「ミケランジェロ」は生涯独身で「ピエタ」「ダビデ像」「システィーナ礼拝堂天井画」に人生を捧げた!

最終更新日:2017年11月27日

イタリアのルネサンス期に活躍したミケランジェロは、美術に少しでも関心のある人ならその名を知らない人がいないほどの巨匠です。

88歳の高齢で亡くなる直前まで生涯現役を貫いた彼の人生には、学ぶべき点が多くあります。

1.ルネサンス美術を代表する巨匠

西洋美術の歴史において、14世紀から16世紀にかけてのルネサンス期は多くの巨匠を輩出した輝かしい時代でした。

レオナルド・ダ・ヴィンチを始めボッティチェリやラファエロらの絵画が特に有名ですが、中でもミケランジェロは彫刻・絵画・建築の各分野にわたって偉大な業績を残したルネサンス最大の巨匠です。

1475年にフィレンツェ共和国で生まれたミケランジェロはフィレンツェとローマを往復た前半生に多くの仕事を手がけ、メディチ家やローマ教皇からの依頼で彫刻作品や礼拝堂の天井画などを制作してきました。

晩年のミケランジェロはフィレンチェに戻らずローマに移り住み、高齢になっても作品制作に取り組んでいたのです。

長い生涯の間に彼は数多くの彫刻作品と素描も含む絵画作品を残し、礼拝堂や図書館などの建築設計にも関わってきました。

2.彫刻・絵画・建築の分野での偉大な業績

少年時代を過ごした大理石工の家で早くから彫刻の才能を見せてきたミケランジェロは、当時のフィレンチェ共和国を実質的に支配していたメディチ家の庇護を受け、彫刻家として頭角を現しました。

現在でもミケランジェロの代表作として知られる「ピエタ」と「ダビデ像」は、いずれもミケランジェロが20代で制作した彫刻作品です。

写実的な肉体美を表現した4m以上にも及ぶ巨大な「ダビデ像」は、他の作家が掘りかけたまま放置されていた大理石を使用し、4年がかりで完成させたことでも知られています。

ローマ教皇からの依頼では、30代で取り組んだシスティーナ礼拝堂の天井画があまりにも有名です。

18mの高さに足場を組んでシスティーナ礼拝堂の天井に命がけで描いた旧約聖書創世記の場面の数々は、5年の歳月を費やして37歳の年に完成しました。

ミケランジェロは絵の具作りの助手を1人雇っただけで、これだけ巨大な天井画を困難なフレスコの技法を使いながらほぼ1人で描き切ったのです。

3.深い精神性を表現した晩年

「ピエタ」「ダビデ像」「システィーナ礼拝堂天井画」といった彫刻や絵画の代表作はミケランジェロがまだ若い頃の作品ですが、彼は中高年になっても精力的に制作を続けました。

当時の美術制作はメディチ家のような有力パトロンや教会からの依頼に応じる形で行われるのが通例です。

大きな名声を博していた壮年期のミケランジェロも例外ではなく、次々と代替わりした歴代ローマ教皇から殺人的なほどの作品依頼を受けています。

システィーナ礼拝堂の祭壇壁画として描かれた有名な「最後の審判」が8年もの歳月を経てようやく完成したのは、ミケランジェロ66歳の年でした。

死の直前まで彫り続けながら未完に終わった「ロンダニーニのピエタ」には、ミケランジェロが晩年に達した深い精神性が表現されています。

青年時代の「ダビデ像」に代表される肉体美を削ぎ落とし、極限まで精神の美を追求したミケランジェロ晩年の姿が「ロンダニーニのピエタ」に残されているのです。

4.生涯独身で芸術に捧げた人生

ミケランジェロは生涯結婚せず独身を通し、一生を芸術に捧げた人物でもありました。

気難しい性格で孤独を好んだとも伝えられるミケランジェロの関心は、世間や生身の人間ではなく芸術に集中していたとも言えます。

ミケランジェロは若い頃から「ピエタ」や「ダビデ像」などの作品で名声を獲得しましたが、そうした人が陥りがちな罠には陥りませんでした。

名声を得た芸術家や作家の中には贅沢な生活に溺れる例も少なくありませんが、ミケランジェロは質素な暮らしを生涯貫いて身なりも構わなかったと伝えられているのです。

そんなミケランジェロの芸術を象徴する彼の名言に、「余分なものを取り除いていくことにより彫像は完成していく」という言葉があります。

大理石の中に天使を見たとも伝えられる彼らしい言葉ですが、それは彼の人生観とも無関係ではありません。

晩年に至るほど精神性を深めていったミケランジェロにとって、贅沢な生活は「余分なもの」だったのです。

5.ミケランジェロの芸術観・人生観に学ぶ

以上のようなミケランジェロの生き方と人生哲学には、現代に生きるシニアにとっても手本とすべき点が少なくありません。

彼の死もまた、生涯現役に生きた天才芸術家に相応しい姿でした。

89歳の誕生日を目前に控えていたミケランジェロは1564年2月14日に病を発して倒れましたが、熱がある体でありながら外出して病状を悪化させ、2日間病床に伏した後の2月18日に長い生涯を終えたのです。

亡くなる6日前まで彼がノミをふるって「ロンダニーニのピエタ」の制作を続けていたミケランジェロの姿が目撃されています。

時代を越えて残る芸術の力を信じ、彼は限られた人生の中で自分に与えられた時間を最大限に活用しようとしたのです。

どれほど長生きしても人間の命は有限ですが、石に刻まれた芸術作品は人間の寿命よりも遥かに長い生命を持ちます。

何らかの形で自分の生きた証を残せるような趣味を見つけて第二の人生の生きがいとすることは、ミケランジェロのような天才でなくても十分に可能です。

生涯芸術家だったミケランジェロの生き方

死ぬまで芸術家であり続けたミケランジェロの彫刻や絵画の名作は、人類が築き上げた偉大な文化遺産の1つとして今でもイタリアを中心とする美術館や教会・礼拝堂で見られます。

それらの実物を見に行くのも簡単ではありませんが、生涯現役を貫いたミケランジェロの生き方は国籍や時代を越えてシニアライフの指標となるものです。