東北地方南部に位置する山形市は昭和8年に40.8℃を記録し、2007年に破られるまで長く日本最高気温が続いたほど暑い街として知られます。
そんな山形の夏をよりいっそう熱くする祭りが、山形花笠まつりです。
1.1万人を超える踊り手が華麗に群舞
山形県の県庁所在地・山形市で毎年8月5日から7日までの3日間に行われる山形花笠まつりは、仙台七夕まつりや青森ねぶた祭・秋田竿燈まつりと並んで東北4大祭りの1つに数えられます。
山形花笠まつりの来場客数は3日間で合計100万人前後に達すると推定され、1日平均30万人を超える計算です。
山形市の人口が25万人ですから、山形花笠まつり開催期間には市の人口を上回る人出で街が賑わいます。定年後シニアなら死ぬまでには一度は訪れたいですね。
その歴史は他の東北4大祭りと比べて比較的新しく、現在の形で開催されるようになったのは昭和38年からです。
それ以来50回以上開催され山形市民の間でも夏の風物詩としてすっかり定着した山形花笠まつりは、「フラワー・ハット・ダンス」として国際的に広く知られるようになりました。
山形県内一円で広く行われている花笠踊りの中でも山形花笠まつりは最大のイベントで、参加する踊り手の数は12000人に達します。
2.自由に観覧できるパレード
山形花笠まつりのパレードが行われる会場は、JR山形駅から徒歩10分ほどの距離にある十日町から七日町にかけてのメインストリートです。
連日午後6時からパレードが始まり、東北電力前の第2本部付近を先頭集団が通過します。
先頭の山形花笠まつり大提灯に蔵王大権現の山車が続き、花笠舞踊団から一般参加の団体へと次々に踊りが披露されていきます。
いずれも山車を先頭にした10前後の団体がグループを形成しているのがパレードの特徴で、山車に乗ったミス花笠の山形美人や有名人のゲストも見逃せません。
先頭集団は7時前に市役所前のゴールへと到着しますが、何しろ1万人以上の踊り手が参加する大パレードです。
最終集団がスタートするのは8時半近くに及び、パレード最後尾がゴール地点に到着するのは9時半頃となります。
山形花笠まつりには特別な桟敷席などは設けられていないため、好きな場所で自由に観覧できる点も大きな特徴です。
3.団体ごとに異なる振り付け
「ヤッショ、マカショ」の掛け声で知られる花笠踊りには、山形県内でも地域ごとにそれぞれ違った振り付けが行われていたものです。
いずれも山形名物の紅花をあしらった花笠を踊りに使う点では変わりませんが、10種類以上も見られた多種多様な花笠踊りは昭和期に一本化されました。
昭和38年に定まった「正調花笠踊り~薫風最上川~」は日本舞踊をモチーフとする優美な振り付けが特徴で、花笠を頭上に掲げる踊り方は女踊りとも呼ばれています。
そのため山形花笠まつりは女性の踊り手が中心の祭りでしたが、平成10年になって花笠を縱橫に振り回す勇壮な「正調花笠踊り~蔵王山暁光~」が誕生しました。
これが男踊りとも呼ばれて男性の踊り手の参加を促し、現在に見られるパレードの形となったのです。
山形花笠まつりのパレードにはおよそ150もの団体が参加し、上町流・寺町流・安久戸流・原田流・名木沢流など流派ごとに振り付けが異なります。
団体によっては斬新な創作踊りも加わり、見物客を飽きさせません。
4.花笠音頭の起源と山形花笠まつりの歴史
全国で8月に行われる祭りの中には徳島市阿波おどりのように盆踊りを由来とする例も少なくありませんが、山形花笠まつりの起源は米どころ山形らしく田植え踊りにあると言われています。
花笠踊りに欠かせない花笠音頭は、明治期から大正期にかけて村山地方で唄われていた作業唄の「土突き唄」を起源とする説が有力です。
この土突き唄に船方節や八木節が混合した末、昭和初期に民謡の花笠音頭が誕生しました。
花笠音頭に合わせて踊る際に景気づけとして、赤く染めた紙で花飾りをした菅笠を振り回したのが花笠踊りの始まりとされています。
山形県内にはこうした民謡や踊りの文化が存在し、県内各地では山形市以外にも尾花沢市や上山市・天童市などで花笠踊りを中心とする祭りが行われてきました。
そうした伝統的な民俗芸能を観光の目玉とする目的で昭和38年に山形市で「蔵王夏まつり」が行われ、その中の花笠音頭パレードを独立させる形で2年後に山形花笠まつりがスタートしたのです。
5.熱中症対策は万全に
華麗な踊りに加えて踊り手たちの華やかな衣装も見逃せない山形花笠まつりは、見るだけでなく踊ることもできるイベントです。
パレード開始後にまだ先頭集団が到着していないゴール地点の市役所前では、午後6時10分頃から6時半頃まで飛び入り参加可能な輪踊りが開催されます。
8時半頃からはパレードの最後尾でも自由に飛び入り参加できますので、踊りの好きな定年後シニアは一緒に踊ってみるといいでしょう。
冒頭でも触れたように山形市は盆地気候でフェーン現象が起きやすく、夏は非常に暑くなる点に注意が必要です。
山形花笠まつりが行われる8月上旬は1年で最も気温が高い時期で、夜になっても気温がなかなか下がらない日も少なくありません。
パレードを見物する際にはこまめに水分補給をするなどして、定年後シニアは熱中症対策を万全にすることが大切です。
熱中症に注意して山形花笠祭りを楽しもう
山形花笠まつり期間は、1万人余りの踊り手と100万人の観客が生み出す熱気に街全体が包まれます。
踊りをテーマとする祭りも全国に数多く見られますが、山形花笠まつりは華麗さが最大の魅力です。
山形花笠まつりに魅了されたら、上山温泉や天童温泉・尾花沢など県内で同じ8月に開催される花笠まつりと見比べてみるのも一興です。