松本城(長野県松本市)は城や歴史に興味を持つシニアなら一度は訪れたい場所

最終更新日:2017年11月7日

国内には「日本100名城」が定められているほど多くの城が現存しますが、江戸時代以前の天守を残す城となると数が限られます。

日本100名城の1つ松本城は、戦国期と江戸期の特徴を兼ね備えた名城中の名城です。

1.国宝に指定された五重六階の天守

長野県松本市にある松本城は、姫路城・彦根城・犬山城・松江城と並んで、国宝に指定された5つの城の1つとしても知られています。

北アルプス山脈の雄大な山並みを背景に五重六階の天守がそびえ立つ威容は、写真好きのシニアにとっても絶好の撮影対象です。

江戸時代以前の天守が現存する城はこの松本城を含めて全国にわずか12ですが、そのうち五重の天守を持つ城となると松本城と姫路城の2つしかありません。

姫路城は「白鷺城」の異称を持つように白を基調とした天守を特徴とするのに比べ、黒を基調とした松本城の天守は地元の人達から「烏城」と呼ばれて親しまれています。

関ヶ原の戦い以前はこうした黒い天守を持つ城が多かったのと比べ、江戸時代に入ってから白い天守の城が増えたとも言われています。

松本城は五重六階の構造を持つ天守としては現存最古の建築物ですが、それだけ戦国時代の古い特徴を残しているとも言えるのです。

2.黒を基調とした天守の美

松本城の天守を構成する大天守と乾小天守・渡櫓・辰巳附櫓・月見櫓という5つの天守群は、いずれも昭和11年に国宝指定された貴重な建造物です。

天守の壁は上部が白い漆喰で塗られている一方、下部は黒漆塗りの下見板で覆われているために黒が強く印象づけられます。

松本城を訪れたら、まずはこの黒い天守の放つ独特の美しさをいろいろな角度から眺めて楽しみたいものです。

5つの天守群のうち大天守と乾小天守・渡櫓の3つは戦国時代に建造されたと考えられており、鉄砲狭間や矢狭間など戦を想定した小窓が数多く設けられています。

辰巳附櫓と月見櫓は戦国の世が終わって徳川幕府の支配する平和な時代に入ってから建造された部分です。

ひと続きの天守群にこうした2つの時代の特徴を併せ持つ城は全国的に見ても珍しいと言えます。

天守の持つ意味が戦への備えなのか、それとも権力の象徴なのかという点で両者に違いが見られるのです。

3.高層階を支える天守内部も必見

北アルプスを背景とした松本城の外観を味わった後は、天守の中に入って内部を観覧することもできます。

天守内は土足禁止となっていますので、入口で渡される下足袋に靴を収納して中に入るのがエチケットです。

一階から六階まである大天守の内部は階ごとに特色があり、三階までの下層階は上層階をしっかりと支えるために柱が多く林立しているのが大きな特徴です。

この大天守は外から見ると五重になっていますが、三階は外から見えない構造となっているため内部は六階あります。

三階には高層階を支えるための通柱も多く、今から400年以上も前にこれだけ高い天守を建築するのに使われた工夫の跡が窺えます。

かつて大天守につけられていたという鯱瓦の他、火縄銃・当世具足など一階と二階に展示されている貴重な品々も見逃せません。

四階まである乾小天守は耐震診断を受けて非公開ですが、渡櫓と辰巳附櫓・月見は内部に入って観覧することができます。

4.石川数正・康長父子が天守を整備

現在に見られる松本城の天守群は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて石川数正と康長の親子が2代にわたって整備したと伝えられています。

今から500年ほど前に当時信濃の国の守護だった小笠原氏が築城した深志城が松本城の起源です。

その後は武田氏による信濃攻めでいったんは小笠原氏も松本城から追放されましたが、紆余曲折を経て武田氏滅亡後に取り戻した経緯があります。

豊臣秀吉の治世に下総へと国替えになった小笠原氏に替わり、松本城の城主となったのが石川数正でした。

石川数正は息子の康長とともに城郭の整備を進め、今に見る松本城天守の威容が形作られたのです。

康長の代で石川氏は改易となりましたが、松本城は松本藩の藩庁として明治維新まで地方行政の中心的役割を果たしてきました。

江戸時代中期の本丸御殿焼失、明治期の二ノ丸御殿全焼という災難にも関わらず、松本城の天守群は400年以上の長きにわたって保存されてきたのです。

5.急な階段の昇り降りには注意

江戸時代までに作られた天守が現在まで残されている例は全国で12しかない上に、その中でも内部が六階となっているほど高層の城郭建築が400年以上も保存されてきたのは奇跡に近いとも言えます。

かつて日本全国に数多く築かれた城の天守が相次ぐ戦乱や地震・経年劣化の影響でほとんど失われた中、今なお近世城郭建築の美を誇る松本城は貴重な文化遺産です。

歴史好きのシニアにとっても松本城は最も魅力的な城の1つですが、国内に現存する天守の中でも唯一六階まであるほど高い建物です。

特に大天守の高層階を観覧する際には、梯子に近い急な階段の昇り降りに要注意です。

隣接する松本市立博物館と共通の観覧料は大人610円で、団体客は人数に応じた割引があります。

JR北松本駅東口から松本城までは徒歩約7分で到着し、松本駅からは歩いて20分ほどの距離です。

松本城では四季を通じて多彩なイベントも開催されますので、そうした機会に訪れるのもいいでしょう。

石垣や城下町とともに松本城を楽しもう

歴史的価値の高い松本城は、城や歴史に興味を持つシニアなら一度は訪れたい場所です。

国宝の天守ばかりでなく、国の史跡に指定されている石垣や堀なども貴重な歴史的文化遺産として必見の価値を持ちます。

松本城を訪れたら松本市の市街にも立ち寄り、城下町らしい風情を残す街並みを眺めながら散策を楽しんでみるといいでしょう。