一人ではなく、家族全員で協力し合わなければなりません。
わからないことがあれば、かかり付けの獣医師に相談したり、犬の介護をしてくれるペットシッターや施設を利用することも一つの方法です。
いろいろな選択肢を持ち、無理をせず介護と向き合うことが大切です。