俳句や短歌などの文芸活動は体力や高額な費用を必要としないため、中高年の趣味として根強い人気があります。
中でも川柳は俳句と同じ五七五でありながら、季語のような約束事がない点で気楽に取り組めるのが特徴です。
1.俳句との違い
川柳と俳句は同じ五七五のリズムで作られるため、両者の違いがよくわからないという初心者の人も少なくありません。
約束事の上では、俳句を作るのに欠かせない季語や切れ字といったルールが川柳では必要ないという点が挙げられます。
季語というのは季節を表す言葉のことで、俳句ではこの季語を必ず1回使用するという基本ルールがあります。
時候・天文や動物・植物から人事に至るまで、新年と春夏秋冬に応じて多種多様の季語が歳時記に掲載されています。
一方で俳句は文語表現を基調とするのが一般的で、「けり」「かな」「や」といった切れ字を使うことによって詠嘆や余韻を表現します。
そうした制約を敢えて楽しむのが俳句の醍醐味ですが、季語や切れ字などのルールに縛られないで自由に五七五の短詩を楽しみたいという人は川柳の方が向いています。
2.川柳を作る楽しみ
川柳に与えられた基本ルールは、五七五の合計17音で構成するという極めてシンプルなものです。
俳句では自然や季節感に託して感動や思いを表現するのが基本的なスタイルですが、川柳は政治や流行から日常生活に至るまで幅広い題材をカバーできます。
毎日の生活の中で感じるちょっとした発見や、周囲の人々に対して正面切って言えないような思いを五七五で表現するのが川柳の醍醐味です。
政治に不満があっても庶民が政治家に対して意見を言う機会はなかなか得られませんが、新聞投稿などの時事川柳の場を利用すれば溜飲を下げられます。
公募作品に多い時事川柳はユーモアや皮肉を基調とするのに比べ、川柳クラブなどで腕を競い合う場では文芸川柳として芸術性を追求することも可能です。
短い五七五の詩形に人生すら投影されるような絶妙の表現がぴたりと決まれば、その瞬間から誰でも川柳作家になれます。
川柳に取り組むことで言葉のセンスが磨かれ、日常生活に向ける観察眼も鋭くなるものです。
3.川柳仲間を増やす方法
小説やエッセイのような文章作品はある程度の文才がないと書けませんが、わずか17音の川柳なら文芸と縁のない人生を送ってきた人でも取り組みやすいものです。
川柳で使用されるのは俳句と違って日常的な言葉ですので、五七五の語呂合わせさえできれば誰でも作ることができます。
後述する公募などを利用して1人でも川柳を楽しむことはもちろん可能ですが、同じ趣味を持つ仲間がいれば楽しみがさらに広がります。
周囲に同好の士がいない場合でも、地域の川柳クラブや結社などに入会することで仲間が得られるのです。
カルチャーセンターや市民講座といった集まりでも川柳は人気を集めており、講師の指導を受けることで基礎知識を身につけることができます。
本格的な文芸川柳に取り組む意欲を持つ人は、定期的な句会開催や同人雑誌発行を行っている川柳結社に入会しています。
川柳にも俳句や短歌と同じく全国各地にそうした結社が存在し、会員同士が切磋琢磨しながら腕を競い合っているのです。
4.公募川柳で腕試し
川柳は江戸時代から庶民の間で広く親しまれてきましたが、現在では企業や自治体などが主催する川柳コンテストも話題を呼んでいます。
サラリーマンの哀歓を巧みに表現した川柳や、高齢者の日常を面白おかしく活写した川柳などは特に人気の高いコンテストです。
そうした川柳は一般の愛好家から広く募集されており、万単位の応募作から厳選されている例も少なくありません。
俳句や短歌のコンテストと比べても川柳コンテストの件数は群を抜いて多く、新聞や雑誌の投稿まで含めるとほとんど無数と言っていいほどの募集が存在します。
大多数の川柳コンテストでは入選すると賞金や何らかの賞品がもらえるため、それを励みに句作をしている人も少なくありません。
俳句や短歌のコンテストでは投句料が必要なケースも多いですが、川柳コンテストの大半はハガキやインターネットを使って誰でも気軽に応募できるものです。
5.字余りと句またがり
川柳は俳句と比べて自由度の高い表現が許される文芸ですが、五七五の基本的なリズムはできるだけ守るようにするのが作句のコツです。
俳句ではしばしば字余りの句も作られており、五七五にこだわらない自由律俳句の分野もあります。
川柳の場合は五七五以外の制約がないせいか、コンテストの審査や句会の場では俳句よりも字余りに対してシビアに評価される傾向が見られます。
特に五七五が五八五の形で中七が字余りとなっている場合は、リズム感が損なわれるためにマイナス評価とされる例が少なくありません。
敢えて破調の効果を狙うとしたら、最初の五音を字余りとするのが無難と言えます。
より高度な技法として俳句でもよく使われているのは、五七五のリズムを崩して七・五・五や九・八などとする方法です。
句またがりと呼ばれるこの技法は川柳でも有効ですので、句作に慣れてきたら挑戦してみるといいでしょう。
気軽にはじめられるのが、川柳の魅力
以上に見てきたとおり、俳句とはまた違った味わいを持つ川柳は多くの人に愛好されてきました。
肩肘を張らず気軽に取り組める文芸ジャンルだけに、川柳は高齢者も含めた幅広い年齢層の人が楽しめる趣味の1つです。
川柳クラブへの入会やコンテストへの応募など、自分に合った方法で川柳に挑戦するシニア世代も増えています。